解説

「令和の米騒動」から一転の米価下落 所得補償による農家の経営安定が必須

 店頭でのコメ価格が低下傾向にある。これは、各県で発表された概算金が前年産より2~4割程度下回っていることが影響していることは間違いない。概算金は、JAに出荷するコメ代金の一部を集荷の時点で受け取れる仮渡し金のことで、農家経営に大きく影響する。

 物価高が続く中、消費者にとってはコメ価格の低下は歓迎するところであるが、農家にとっては赤字経営を強いられることになり、廃業に追い込まれかねない事態となっている。

 昨年のコメ不足によって消費者の負担増やコメ農家の苦しい経営状況が明らかになったが、その改善を図るためには、生産調整を中心としたこれまでの農政の転換は待ったなしとなっている。

コスト指標を下回る概算金

 8月下旬までに公表された概算金の水準は、60キロ当たり1万4040円から2万800円となっている。一例を挙げると、JAしまねの概算金はコシヒカリ1等が1万6000円で、前年産の2万8400円から4割強も低下している。

 今年4月から施行された食料システム法によって、コスト指標を作成することとなっている。

 その目的は、食品等の取引において費用の考慮を促しコスト割れを抑止することにある。今年4月時点での生産段階のコスト指標は60キロ当たり2万535円となっている。つまり、現在の概算金の水準からすると、ほとんどの農家が赤字経営を強いられることとなる。

 さらに、このコスト指標は前年に比べて3・4%上昇している。イラン戦争に伴うホルムズ海峡閉鎖による石油やナフサの不足による資材価格の高騰が5月以降に顕著になったことを踏まえると、指標が公表された4月段階ではこうした影響は含まれていないとみてよい。コストは上がる一方、米価は下がることは避けられず、農家経営はますます苦境に立たされることになる。

米価の低下は消費者に何をもたらすのか

 物価高で生活が苦しくなる状況下において、米価の低下は消費者の家計にとって助けになることは否定できない。しかし、さらに米価が下落することとなれば、農家の赤字はさらに拡大することとなり、その帰結として大量の離農を生み出すことになりかねない。そういう状況に陥れば、生産力は大きく低下し、昨年のような米騒動が慢性化しかねない。結果的に、コメ不足が常態化し価格は高騰を続けることになるだろう。

 コメ輸入によって価格高騰を抑えれば良いという考え方もあるだろう。もし輸入して価格が抑えられたとしても、それは国内の農家にとってはさらなる経営悪化の要因となることは想像に難くない。さらに離農が進み、ますます国内生産力は低下することとなる。

 ホルムズ海峡閉鎖によって輸入依存の脆弱性が明らかになった事態を鑑みれば、食料の輸入依存は非常に危険であり、輸入がストップすれば国民が飢えるといった事態が現実化しかねない。

 価格面だけで農業問題を捉えることは、消費者にとっても将来的な禍根を残すことになる。

所得補償政策への転換を

 こうした状況を回避するためには何が必要となるのか。

 2024年に改定施行された食料・農業・農村基本法では、「食料安全保障の確保」を規定し、その定義を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人ひとりがこれを入手できる状態」としている。「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給」されるため、現在の市場価格に任せた状態では到底達成できないだろうことは、昨年のコメ騒動を巡る経過を見れば明らかだ。

 良質な食料を安定的に供給するため、農家経営の支援が不可欠だ。農家経営の安定が担保されることとなれば、合理的な価格で消費者に提供することにもつながる。

 政府は食料安全保障の確保を掲げたものの、それを実現する施策が皆無なことが問題である。早急に対策を打たなければ、日本農業の衰退化は加速することになる。

 こうした事態を食い止めるためにも、農家の所得補償を行い、農家経営を支援することが有効だろう。所得補償によって農家経営が安定化すれば、営農継続への意欲にもつながり生産力の維持・強化にも寄与する。安定的な供給によって、合理的な価格による消費者への提供も可能となる。生産者にとっても消費者にとっても、所得補償への政策転換は最良の結果につながることだろう。(A)

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