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非正規公務員として16年間働き、雇い止めに 制度の問題や偏見・無理解を変えたい

 私は埼玉県の男女共同参画推進センターで会計年度任用職員として働く非正規公務員でしたが、2月下旬に雇い止めを告知されました。今の時期に私と同じように職を失う会計年度任用職員は全国に多数いるはずです。

 こうした雇い止めの背景には、会計年度任用職員制度が抱える制度上の問題に加え、女性の労働に対する偏見や軽視、公務非正規職員の境遇に対する無理解など、さまざまな問題が存在します。当事者でなければ伝えられないことがあると思い、私の経験や思いを記すことにしました。

依然として続く公募

 私は16年間男女センターで男女共同参画専門員として働いてきました。内閣府が女性のチャレンジ支援策をやっていた2010年に採用され、経済的な困難を抱えた女性(シングルマザーや若年女性)への支援事業を主に担当してきました。

 具体的には、パソコン講座をはじめ弁護士等専門家によるセミナーや当事者同士のグループ相談会等です。この仕事に資格は要りませんが、人との関わりを避けてきた女性たちと少しずつ関係をつくり話してもらえるようになるにはそれなりの経験が必要でした。下を向いていた女性が、情報や知識、さまざまな体験により少しずつ元気になって前を向いていく様子に寄り添いながら支援することにやりがいを感じていました。その後、直近では女性リーダー応援講座や修了生のフォローアップとしてのオンラインカフェなど、地域で活動する女性を支援する事業に関わりました。

 20年4月から、従来あった自治体の臨時・嘱託職員に代わる制度として、会計年度任用職員制度が施行されました。私はその前年の19年から埼玉県職労の方や職場の有志と共に定期的に制度についての勉強会に参加しました。また制度導入に合わせて県職労の臨時・非常勤部会を立ち上げ、その代表も務めるようになりました。

 この制度の大きな問題として任期と公募が導入されていることがあります。任期は会計年度内の最長1年で、勤務成績により原則最大2回まで(計3年間)の再度の任用が可能とされました。それ以降は公募による選考試験を経るのが基本とされ、継続して働くことを希望しても公募にかけられて不採用に遭うこともあります。多くの会計年度任用職員は雇用の継続に不安を抱えながら働いています。

 私は組合を通じて20年から毎年県に要求書を提出し、「3年公募」の撤廃を求めてきました。3年公募については、24年に総務省がマニュアルを改正し、自治体が実情に応じて雇用継続できることが明確になりました。これを受けて現在は3年公募撤廃の動きが各地に広がっています。

 しかし埼玉県の人事課は、周辺自治体でも3年公募を継続していることもあり依然として公募を続ける姿勢です。雇い止めの手段として温存しておきたいのかもしれません。

 そしてこの2月、3回目の公募において私自身が不採用通知を受けました。理由について職場に説明を求めましたが、「公募試験点数の上位者を採用した」と伝えられただけです。会計年度任用職員は毎年実績評価を受けていますが、その結果は公募結果に全く反映されなかったようです。

制度が雇い止めの手段に

 これまでの県との交渉や雇い止めされた経験を通じて、本庁と現場との認識のギャップを痛感しています。会計年度任用職員は制度上「補佐的な仕事」とされているためか、業務も職員自体も軽んじられていると感じます。実際には、正規職員は2〜3年で異動するため、継続して職場を担う非正規職員の方がより重要な役割を担っているケースはごく普通に存在します。しかしこうした現場の実態を交渉の場で説明しても、本庁の職員はなかなか理解してくれません。

 私が従事していた男女共同参画専門員は、経験も知識も必要な仕事ですが、国家資格等の公的な資格ではありません。交渉の場で私が「専門性が…」などと話した時、人事課の担当者から鼻で笑われたことがあります。また、別の人事課の人からは「私たちが求めているのは一流レストランのシェフではない。学校給食の調理員でいい」と言われたことがとても印象に残っています。会計年度任用職員を軽く見ているだけでなく、男女共同参画専門員の仕事や調理員の仕事も軽く見ているとしか思えません。

