米国とイスラエルによるイランへの無法な侵略戦争、さらにトランプ政権によるホルムズ海峡の逆封鎖によって、世界の諸国・人民は甚大な被害に遭っている。エネルギー危機は物価高騰、食料危機、難民増大、紛争激化などとして長期化・深刻化するだろう。この惨状を引き起こした責任はもっぱら米帝国主義にある。
今回の危機により、エネルギーの約4割を原油に依存し、しかもその95%を中東地域からの輸入に依存しているわが国にとっては、米国の世界覇権を前提としたエネルギー政策がいかに脆弱であるのかが改めて浮き彫りになった。
一方、中国をはじめグローバルサウス諸国を中心に、世界の各国は再生可能エネルギーへのシフトを急速に進めている。日本はこの趨勢に立ち遅れ、時代錯誤の対米追随、化石燃料と原発への依存を続けている。
これを転換し、再エネ主軸の自主的で自給可能な資源・エネルギー政策を確立しなければ日本の未来はない。今回の危機は転換の絶好の好機でもある。
国民の命と健康、経済の危機
原油価格高騰が国民生活にさらなる打撃を与えている。さらに、プラスチックやゴム、接着剤、窒素肥料などの原料までも枯渇する危機的状況である。
大企業は危機への対応を急ぎ、犠牲を下請けや国民・労働者に転嫁する価格引き上げを進めている。
対して中小零細企業は、コロナ禍以降の資金繰り悪化にコスト増が加わり、経営はますます厳しい。トラック、バスなどの運送業界では、燃料を満タンにできない実態が生じている。資材高騰、さらにTOTOによるユニットバス受注停止で、建設業界への悪影響も甚大だ。
農家経営にも、ビニールハウスや農機具の燃料費高騰、肥料の高騰・不足などとして負担が襲いかかっている。すでに存亡の危機にあるわが国農業はさらに追い込まれている。
医療現場の事態はさらに深刻だ。ナフサ由来の手袋、注射器、透析用人工腎臓などのプラスチック製品全般が価格高騰と供給不足に陥りつつある。30万人以上の人工透析患者にとって、機器不足は死活問題だ。
栃木県下水道資源化工場で使用される助燃剤(重油)の入札企業が全社撤退するなど、自治体のインフラ稼働も危ぶまれている。
電力不安のみならず、多くの国民が「命の危機」に直面する危機である。政府は国民の生活と命を守るため、直ちに行動しなければならない。
国民生活を顧みぬ高市政権
高市政権は、イラン戦争を引き起こした米国に即時停戦を求めなければならない。和平なしに、当面のホルムズ海峡の安全さえ確保されないからである。
だが、高市政権は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」などとトランプ米政権をもちあげ、世界でも突出した対米追随ぶりだ。一方、イラン首脳との電話会談は形ばかりで、具体的成果はない。
また、米国からの原油輸入など代替輸入ルート探しを進め、備蓄原油の放出を行った。米国からの調達拡大は、「中東依存」を「米国依存」に置き換えるだけである。
石油元売りへの補助金支給も打ち出したが、この補助金はすでに累積9兆円にも及ぶ。企業をボロ儲けさせる、不公平なものである。
何より、高市政権は物資不足の現実を国民に隠し、「サプライチェーン間の石油製品の融通」で事足りるかのようなデタラメを振りまいている。国民を守ろうとしない高市政権を断じて許してはならない。
「中東依存」は「米国依存」
エネルギー安全保障の観点に立った、自主的で自給可能な政策が必要である。
わが国の原油依存と中東依存はどのように形成されたのか。
戦後、米軍占領下に置かれたわが国は、国内での石油精製を禁止され、原油輸入先を選ぶ権利さえ奪われた。
1952年に原油輸入と製油所稼働が再開された。朝鮮戦争を戦う米軍を支えるためだ。国際石油資本(メジャー)が中東地域での油田開発を本格化させるなか、日本をその市場とする狙いもあった。
1960年を前後して、政府は「石炭から石油へ」を合言葉にエネルギー政策を転換し、三井三池など国内炭鉱をつぶし、米国とメジャーに忠実に振る舞った。
こうして、日本に「中東原油向け」製油所が林立することになった。製油所は他地域産の原油に切り替えにくい構造となり、改修には数十億円規模の投資が必要である。
それでも、自主的な試みもなされた。1953年、日系企業は英国の圧力をはねのけ、イランから原油を輸送した。
第1次石油危機の原因となった第4次中東戦争に際し、田中首相は「イスラエル支持」を求めるキッシンジャー米国務長官の圧力に屈せず、原油確保のために「親アラブ外交」をとった。これを機にインドネシア、中国などからの輸入が増え、中東依存度は60%台後半に下がった。
