OSS(オープンソース・ソフトウェア)が「一般知性の現代版」とされていることについて、すでに述べた。
現在、日に日に進歩している生成AI(人工知能)をどう見るべきか。
結論から言えば、生成AIは一般知性の具現化の一つである。併せて、一般知性が資本によって包摂される、現代資本主義の極致でもある。この点で、生成AIはOSSと似た性格を持つ。
このため、現代のデジタル資本主義を読み解く鍵であり、社会主義を展望する上で重要な存在といえる。
ところで、世界経済の現状は「AIバブル」と言うべきもので、株式市場を中心とする熱狂が破綻することも早晩、避けられない。また、AIの軍事利用はすでに進んでおり、米国による無法なイラン戦争にも「活用」されている。
生成AIは世界に巨大な影響を与え、変革を促す「もろ刃の剣」の技術なのである。

急速に進化する生成AI
2023年、OpenAIが会話型アプリケーションAIであるChatGPT(チャットGPT)を公開し、世界に衝撃を与えた。自然言語処理の進化により、生成AIが人間と同じような会話を実現できることが証明された。
以降、世界のテック大手をはじめ、AI開発を手掛けるスタートアップ企業が登場している。
2025年初頭には、中国のAI企業DeepSeek(深度求索)がDeepSeek-R1を公開、米国の最先端AIに匹敵する推論能力を持つモデルを、従来の約10分の1以下の低コストで実現した。中国企業の技術力を示すと共に、「AIは高価」というそれまでの常識を崩壊させ、OSSとして公開することで他の開発者やユーザーに高い自由度を提供するものであった。
これは、低価格帯モデルの「標準化」を決定づけ、OpenAIが自社モデルの一部をOSSとして公開することを促す結果となった。
夏以降の生成AI業界は、進化と再編が急速に進んだ。
Microsoftは、ChatGPTをベースとする自社製Copilot(コパイロット)をOS(基本ソフト)に統合する方向を打ち出した。すでにCopilotはWord・Excel・PowerPointというOfficeソフトに標準統合されており、業務を「AI前提」とする動きを加速させている。
GoogleのGemini(ジェミニ)は、超長文の処理と検索エンジンとの統合を強化している。「検索エンジンで調べる」という従来の利用法から、「AIに調べさせる」というスタイルへの転換には、Geminiの貢献が大きい。
X(旧Twitter)のGrok(グロック)は、リアルタイムデータを基礎に、音声会話、画像認識、動画生成などが統合された万能型に成長している。
Anthropic(アンソロピック)のClaude(クロード)は、2025年に入って急進化を遂げた。
同じAnthropicのMythos(ミュトス)は、ソフトのぜい弱性を発見する点で驚異的な優秀さを示した。一方で、サイバーセキュリティや国家安全保障に重大な影響を与えかねない存在となっている。
なぜなら、AnthropicはMythosへのアクセスをApple、Amazonなどの一部米企業に限定しており、これは他国・他企業にとって著しい不公平である。Mythosは、ぜい弱性を突いたプログラムも生成できるため、米国がMythosを使って他国の情報システムに侵入、打撃を与えるリスクがある。MythosにアクセスできるJPモルガン銀行のダイモンCEO(最高経営責任者)でさえ、Mythosは金融システムに対して「非常に高まったリスク」をもたらすと警告している。
2026年に入って、生成AIはコンピュータ、スマホの不可欠の要素として定着した。ChatGPTには「チャッピー君」の愛称が付けられるなど、もはやユーザーに身近な存在となっている。
進むAIの軍事利用
同時に、生成AIは国家安全保障と結びつき、とくに軍事利用に関して大きな懸念を引き起こしている。
現状、軍事分野に関するAI活用例は、以下のようなものである。
①標的の特定と攻撃標的の自動識別と追跡:ドローンなどが捉えた映像をAIがリアルタイム解析し、敵を判別する。イラン戦争では、米軍が最高指導部の居場所を特定して攻撃に結びつけたとされる。
②指揮統制(C2)と意思決定支援戦場認識システム:気象、地形、過去の行動パターンなど膨大な戦場データを統合し、分析と対応策を提示する。
③自律型致死兵器システム(LAWS)による自律飛行と攻撃:無人戦闘機や自爆ドローンに搭載されたAIが自律的に敵味方を判別し、目標を攻撃する。
④情報収集とサイバー戦:AIを用いて不正アクセスを検知し、防御システムを展開する。逆に、相手のぜい弱性を突いて攻撃を仕掛ける。
AIの軍事利用に関しては、これを禁じるべきという世論が国際的に高まりつつある。
総じて、2025年夏以降に進んだ生成AIの急速な進化は、正確性などの「性能競争」から「推論・価格・統合・安全性の総合戦争」への移行、AIが軍事を含むインフラとして再編される局面に入ったといえる。
