高市政権は活発なアジア外交を進めている。衰退・凋落する米国に代わるかのように、中国に対抗し包囲する「諸国連合」の形成を策動している。国内では、国家情報局の設置、さらにスパイ防止法を画策するなど反動的国家体制づくりと軌を一にしている。
55年体制下の自民党単独政権でさえ曲がりなりにも維持してきた「専守防衛」「武器輸出禁止」「非核三原則」などの外交安全保障政策の制約は、高市政権下で完全に投げ捨てられた。防衛予算が国内総生産(GDP)1%枠を超えて膨張しただけでなく、戦後初めての軍備増強の目的税も導入した。
これは米国の世界戦略を補完しながら、本格的に日本の政治軍事大国化を目指すものだ。
片や、習近平・中国国家主席とトランプ・米大統領が5月中旬、北京で会談した。
世界経済はすでに中国をはじめグローバルサウスが主導しているが、政治面でも構造変化が進んでいる。イラン戦争が長期化し、米国の凋落と孤立も深まった下での会談を通じて、米中関係が以前とは異なった状況にあることが鮮明となった。
高市政権の内外政治は、この世界の現実からかけ離れている。それは中国との軍事的緊張を高め、戦争に導きかねず、国民経済・国民生活を破局に陥れる亡国の道である。
しかし日中両国は、経済関係だけをとっても切れない関係だ。高市政権の中国敵視の下でも対中貿易は12%前後も増加している(1〜3月期)。ましてや文化、人的・自治体交流など歴史的に深い隣国関係である。
この中国といかなる関係を築くのか、これがこんにち、わが国の進路にとって最大の争点である。政治軍事大国化の道か、それとも中国との戦略的互恵・平和、アジアとの共生の道か、日本の進路が厳しく問われる。
当面「日中不再戦」のための戦線形成と闘いを進めよう。
中国包囲の「同盟」策す
高市首相は5月2日、ベトナム国家大学ハノイ校での外交スピーチで、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の進化、ルールに基づく国際秩序、経済安全保障などを訴えた。
高市首相とアルバニージー・オーストラリア首相は4日、「強化された防衛・安全保障協力に関する首脳声明」に署名、自衛隊と豪州軍の合同演習強化、サイバー分野での連携を確認した。名指しは避けたが、中国によるレアアースの輸出規制に「強い懸念」を示す「経済安全保障協力に関する日豪共同宣言」にも署名した。
19日の李在明・韓国大統領との会談では、首相は日米韓安全保障協力の強化を唱えた。
マルコス・フィリピン大統領とは28日、機密情報を交換する「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の締結交渉で合意、護衛艦5隻と練習機などの無償または大幅割引での供与も確認した。高市政権は、すでにGSOMIAや物品役務相互提供協定(ACSA)を結ぶ英国・オーストラリアに続き、フィリピンも「対中同盟」に実質的に取り込もうとしている。
小泉防衛相も4日、インドネシアでシャフリィ国防相と会談、「統合防衛対話メカニズム」立ち上げなどで合意した。
小泉氏は30日、シンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、ヘグセス米国防長官に「地域を安心させるメッセージ」を求めた。他方、中国代表の歴史認識を問う質問に答えず、逆に中国を非難、アジア諸国に「(中国の)圧力に左右されない地域」を目指そうとけしかけた。侵略と植民地支配への反省もなく、米国をアジアにつなぎとめて「米国離れ」をけん制し、中国包囲網形成を目指す許しがたい策動だ。
一連のアジア太平洋外交を通じ、相手国の思惑は別にして、高市政権は諸国を対中包囲網に取り込もうと策動した。
政治軍事大国化の国内再編
高市政権は、国内ではGDP比2%超の大軍拡を進め、沖縄はじめ全国の対中軍事要塞化を急ピッチで進めている。国家情報局設置法の制定、さらにスパイ防止法や国旗損壊罪、入管法改悪など、中国敵視の排外主義政策を次々と打ち出している。
専守防衛、防衛費のGDP比1%、武器輸出三原則は、高市政権以前に放棄された。フィリピンへの護衛艦供与は、武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則をさらに改悪してのもので、戦後初めて、殺傷能力のある大型戦闘艦を外国へ渡す歴史的転換だ。高市政権は、米国との「核共有」を念頭に、非核三原則も投げ捨てようとしている。55年体制下の自民党単独政権でさえ、曲がりなりにも維持してきた諸原則の最終的破壊である。
