社説

国民生活に背を向ける高市政権と国会与野党 血税は大企業支援と軍拡でなく国民のために使え

 米国とイランの「停戦合意」にもかかわらず、戦闘は続いている。米国による侵略戦争は、被害国のイランはもちろん、物価高などの形で負担が全世界人民に押し付けられ、しかも危機の長期化は避けられない。

 わが国も例外ではない。米国のイラン侵略に反対せず、戦争終結への動きはパキスタンや中国任せだった。しかも歴代政権の悪政で、多くの国民の生活と中小企業・農家の経営は危機的である。これに原油高・ナフサ不足と物価高騰が加わった。

 国民の大多数が多大な苦難を強いられる一方、日経平均が7万円に達する異常な株高、円安による円換算利益の増大などで、大企業や資産家は「笑いが止まらない」。

 高市政権は、社会保障制度改悪などで国民に犠牲を押し付け、軍需産業をはじめとする一部企業・投資家のための政策を進めている。この方向は、秋に向けてさらに加速する。生活苦の打開は「待ったなし」だ。

 だが、与野党の国民そっちのけの国会状況はあまりにひどすぎる。衆議院の議員定数、皇室典範などは重要な問題だ。だが差し迫った課題は、わが国の進路と併せ、何よりも国民生活の危機打開だ。

 高市政権への対抗軸を明確にさせ、国民運動で反撃し、政治を転換しよう。

「物価高騰対策」は企業補助金

 国民をとりわけ苦しめているのは、物価上昇のエスカレートである。

 消費者物価指数(2020年=100)は、この5月に113・5に上昇した。食料品物価指数(2020年=100)も、同128・7と約3割も上昇。円安も急速に進行し、輸入価格を押し上げている。

 一方で円安が5%程度進むと、大企業の経常利益は約2%も押し上げられる。トヨタ自動車は、24〜26年度の営業利益に、対ドルで500億円、対ユーロで100億円も為替差益が上乗せされた。

 国民の生活実感では、物価上昇は3割どころではない。

 生活苦の打開が急がれるが、高市政権の対策はまったく不十分である。ナフサをはじめ石油関連製品の不足を認めず、危機の長期化に備えた調達戦略を取らなかった。医療現場をはじめ多くの中小企業の悲鳴を、聞こうともしていない。

 2022年以降、政府は「物価高対策」として、石油元売り企業に累計約27兆円もの燃料補助金を与えた。だが、実際の価格引き下げ効果は補助金額には達しない。その乖離(かいり)は年間100億円を超え、この分は企業の儲(もう)けになった。

 国民への給付金は2022年以降の累積で約6・5兆円と、石油元売り企業への補助金の4分の1以下と、ごくわずかだ。誰のための「物価対策」なのか。

 物価高対策というなら、まずは大幅賃上げが必要である。

 わが国労働者の実質賃金は1997年以降、ほぼ下がり続けている。労働者の非正規化が主因である。

 折しも、最低賃金(最賃)改定に向けた議論が6月26日、中央最低賃金審議会で始まった。最賃引き上げは非正規労働者や中小企業労働者への影響が大きく、きわめて重要だ。

 高市政権の最賃政策は、石破前政権からさえ大きく後退している。石破前政権は「時給全国平均1500円」の達成時期を「2020年代中」に前倒しした。高市政権はこの目標を撤回し、「遅くとも30年代前半」と後退させている。

 「最賃1500円」が実現できても、労働者の手取りは月19万円程度で余裕はない。即時、全国一律2000円以上、2030年には少なくとも3000円程度に引き上げるべきである。

社会保障制度改悪も続々

 高市政権は今第221回国会で、社会保障制度で二つの悪法を成立させた。

 医療保険制度改定法は、OTC類似薬(市販薬と同等の成分・効能を持つ医療用医薬品)を保険対象から一部外し、患者に追加負担を課す。厚労相の裁量で薬剤費を全額患者負担にでき、薬剤以外の医療行為全般も保険適用から外す条項も含まれている。

 国民皆保険制度の破壊に導きかねず、国民の命と健康を危険にさらす法律だ。

 高額療養費制度も見直され、医療費の月単位の自己負担上限額が引き上げられる。難病患者の負担は確実に増える。

 社会保障・福祉制度改革関連法では、人口減少地域で新基準「特定地域サービス」を新設し、介護や障害福祉への人員配置基準を緩和し、定額報酬の選択も可能とする。全国一律の原則を崩し、地方におけるサービス切り捨てにつながるものだ。

