社説

高市政権、敗戦の日に政治軍事大国化の意思あらわ 過去の反省と謝罪、中国敵視政策の転換こそ必要

 高市政権になって初の「敗戦の日」を迎えた。

 高市首相は8月15日、靖国神社を「遥拝」した。同日の「全国戦没者追悼式」における式辞では「戦争の反省と教訓」に言及しないなど、日本が「戦争の惨禍」を引き起こした歴史的事実を否定した。

 ポツダム宣言受諾による敗戦は、明治維新以降の、無謀で無法なアジア侵略の必然的帰結だった。日本は侵略戦争で数千万人以上の命を奪い、植民地支配で、財産と資源、民族の尊厳を奪った。

 高市首相の言動に、中国、韓国をはじめアジア諸国が激烈に反発したのは当然である。

 世界は激変した。グローバルサウス諸国が経済・政治面で大きく前進し、帝国主義諸国に代わって世界の主要勢力となった。とりわけ中国は経済的発展を遂げ、政治的影響力も増している。他方、米国は衰退を早め、イラン戦争を契機とする同盟国・欧州の離反など孤立を深めている。

 高市政権は、世界の激変に「対処」するため、米国の「核の傘」に依存しながら、中国を敵視する政治軍事大国化の道を選択した。すでに「専守防衛」「武器輸出禁止」を投げ捨て、「非核三原則」も放棄しようとしている。まさに「国論を二分する」、戦後日本政治の大転換である。

 敗戦の日における高市首相の言動は、政治軍事大国化を進めるための思想政治攻撃にほかならない。

 だが、高市政権の選択は世界の趨勢に逆行し、破綻は避けられない。この道を許せば、アジアでの孤立と戦争、荒廃の結果となりかねず、国民は塗炭の苦しみに突き落とされる。

 グローバルサウス諸国、とくに中国との連携強化こそ、わが国が繁栄できる道である。侵略戦争と植民地支配への反省と謝罪を基礎に、中国敵視政策を転換させなければならない。

戦争責任を認めぬ式辞と遥拝

 靖国神社は戦前、陸軍省などの政府管理下で、死亡した軍人を「英霊」として祀ることで、国民に「天皇のために戦争で死ぬ」ことを強制する装置だった。

 戦後、民間宗教法人となった靖国神社は、1978年にA級戦犯を合祀した。中曽根首相や小泉首相による参拝は、日本国内はもちろん中国・韓国などから反発を受け、政府はその後、参拝中止などの「軌道修正」を強いられた。第二次安倍政権は2013年に参拝を強行したが、米国の圧力を受けた。以降の菅、岸田政権は「参拝見送り、真榊・玉串料奉納」という欺瞞的な対応を続けた。

 今回、高市首相は神社式の「遥拝」という形で、安倍政権などより踏み込んだ。

 小泉防衛相、黄川田沖縄北方対策相、小野田経済安保相、城内経財相の4閣僚、自民党4役も直接参拝した。自民、維新、国民民主など、超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長・逢沢衆院議員)の約90人も参拝した。

 靖国神社が果たしてきた役割を鑑みれば、高市首相らの態度は断じて許しがたい。

 1963年に始まった「全国戦没者追悼式」で、細川・非自民政権がアジアの戦争犠牲者に「哀悼の意」を表明するまで、30年もかかった。翌年、植民地支配と侵略への「痛切な反省」に言及した「村山談話」を基礎に、同年の式辞で初めて、加害責任に対する「深い反省」と「不戦の決意」が盛り込まれた。

 政権が自民党に戻った後も、これらは基本的に踏襲された。

 だが、安倍政権の2013年以降は「反省」「不戦の誓い」に触れず、日本によるアジアへの加害への言及も消失した。昨年、石破前政権は13年ぶりに「反省」を復活させた。

 高市首相による式辞は、安倍・菅・岸田政権からさえ後退した。「繰り返させない」という文言は、日本が侵略戦争を引き起こしたという事実をあいまいにさせる。侵略や植民地支配を想起させる「歴史の教訓を胸に刻む」という表現も消えた。

 首相は式辞で、日本は「インド太平洋の輝く灯台」になるなどと述べた。だが、過去への反省なしに、「灯台」になれるはずもない。

 首相の言動は、侵略戦争と植民地支配を美化するものだ。

軍事大国化と結びついた攻撃

 高市首相は以前から、侵略戦争を「自存自衛のための戦争」であり、「反省しない」と公言してきた。首相は歴史修正主義の「確信犯」で、今回の言動は、政治軍事大国化策動の一環である。

 菅政権は2021年の日米共同声明で「台湾海峡の平和と安定」を明記、中国の内政問題に公然と踏み込んだ。岸田政権は22年に「安保3文書」を改定、「敵基地攻撃能力」の保有を含む大軍拡に踏み出した。

