東南アジア諸国が相次いで中国の台湾統一を支持する姿勢を表明するなど、最近の動きが注目されている。
タイのアヌティン首相が7月17日、習近平・中国国家主席と上海で首脳会談を行った。会談後発表された共同声明では台湾問題について、「平和的統一を断固として支持する」と明記した。タイが中国との首脳会談後の共同声明で台湾統一への支持に言及したのは約7年ぶり。2014年に成立したプラユット政権下で統一についての言及はあったが、19年の声明を最後に統一支持の文言は消えていた。今回の声明では、統一支持に加え、「一つの中国」政策や「一国二制度」への支持、「台湾の独立を求めるいかなる動きも支持しない」とする文言も加わり、近年のタイ政権の中で最も中国寄りの支持を打ち出した。
タイ外務省は、バランスを重視してきた従来の立場に変化はないと説明している。だが、冷戦時代から長く米国の同盟国で国内に米軍基地があるが、2014年のクーデター以降、関係は冷え込んでいた。こうしたタイ外交の変化は、東南アジア諸国と中国との経済関係が拡大する中で、政治的関係にも変化が出ているとして注目される。
近年、中国とタイの経済的な結びつきは強まり、米国の対中関税を回避するため、企業は生産拠点の移転先として、タイへの投資を拡大している。タイ投資委員会(BDI)によると、25年の中国によるタイへの投資申請総額は前年比3%増の1721億バーツ(約6000億円)だった。中国企業のシンガポール法人経由の投資も含めると、タイにとって最大級の外国直接投資国になった。こうした流れはタイ以外の諸国にも及ぶ。
ベトナム、対中関係を最優先
4月には、ベトナムのトー・ラム共産党書記長兼国家主席が国賓訪問した。王滬寧政治協商会議主席との会見では、交通インフラ建設のほか、人工知能(AI)や半導体などの戦略的技術、高品質な人材育成などの協力強化を提案した。中国側からは、ベトナムからの農産物の輸入拡大や、ベトナムへの投資の奨励などが示された。ラム書記長は精華大学での演説で、ベトナムは中国との関係発展を最優先事項としていると強調し、共同声明でも「中国の国家統一を支持する」と表明した。
ベトナムと中国との経済関係をみても、中国は2025年に最大の貿易相手国となり二国間の貿易額は前年比24.8%増の2564億ドル(約41兆円)に達した。投資分野でも中国からの海外直接投資は国別で第2位、観光分野でも中国人観光客数全体の25%を占めトップとなるなど、関係が発展している。
ミャンマーも6月、ミンアウンフライン大統領が訪中し、習近平主席との首脳会談後、中国による国家統一の取り組みを「断固支持する」と表明した。
各国の中国支持の姿勢は鮮明
東南アジア諸国が発表した直近の首脳・外相会談の声明などにおける台湾統一問題についての立場は以下のようである。
・中国のあらゆる統一努力を支持――ミャンマー、ラオス
・平和的統一を支持、中国の国家統一の大義を支持――タイ、ベトナム、カンボジア、インドネシア、マレーシア
・統一支持への言及はないが台湾独立に反対――シンガポール
・統一支持・独立反対への言及はないが「一つの中国」政策を順守――フィリピン
このように、東南アジア諸国の台湾統一問題での中国支持の姿勢は鮮明になっている。
インドネシアは戦略対話
中国とインドネシアは8月21日、ジャカルタで、王毅外相とスギオノ外相が「包括的戦略対話」の初会合を開いた。双方は持続可能な貿易の発展やAIに関する協力拡大のほか、「戦略的自主性の堅持」と「互いの核心的利益の支持」で合意した。
報道によれば、王氏は、トランプ米政権を念頭に「一国主義や覇権的な行為が世界の安全や発展に深刻な打撃を与えている」と強調。スギオノ氏は台湾問題に関し「『一つの中国』政策を揺るがず実行し、中国の統一の大業を支持する」と述べた。
両国間には南シナ海を巡る摩擦があるものの、インドネシアは中国との経済協力拡大に期待し、中国側は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国であるインドネシアとの関係強化を重視している。
両国は安全保障面でも協力を深め、両海軍が8月に台湾東方で合同航行訓練を行った。
米・トランプ政権がイラン戦争の泥沼にはまり、高市政権は対中関係打開の糸口さえつかめぬままである。台湾統一を巡っても東南アジア諸国の戦略的自立の傾向はますます強まっている。(H)