 すでに、訪問介護事業所がゼロまたは1の自治体が全体の2割以上を占める。介護保険制度は崩壊しており、国の責任での制度再建こそが必要である。

 高市政権は6月30日、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針)原案を示した。現役世代の健康保険料率などを引き下げる一方、70歳以上の高齢者医療費の窓口負担を3割に引き上げる。

 高市政権は、従来の「65歳以上=高齢者」という定義を見直し、医療費などの自己負担拡大、年金受給開始年齢の引き上げなどを画策している。

 政策を世代間で差別し、高齢者に社会保障費負担を押し付けようというものだ。

軍需産業などに多大な奉仕

 他方で高市政権は、中国敵視の大軍拡に巨額の財政をつぎ込み、対国内総生産(GDP)比率3・5%(約24兆円)にまで引き上げようとしている。

 22年の「安保3文書」改定以降、わが国軍需産業の中心企業である「重工3社」(三菱重工、IHI、川崎重工)の軍需分野の売上高は増加の一途だ。2023年度以降、毎年20〜35%も増え続けている。3社の時価総額も、この3年半で4倍〜9倍に膨らんだ。

 米国からの武器購入であるFMS(対外有償軍事援助)の金額もうなぎ上りだ。「3文書」改定以前は年間4000億円前後であったが、2023年度以降は平均1兆円を超える。

 わが国政府による大軍拡は、米日軍需産業に奉仕するものである。衰退する米国は、日本を「対中国」の前面に立たせて争わせ、「漁夫の利」を得ようとしている。「利」の一つが、日本への武器売却益だ。

 また、高市政権は「強く豊かな日本」投資枠として17分野を指定、40年度までに官民で累計370兆円超の成長投資を行うという。とくに人工知能(AI)・半導体に全体の3割近い約101兆円を投じる。ほかに、軍需産業、創薬・バイオなどが挙げられている。これも大企業に資金を提供するものだ。

 しかも、概算要求における「シーリング(上限)」を撤廃し、「対中国」などの名目さえあれば、枠にとらわれない要求が可能になる。「特に重要かつ機密性の高い分野」については、特別会計を用いて管理・運用する。

 金額でも制度でも、高市政権の大企業奉仕には際限がない。

高市政権への対抗軸確立を

 国民生活に切実な問題は、国会でほとんど議論されていない。与党の悪政は断じて許しがたいが、それを追及せず、追随する野党の責任も重大だ。例えば、社会保障・福祉制度改革関連法には、中道改革連合、国民民主党、参政党、チームみらいが賛成した。政治・政党に不満が高まるのは当然である。

 高市政権は、給与所得のある現役世代(特に30歳代〜50歳代)に、社会保険料引き下げなど一定の利益を与えてひきつけようとしている。日本維新の会や国民民主党なども同様である。高齢層への負担で、保険料の引き下げ財源を捻出するのは許せない。

 国民民主党は「手取りを増やす」を掲げ、給与所得控除の引き上げを目玉としている。この政策では、自営業者やフリーランス、所得税を払っていない低所得者や年金だけで生活する高齢者には恩恵がほとんどない。しかも、税率の高い高所得層ほど減税額が大きくなる。

 共産党などが主張する「消費税率引き下げ」はどうか。

 1989年に導入された消費税は、当初の税率3%から現行10%へと引き上げられた。地方分を含む消費税収総額は、年間30兆円を超える最大の財源となった。一方、法人税は42%から23・2%へと大減税。税収全体へのシェアは、37%(1位)から25%(3位)に下がった。

 「消費税は社会保障財源」という政府や多くの与野党の言説はデタラメである。消費税は大企業の国際競争力を高めるため、負担である法人税を引き下げるための代替財源として機能してきた。消費税には、輸出企業への膨大な「還付金」(年間約8兆円)もある。

 大企業優遇の消費税は、廃止以外にない。

 介護・年金・医療など社会保障制度は、国の責任で抜本的に拡充しなければならない。

 財源は、所得税の累進制強化、法人税率を消費税導入前に戻す、大企業の内部留保への課税、金融など資産所得への課税強化などで確保すべきだ。財源はいくらでもある。

 最低賃金の引き上げを中心とする大幅賃上げ、非正規労働者の正社員化などで、国民の所得を増やす政策が必要だ。体力の弱い中小企業に直接支援し、賃上げした企業には法人税減税などを行うべきだ。

 野党議員には奮起を求めたい。切り捨てられる地域で住民と向き合う地方議員の役割は重大だ。特に労働組合は立ち上がりつつある人々と結びつき、先頭で闘おう。

 高市・自維政権を倒し、国民大多数のための政権を樹立するために奮闘しよう。

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