英国の統一地方選挙が5月7日に行われ、与党・労働党が歴史的な大敗を喫した。最大野党・保守党も大敗し、右派のリフォームUKが大量議席を獲得したほか、イングランド・ウェールズ緑の党(緑の党)も躍進した。昨年5月の地方選挙(リフォームUKがゼロから677議席に躍進)に続く、統一地方選挙の衝撃的結果は、英国の「二大政党制」が終焉を迎えた。
劇的な結果となった地方選
今回は、2024年の総選挙で14年ぶりに政権に就いた労働党・スターマー政権への審判や、次期総選挙を占う選挙として注目されていた。
イングランドの改選議席約5000のうち、労働党は2564議席から1068議席に激減、保守党も1364議席から801議席と後退した。改選前わずか2議席だった右派政党・リフォームUKが1453議席へと大幅増、若者を中心に支持された緑の党も、146議席から587議席となった。
ウェールズでは、地域政党・ウェールズ党が最多票を獲得、リフォームUKが第二党、労働党は三番手に沈んだ。労働党がウェールズ議会で最大政党の座を明け渡すのは、歴史上初。
スコットランドでは、地域政党・スコットランド人民党(SNP)が最多票を獲得、英国からの独立や欧州連合(EU)再加盟を求める有権者の支持を集め、労働党から支持を奪い返し党勢を回復した。
英地方選挙はほぼ小選挙区制で、極端な議席数の変化が現れることがある。得票率で見るとリフォームUKが26%で最多だが、緑の党16%、労働党17%、保守党17%、自民党16%などで、議席数ほどの差はない。
結果は単なる「多党化」ではなく、既存政治・政党への国民の怒り・失望が表面化したと言える。保守党も労働党も「自分たちこそ現実的な政党」と主張してきたが、その結果が今の英国の姿であろう。
とくにスターマー政権は、政権復帰直後から財政緊縮政策を打ち出すなど、国民が期待した生活改善を実現できなかった。物価は高止まりし、家賃は上昇、税負担は重く、NHS(国民医療サービス)など公共サービスは改善されず、失望感だけが残った。移民排斥の暴動も全国で吹き荒れた。この2年近く続く経済成長の停滞についても、政府や既成政党は「戦争の影響」「世界情勢の不安定化」「エネルギー価格の高騰」といった説明に終始し、具体的な対策をとれなかった。
英国の衰退加速したEU離脱
1980年代にサッチャー政権が進めた規制緩和や国営企業の民営化などは、金融業中心の産業構造への変化、貧富の格差の拡大などを招いた。
不満は「第三の道」を掲げたブレア労働党政権を誕生させたが、イラク戦争参戦で批判を浴びて退陣、ブラウン政権が続いたが、2010年に保守党と政権交代した。
英国ではEU拡大への不満が広がり、特に2004年の「東方拡大」による移民大量流入、11年「アラブの春」以降のイスラム系移民の急増に対する「不安」の拡大、EUの権限拡大に対する「自国決定権・主権の回復」を求める声などが高まっていた。
16年、キャメロン保守党政権による「賭け」が裏目に出て、国民投票の結果EU離脱賛成が52%となったが、国論が二分される状態が続いた。
貿易、アイルランドとの国境、漁業など、離脱交渉は困難を極め、後任のメイ首相は辞任に追い込まれ、ようやく2020年にジョンソン首相のもとで離脱が完了した。だが、ジョンソンはコロナ禍対応や素行不良で辞任、トラス、スナクと保守党政権が続いたが、支持は回復しないまま、24年の総選挙で労働党に大敗を喫した。
EU離脱後は労働力不足や貿易手続き複雑化で輸出も減少するなど、経済悪化に歯止めはかかっていない。最近の世論調査では離脱が「間違いだった」との答えが54%に上っている。
「希望」ではなく「怒りの投票」
現在の英国では移民が全人口の17%を占めている。今後、移民排除の方向に進めば、英国は「国が成り立たない」という現実に直面する。ブレグジット(EU離脱)時と同じ構図である。
二大政党は課題を解決できなかった。国民は政治に未来を期待できない。「希望の投票」ではなく「怒りの投票」「拒絶の投票」であった。
政権政党への根深い批判・不信は、独・仏などの欧州諸国や米国、日本にも程度の差はあれ共通している。問題は、労働者階級に根ざし、貧困や「格差」などを打開できる革命的政党が登場できていないことである。英国だけでなく、わが国を含む先進国労働者階級の共通の課題である。(H)