生成AIは「一般知性の結晶」
マルクスが指摘した一般知性とは、「知識そのものが生産手段になる」構造である。この知識とは、科学技術をはじめ、社会的経験や文化的蓄積を含む、社会全体の知識である。
生成AIは、一般知性の特徴を有しているのか。
①生成AIは社会の膨大なデータ(ビッグデータ)を学習している。「社会的知識の集積」といえる。②協働の成果を反映する。具体的には、論文やブログ、SNS、OSSなど不特定多数の知的生産物を取り込んで協働的なものとしている。ただし、アルゴリズムで排除しない限り「ゴミ情報」も「学んで」しまう。③生成AIは生産力の中心となる可能性をはらんでいる。すでにソフトウェア開発やクリエイティブ作業、医療、教育などの分野で、生成AIは重要な地位を占めており、その役割はロボットなどと結びついて日々増大している。例えば、パソコン用基本OSであるWindowsの開発は、その4割近くがAIによって行われている。④社会的知性の体現。生成AIは①で述べたように、「機械的形態」を帯びた一般知性である。
半面、生成AIは資本によって包摂されており、搾取の強化と資本主義の存続に貢献してもいる。
①OSSと同様、ビッグデータとしての社会的知識(共有財)が私企業の支配下に置かれることである。②ディープラーニング(深層学習)で発展する生成AIは企業の私的所有の下にあり、学習と機能するアルゴリズム、生み出される価値(使用料金など)も私的所有の下にある。③生成AIの基盤も私的に独占されている。AI基盤は、巨大なクラウド設備でできている。具体的には、高価なGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)やNPU(ニューラルネットワーク処理装置)を備えたサーバー用コンピューターを備えたデータセンターである。これを構築できるのは巨大テック企業のみである。④労働の代替と富の集中。生成AIは、業務の自動化を進めることで労働者の職を奪い、企業に富を集積させる。⑤技術的に先行する米帝国主義は、軍事利用にもっとも積極的である。すでにイラン攻撃などで使われている。
まさに、一般知性の成果が「資本の利益」に変換されるのである。このように、生成AIは「社会主義的可能性」と「資本主義による包摂」という、矛盾した2つの側面を有している。
社会主義下におけるAIの可能性
生成AIは、来たるべき社会主義下でどのように活用されうるのか。これは「技術の使い方」の問題ではなく、国家・資本・労働・データの関係が根本から異なる社会において、生成AIがどのような社会的意義を持つのかという論点となる。
まず、資本主義下での生成AIは、①モデルが巨大テック企業によって私的に所有されている。②社会全体の知識(一般知性)であるデータも私的に囲い込まれている。③生産性向上による利潤を企業が独占的に保有し、労働者の立場は著しく不安定化し、失業を生み出す。④巨大プラットフォーマーによる独占の下に置かれる。⑤帝国主義の国家戦略と結びつくことで、他国、人民への抑圧手段となる。AIの軍事利用、Mythosをめぐる諸国の懸念などが典型例である。
つまり、資本主義では生成AIは「一般知性の私的包摂」となる。
ひるがえって、社会主義では、生産手段の社会的所有、国家による計画、労働の組織化、公共財としての利用などによって、生成AIの位置づけが根本的に変わる。
①生成AIは、計画経済の強化装置となる。膨大なデータを統合し、需要予測に基づいてエネルギー配分を最適化し、生産計画をリアルタイムで更新、生産過程を自動化し、物流を最適化する。計画経済の「柔軟化」「高度化」である。
②データが社会の公共財として扱われる。これにより、AIモデルは国家の所有と管理下に置かれる。一般知性が「社会的所有」として扱われる。
③労働の自動化が失業ではなく「再配置」となる。すでに知的労働への補助としての生成AIの活用は進みつつあるが、社会主義下では政治権力の力によって、労働者の解雇ではなく、仕事の負担を減らし余暇を増やす方向で利用される。
④安全保障や社会信用システムなど、統治能力を強める方向に働く。政府が労働者階級とその党によって文字通り握られている条件下なら、プロレタリア独裁を発展させる可能性がある。共産主義社会への移行、つまり「国家の死滅」にも大きな影響を与えるかもしれない。
以上の点については、さらに研究が必要であることを指摘しておきたい。
「ラグジュアリー・コミュニズム」は実現するか
英国のジャーナリストであるアーロン・バスターニは、その著書『ラグジュアリー・コミュニズム』で、「技術による豊富化が資本主義を超克する」未来像を描いている。
その内容は、完全自動化により労働が不要になり、再生可能エネルギー・ロボット・宇宙資源によって社会が「欠乏」から免れ、生成AIなどの技術の加速によって資本主義が内部から変わるなどというものである。
バスターニ氏にとって、国家は「再分配や公共投資を通じて『豊富化』を支えるべき」存在であり、労働者階級による政権奪取と、その力による社会改造は必須なものではない。この点で、彼は「社会主義」という言葉を使いつつ、実は、資本主義の「加速化」を主張している。バスターニ氏の限界である。
それにしても、技術革新が従来の資本主義の枠内にとどまらないものとなっていること、「加速化」であれ何であれ、生産様式の変化が避けがたいことを指摘したものではある。Mythosはすでに国際政治上の問題になっているが、AIは現在の資本主義、国際政治の「手に余る」「制御できない」技術となりつつあるといえるだろう。まさに資本力と生産関係の矛盾、衝突である。
AIは、資本主義下においては巨大企業と資本家に利潤を独占させ、格差を拡大させる存在である。だが社会主義においては、計画と公共性、人民の統治能力の強化に結びつく可能性を有している。
生成AIは、資本主義と社会主義という生産様式の違いを、最も鮮明に可視化する技術の一つと言える。
労働者階級が革命によって生成AI技術を掌握し、自らの生活向上のために使うことで、人類社会は大きな発展を遂げる可能性を持っている。(О)