 高市政権は、中国敵視の外交・安保政策をさらに強めている。昨年秋の「台湾有事は存立危機事態」発言で、「台湾は中国の一部」という国際公理に公然と背き、中国の内政問題に武力介入する意思を示した。軍拡は対国内総生産(GDP)比3.5%にまで拡大させ、ミサイル配備などで沖縄をはじめ全国を「対中国」の前線基地化させている。武器輸出ルールの見直し、「能動的サイバー防御」の導入検討、「安保3文書」の前倒し改定により、無人兵器や人工知能(AI)の活用による「新しい戦い方」を想定している。安保・治安情報を一元管理する国家情報会議を設置。国旗損壊処罰法、改定皇室典範なども成立させた。

 55年体制下で、自民党政権が曲がりなりにも維持してきた「専守防衛」「武器輸出禁止」は投げ捨てられた。高市政権は米国の核に依存しながら、「非核三原則」も放棄しようとしている。外交・安保政策の大転換で、戦後政治の基本であった「平和国家」の放棄である。

 高市政権は、軍需産業などごく一部の利益に奉仕するため、アジアで政治軍事大国として再登場することを夢想している。わが国を国際的孤立と戦争に導く、亡国の道である。

アジア諸国の反発は当然

 アジア諸国が、高市政権の侵略美化、歴史修正主義に反発したのは当然だ。

 韓国外交部は「歴史を忘れた時代錯誤的な行為に及んだことに嘆きを禁じ得ない」とする声明を発表した。

 中国外交部も、「誤った行為は歴史的正義に対する冒瀆(ぼうとく)であり、文明の最低ラインに対する挑戦であり、戦後の国際秩序に対する挑発」と批判した。

 シンガポールでも、歴史学者の林少彬氏が、「日本の侵略者が東南アジアの人々に東京の方角を向いて遥拝することを強要した歴史の傷を再びえぐるもの」と非難した。

 明治維新以降、日本による中国、朝鮮半島、アジア太平洋への侵略と植民地支配は、計2千万人以上の命を奪った。朝鮮半島では独立運動を弾圧し、創氏改名や強制連行など過酷な支配を行った。中国から台湾を奪い、東北地方に傀儡「満州国」をでっち上げ、南京大虐殺など数々の暴虐を働いた。

 こんにち、アジア諸国は経済力をつけ、半導体技術や宇宙開発など、一部では先進国と肩を並べている。政治力も年々、向上させている。とくに中国は購買力平価GDPですでに世界一となり、イラン戦争での和平仲介に見られるように、国際的影響力も高まっている。

 アジア以外でも、サウジアラビア、トルコ、パキスタンが「メッカ共同防衛協定」を締結するなど、諸国は対米依存を脱し、独自の動きを強めている。

 他方、米国は衰退を早め、巻き返しを図っている。国際刑事裁判所(ICC)への制裁のように、自らが主導してつくった「秩序」を破壊しているのはそのためである。無法なイラン戦争に事実上敗北、それでもイラン敵視をやめず、欧州との関係を決定的に悪化させている。

 このような世界での、高市政権の態度である。アジア、グローバルサウス諸国から見れば、時代錯誤もはなはだしい。

 グローバルサウス諸国との共生こそ、わが国が世界で平和的に発展できる道である。

中国とどう向き合うのか

 中国はグローバルサウスの中心国で、名目GDPでも遠からず世界一となる。この国とどう向き合うのか。

 東南アジア諸国は相次いで「一つの中国」を支持する立場を表明した。米国の同盟国である欧州諸国も、独仏英首脳が相次いで中国を訪問、レアアース(希土類)問題など懸案を抱えつつも関係を強化した。

 米国は日本と中国を争わせて「漁夫の利」を得、世界の覇権を維持しようとしている。

 わが国にとっても、対中国関係が最大の課題である。

 侵略と植民地支配に対する真摯な謝罪と反省の上に、日中関係を打開しなければならない。「台湾有事」を巡る高市発言を撤回し、台湾が中国の一部であるという「一つの中国」の立場を確認しなければならない。何度も確認されてきた、「内政不干渉」などの原則を守るべきだ。

 中国敵視政策をやめ、従属的日米関係を転換しなければならない。

 問題は、野党を含む多くの政党・政治家の態度である。「敗戦の日」に際して、日本維新の会はもちろん、野党の国民民主党、参政党、チームみらいの談話には、侵略戦争と植民地支配への言及はまったくなかった。野党の多くは高市政権の中国敵視政策に追随し、政治的対抗軸を立てられていない。

 わが国が世界で平和・繁栄の道を歩むには、過去への真剣な謝罪と反省が欠かせない。独立・自主で中国をはじめアジアと共生する、国民大多数のための政権を樹立しなければならないのである。

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