地方政治 インタビュー

熊本地震/農家に寄り添った復興支援をーー美里町・内田敬介さん(みさと土といのち協同農園)に聞く

 この地域は10年前の地震よりも相当ひどい状況です。地震当日、私はテーブルに座っていました。突然の大きな揺れで食器棚が倒れてきましたが、危ういところで助かりました。母屋と納屋に大きな被害があり、納屋は傾き、入るのが怖いほどです。

 納屋は解体しなければいけないと思いますが、それまでの間どうするかも悩みの種です。コメの保冷庫やコンバイン、トラクターなどをどこに置くのか。コメは10月中旬には収穫を迎えるので、その玄米をどこに保管するのか。多くの農家が被災して、それぞれに差し迫った問題を抱えています。

ひび割れた田んぼに立つ内田さん

思いあまって町の農政課に

 そんな状況なので、役場の農政課に話しに行きました。ところが、「被害があった母屋の対応で精いっぱい、生活が最優先ということで、農業まではまだ手が回りません」と言われました。忙しい状況は分かりますが、もう少し何とかしてほしいと思い、とても残念でした。

 町は、農家の被害の実態や要望を把握することを早くやってほしい。今までの救助法の内容だけでなくさらに充実した支援を考えてほしいのです。私の場合、納屋の解体をしなければなりませんが、「公費解体」はこれまでは、農家の担い手や認定農業者、新規就農者が対象でした。これでは対象から外れる人が出ます。「農家」全体に枠を広げて適用してほしいです。

 中山間地は特に高齢者が多く、対象にならない可能性があるので、この際、全部対象にしてもらいたい。地元JAもそう求めています。このままでは、頑張って続けていた農家が、被害を契機に農業をやめてしまうことになるのではと心配です。

続く日照りで田んぼにひび割れ

 地震と合わせて、今年の日照りで参っています。雨が降らないので田んぼにひびが入っています。今は出穂期なので、一番水が必要な時なのにカラカラです。地震の後片付けで、田んぼの水管理や草取りまでとても手が回りません。今年の米はもうあきらめるという感じです。

 この地域ではコメだけでなく、特産の栗が雨不足でかなり収穫が少なくなるのではといわれている。昨日聞いた話では、「実が小さくて、半分はとれんだろう」と言っていました。また柚子の木も何本か枯れたと言ってました。里芋も全く出来が良くないです。近くに、コメだけでなくアスパラガス、柚子、お茶など大規模でやっている農家がありますが、母屋も小屋も壊れてしまって、農業収入も大きく減って、本当にどうするのでしょうか。

農家に支援を、地域を守ろう

 これまで、ボランティアの人5人が2回来て、片付けを手伝ってくれました。納屋の冷蔵庫と洗濯機も出しました。全部割れた母屋の食器も、軽トラ6台分出してもらいました。

 奈良から来た人がいましたが、能登半島の地震の時に支援に行き、その後も農家とつながりができ、稲刈りや草取りにも行っているということでした。被災した人がどんな気持ちでいるか分かってくれてました。とてもありがたかったです。

 私は命は助かってよかったですが、高齢です。これからの生活をどうするか、農業をどう再建するのか、不安でいっぱいです。地域の多くの農家がそうだと思います。このままでは農業をやめてしまうのではと心配です。それでは地域を守ることもできません。

 行政はもっと被災した当事者、農家・農民のことを考えてほしいです。農業する人が何に困っているのか、どうしたいのかを聞き、農村・農業危機ととらえ、相談窓口を作り、再出発する手立てを支援してほしいです。    (文責・編集部)

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