政治軍事大国化を目指す国内再編である。
一方で高市政権は、上海で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)会合に腹心の黄川田特命担当相を派遣、中国の炭鉱事故には「お見舞い」を伝えた。財界の関係改善要求に応じたものだろうが、「台湾有事は存立危機事態」と公言し撤回を拒否する高市政権では、中国と関係改善できない。
アジア諸国の対中政策は、高市政権とは異なる。「クアッド」加盟のオーストラリアでさえ、4月に中国との外相会談で「各分野における協力を緊密にする」(ウォン外相)ことで合意した。ベトナムも、中国と「越境経済圏の建設」など関係強化で合意している。
中国と対話し、経済など一致点を強化しながら懸案の解決を図る、現実的外交政策だ。
高市政権の内外政策はこうした趨勢に反し、米戦略の一翼を担う「抑止力一辺倒」の中国敵視である。わが国を軍事的緊張の震源地とする道で、断じて許せない。
「力の拮抗」示した米中会談
高市政権の政治は、米中間の力の変化という現実を認めながら、中国との共生ではなく対抗する反動的方向を選択した。
米中首脳会談で米国は、短期的な対中「関係改善」を狙った。トランプ大統領は、深刻な国内矛盾を緩和させ、秋の中間選挙に向けた政権浮揚を策した。大手企業を多数同行させて「成果」を狙ったが、目立つものはなかった。中国への農産物や航空機輸出などは想定の範囲内にとどまり、イラン戦争終結への支援も約束されなかった。
米国は軍事力や金融面では依然優位だが、中国は購買力平価ベースGDPでトップで、科学技術力でも部分的に追い越している。中国は米国が仕掛けた関税戦争も、レアアースの輸出規制などではね返した。イラン戦争で仲介役を買って出るなど、国際的発言力も高まっている。米中のせめぎ合いは続いている。
会談で、習近平主席は「台湾問題を適切に対処できなければ、中米両国は対立・衝突して危険な境地に追い込まれる」と強く警告した。トランプ大統領は無言を強いられ、台湾への武器供与もしばし「保留」せざるを得なかった。
習近平主席が示した「建設的戦略的安定」という指針は、米側文書にも明記された。米中の国力は接近し、「力の拮抗」ともいうべき段階に入った。
ただ昨年制定した「国家安全保障戦略」(NSS)に示されるように、米国は中国への敵視を捨てていない。NSSは、中東・欧州への関与を縮小させて南北米大陸を最優先とした。東アジアは、日本などへの「負担分担の厳格化」を前提に、台湾海峡の現状に対する「いかなる一方的な変更も支持しない」と、介入のために「軍事的な圧倒的優位を維持する」と明記した。
高市政権は米戦略に日本を組み込んで「対中国」の負担を一手に担う、政治軍事大国化の道を選択した。諸国をけしかけて包囲網形成の先頭に立ち、「火中の栗」を拾おうとしている。
高市首相は「日本の平和と独立、国民の皆様の命を守り抜く」などと言う。だが、中国を敵視する限り、米核戦力に依存せざるを得ない。高市の「独立」はニセもので、米国への奉仕と国際的孤立、亡国の道である。
国民諸階層には力がある
こんにち国民の中には、政治・既成政党への不満と怒りが蓄積している。これに乗じ、ポピュリズム、排外主義をあおって登場した高市政権は反動政策を加速させ、参政党なども台頭している。「ファシズムの萌芽」とも言うべき情勢だ。
この下で強国化する中国は、貿易関係をはじめ経済関係、歴史的文化的関係も深い隣国である。どう向き合うかは、最大の政治的争点である。
中国敵視の高市政権の道は、わが国を国際的孤立と中国との戦争に導きかねず、国民経済・国民生活を破局に陥れる。
有権者の高市政権への「期待」は次第に崩れつつある。
本来、野党や労組、闘う勢力には好機である。ところが、議会内野党の多くは高市政権に追随している。高市外交への対抗軸を示せないどころか、積極的に呼応している。
一方、国民諸階層には力がある。「デモ初参加」の若者や女性が全国で立ち上がり始め、平和の実現と政治の転換を訴え始めている。沖縄県民は、辺野古転覆事故を口実とする県民運動への攻撃に抗し、闘い続けている。地方には高市与党への不満が蓄積し、与党は地方選で敗北続きだ。野党の現場、地方議員のなかでは真剣な模索も始まっている。中国と関係が深い財界の多数も高市外交への不満を高め、政権は盤石ではない。
独立・自主の政権を目指し、当面は「台湾有事」を避けるため、「日中不再戦」の戦線形成と闘いを力強く推し進めよう。労働者はその先頭で闘おう。