 また、継続雇用に不安を抱えながら働く会計年度任用職員の心情に寄り添う気持ちや姿勢が欠けているように感じざるを得ません。

 人事課は会計年度任用職員の任命を所属ごとに任せているため、所属長次第で公募期間や運用が異なります。昨年4月に着任した私の職場の新所長は公募に積極的で、公募期間を延長したり自ら各所に公募を宣伝したりしていました。私が直接聞いたわけではないのですが、所長と副所長が「たくさん応募が来ています」「それはいいですね」というような会話を会計年度任用職員にも聞こえるところでしていたそうです。その会話が聞こえてくる職場で仕事をしている会計年度任用職員がどんな気持ちになるか全く配慮していません。それを聞いて私たちが「職が無くなってしまうのでは…」と不安になるとは思わないのでしょうか。また、困難な問題を抱えている女性を支援する施設の責任者が困る女性を生み出す側になっていることの自覚はあるのでしょうか。

 また、25年に発行された総務省のマニュアルには、長く働いてきた職員を再任用しない場合、事前に十分な説明を行い、他の求人を紹介するなどの配慮が望ましい、という旨が明記されています。にもかかわらず、私が不採用通知を渡された際にはそのような対応は全くありませんでした。組合を通じてその点について問いただしたところ、急に副所長がハローワークのインターネットサービスのリンクを知らせてきました。また副所長は人事課に対しても「本人から継続して働きたいとの申し出がなかったから伝えなかった」と言い訳をしていて、絶句しました。公募へのエントリー自体が職の継続を希望していると思わないのでしょうか。職を失うことへの切実さに思いが至っているとは思えません。

 公募制の名目である「雇用の公平性」が疑われるケースも少なくありません。正規職員は制度上、62歳で定年を迎え、その後65歳まで再任用されますが、65歳以降の受け皿として会計年度任用職員となるケースです。

 今回の私の雇い止めでも、採用された3名の会計年度任用職員は全員がかつて職場に所属した元正規職員でした。「仲間」に忖度した恣意的採用で、退職後の選択肢として会計年度任用職員という席が利用されているとしか思えません。「今回は定員の倍以上の応募があった」と所長から説明がありましたが、元職員しか採用されないのであれば、県民に広く公募しても形式でしかなく、他の応募者にも失礼です。

 長年現場で働き経験を積んだ非正規女性が元職員に取って代わられることは、不条理なだけでなく、人的資源の流出でもあります。「この職場は元職員の受け皿」と認識されれば、今働いている人もこれから働こうとする人もこの職場を避けるでしょう。自治体や社会にとっても損失だと思っています。

 同様のことは全国で起きていると聞いています。この制度自体を見直す必要があるのではないでしょうか。

連帯もっと広げたい

 労組の組合員として活動してきたにもかかわらず、結果として雇い止めに遭ったことは残念でなりません。「組合に入っていれば雇用は守られるということはない」と人事課から組合に話があったそうです。正規職員は無期雇用なのでそもそも首を切られることはないのですが、非正規職員でも組合の会計年度任用職員の代表として要求書も出してきたので、簡単に雇い止めになるとは正直思っていませんでした。組合員の多い組合ではないため、力が弱かったことは否めません。

 ただ、組合がなければ実際には当局との交渉の場さえ設けることが難しいのですから、労組は絶対に必要です。

 今後は、学校関係など他組合を巻き込んだアクションを検討するなど、横のつながりを広げることも必要だと思っています。

 また、私は公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)でも活動しています。会計年度任用制度は、学校や女性関連施設の相談・支援員や司書、給食調理員、学芸員、保育士など、女性の割合が高い職種で導入されていることが多い実際があります。当事者である女性同士がつながり合って状況改善に取り組むことが必要だと思っています。実践としては、毎年インターネット上でアンケート調査を行い、その結果を基に要望や提言を国や自治体に行っています。

 私自身の職がどうなるのかが分からない状況ですが、今後ともこの活動に関わっていきたいと思っています。(埼玉県・S)

はむねっとは3月20日、発足5周年ハイブリッド集会を東京とオンラインで開催した。集会の様子や毎年行われてきたアンケート調査の結果などは、はむねっとのホームページで見ることができる。

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