だが、企業はアジア諸国内での需要増加を理由に「コスト優先」で中東産を選ぶようになった。中東からアジアまでの「シーレーン」に展開する米軍のプレゼンスに頼った面もあろう。
結果、中東依存度が9割を超える現状が形成された。わが国の原油依存、中東依存は、戦後の対米従属政治の下で形成された。
1960年代に始まった原子力政策も、日米原子力協定に典型だが、原油以上の対米従属である。
高市首相は、同じ自民党政権でありながら、田中政権とは対照的だ。脆弱な原油依存、中東依存から再エネへの転換なしに、エネルギー政策は成り立たない。
趨勢に立ち遅れる日本
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のスティール事務局長は、イラン戦争が世界の再エネ移行を「急加速させている」と述べた。再エネへのシフトは世界の流れである。
とくに、中国は再エネへの継続的投資を行い、技術・製造力を急速に育成・強化している。
2030年までの第15次5カ年計画では、炭素強度(GDPあたりのCO2排出量)を17%削減し、エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合を25%に引き上げるなどを国家目標とした。
インドは太陽光発電で世界第3位である。ベトナムも太陽光発電の導入を世界最速級で進め、インドネシアも国家戦略として電池産業を育成している。
脱炭素に懐疑的な勢力が台頭する欧州諸国でさえ、流れは変わっていない。ドイツは45年の「温室効果ガス実質ゼロ」を法律で義務化し、スペインも電力の半分以上を再エネが占める。
他方、米国はパリ協定から離脱するなど、化石燃料にこだわっている。国内資源が豊富という理由だけではない。1970年代にサウジアラビアとの密約で原油取引をドルにリンクさせ、膨大なオイルマネーを還流させて金融で稼ぐ「ペトロダラー体制」をつくり上げてきたからだ。
日本は、グローバルサウス諸国を含む動きに、完全に立ち遅れている。
日本政府は1990年に初めて「地球温暖化防止行動計画」を策定、1998年に「地球温暖化対策推進法」を制定した。再エネ導入が進み始めたのは、2011年の福島第一原子力発電所事故後である。2020年には2050年の「カーボンニュートラル宣言」を行い、2021年には「グリーン成長戦略」を策定した。2025年に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再エネ比率4~5割を打ち出した(現状は約2割)。
だが、この目標達成はきわめて困難である。計画の実行における国の責任があいまいなこと、送電網が未整備なこと、電力市場が複雑なこと、トライベイキャピタル事件のように悪徳業者の参入を多数許したことなど、諸問題が放置されている。しかも「第7次計画」では、原発の新増設に転換し、石炭火力廃止の期限も設けていない。これは「再エネ重視」と正反対である。
エネ政策転換、米従属転換を
今こそ、再エネ主軸へと政策を大転換することが求められている。
化石燃料を主軸にする限り、中東をはじめ国外の環境に揺さぶられることは避けがたい。再エネの比率が高ければ、このリスクを軽減できる。しかも原発と正反対に、再エネはコストや安定性で最も優れている。再エネ政策は、地域循環型経済構築の一環として推進される必要がある。
再エネ政策に後ろ向きな高市政権や一部自民党議員は、厳しく批判されなければならない。
国民民主党をはじめ、野党にも「再エネ慎重派」議員が多数いる。
地球温暖化自体に懐疑論を振りまく参政党などの極右勢力、一部マスコミや「識者」の無責任な論調も問題である。
これらの多くは、トランプ政権の「化石重視」を「根拠」にしている。イラン戦争を機に加速しつつある世界の趨勢を見ず、とりわけ中国の変化に目をふさいでいる。太陽光パネルでの中国企業のシェアが大きいことを口実に、「太陽光=中国」という、中国敵視の世論操作と結びついた暴論まである。
再エネを中心とする自主的、自給的エネルギー政策への転換は、対米従属のわが国の進路を変える重要な一環である。
高市政権が政策を転換できないなら、打ち倒すしかない。国民の高市政権への不満と怒りは、生活苦を背景に急速に高まっている。
エネルギー危機は、対米従属政治を打破し、自主的政策に踏み出す好機でもある。