第52回主要7カ国首脳会議(G7サミット)が6月15日から3日間、フランスで開かれた。
世界はすでに、中国、インドなどグローバルサウス諸国の経済成長、政治的発言力の増大などで、帝国主義諸国の凋落は年を追って明らかになっている。
今サミットでは、パートナー国としてブラジル、韓国、エジプト、インド、ケニアの5カ国が招待された。ブラジルとインドは中国やロシアと並んでBRICSの原加盟国で、エジプトも2024年にBRICSに加盟、G7のメンツはこれらの国の協力で保たれた。
「米国第一主義」のトランプ政権の再登場で、昨年のカナナスキス・サミット(カナダ)に続き、今回のサミットでも包括的な首脳宣言は見送られた。地政学的課題や持続的で強靱な成長など9つの個別課題での宣言や声明は採択されたが、いずれもG7だけでは達成できない課題だ。
マクロン仏大統領は、トランプの都合に沿う形で日程をずらし、「米国独立250周年」を祝う名目でベルサイユ宮殿で夕食会を企画。メルツ独首相もサッカー・ワールドカップ独代表のトランプの名前入りユニホームを誕生祝いに贈った。関税政策やグリーンランド問題などで深まる米欧間の亀裂を覆い隠し、G7の協調に背を向けるトランプの引き留めに奔走した。米国のイラン攻撃には与せず、トランプの怒りを買った欧州各国だけに、滑稽というより哀れというほかない。
米国はイラン攻撃の「敗者」
米国はサミット直前にイランとの戦闘終結合意を発表、14項目の「覚書」に署名した。
トランプは各国首脳の前で勝ち誇ってみせたが、「覚書」はイランが示した提案を基礎としたもので、イランの立場を強化し、米にとっては「前例のない大幅譲歩」だ。米国内でも「覚書」に対する批判、不満が相次いだ。
「覚書」の詳細は省くが、第2項に「米国とイランは、相互の主権と領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する」ことが入れられた。
米国は1980年の断交以来、初めてイランの「主権」と「領土」を認め、四十数年来のイラン政策の転換を余儀なくされた。米国はイラン攻撃の目標をほとんど達成できず、「敗者」となった。
その後も米・イラン間の散発的な攻撃が続き、イスラエルのヒズボラ攻撃もやまず、「覚書」の完全履行は保証されていない。だが、主導性を握っているのはイランである。
米国の威信は地に堕ち、他の湾岸諸国も「脱米国」を模索し、トルコ、パキスタンなども新たな中東秩序を探り始めている。
トランプの戦略的失敗は明らかである。
ASEAN、ロシアとエネ協力
サミットと同時並行で17・18日、ロシアのカザンで東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議が開かれた。エネルギー分野を含む協力推進をうたう「カザン宣言」などを採択した。
「宣言」はハイレベル対話への支持や安全保障を巡る対話の強化、エネルギー分野での協力深化、貿易・投資の拡大などが盛り込まれた。会議にはマルコス比大統領やベトナム、ラオス首脳やASEAN加盟国で唯一対ロ制裁を発動しているシンガポールのウォン首相も出席した。G7がウクライナ支援で対ロ制裁強化を打ち出す中、米国が生み出した原油供給不安によって、ASEAN各国は「実利を優先」したのである。
高市、中国を名指しで攻撃
G7サミットに今回初めて出席した高市首相は、グローバルサウスとの連携に関するセッションで、中国を名指しし、重要鉱物などの対日輸出規制について「G7や同志国のサプライチェーン(供給網)に深刻な影響を与えかねない」と非難した。持続的な経済成長に関するセッションでも「非市場的政策・慣行と過剰生産を是正することは、多くの国にとって共通の課題だ」と中国を名指しして攻撃し、共同声明にも盛り込ませた。
他のG7首脳は経済低迷にあえぐ中、いずれも経済人を帯同して中国を訪問、中国との互恵関係、経済的連携の強化などについて合意している。中国の台湾政策についても異を唱えていない。中国とどう向き合うのかは、各国にとって死活的な課題である。
G7の首脳の中で高市だけが首相就任以前も含めて訪中経験もなく、最悪の対中関係の打開の糸口さえつかめない。その中での中国非難のはしゃぎぶりは、世界の趨勢に反する外交感覚である。
世界の動きを冷静に見渡して、長期の見通しに基づいた、地味だが地についた外交こそ求められているのではないか。(H)