ライドシェア全面解禁阻止へ運動続けるーー全自交労連・本田有 書記長に聞く
タクシー業界はコロナ禍による緊急事態宣言でタクシー利用者数が激減し、歩合制賃金制度が成り立たない状況に陥りました。感染リスクへの不安も重なり業界を離れざるを得ない労働者が増え、我々は2割以上の仲間を失いました。半数近くが離職した職場もあります。
社会活動が戻り、インバウンド需要も拡大したことで、運転者数も戻りつつあります。それでも需要増加に追いつかず、運転者不足が喧伝されています。
「日本版ライド」は一時的措置
こうした需給ギャップを埋めるものとして、国土交通省が制度設計した「日本版ライドシェア」が2024年に始まりました。タクシー運転者数が充足していれば、本来は必要ない制度です。
日本の法人タクシーの安全性は、3つの要件で成り立っています。①事業者による運行管理、②事業用車両を用いた車両管理、③ドライバーによる第二種運転免許保持で、これが安全を担保してきた大きな柱です。
日本版ライドシェアは、②は自家用車が使用され、③の免許保持も条件になっていません。ですから私たちは、この制度は需給ギャップが埋まるまでの、一時的措置と理解しています。
残念ながら国交省は、日本版ライドシェアをどのように終えるのかを明示していません。
また日本版ライドシェアでは、車両の充足率を、スマホのアプリによるマッチング率で計測しています。駅や病院のタクシー乗り場、あるいは「流し営業」の状況は勘案されていません。これで、本来の充足率が測れるものなのかどうか。
全自交労連としては、日本版ライドシェアの「終了要件の明確化」を求めています。
「白タク解禁」は絶対に反対
私たちは、上記①〜③の要件をすべて外した、「フルスペック」の「ライドシェア完全解禁」は「白タクの解禁」にほかならず、安全性や労働条件、雇用の面などから絶対に反対です。国交省も、現在のところ導入に否定的です。
ただ、与党入りした日本維新の会はこれを求めています。今後、規制改革推進会議や成長戦略会議などで議論される可能性がありますので、しっかりと注視していきます。
利用者の皆さんからすれば、「並ばずに済むのでは」といった心理から、私たちの要求に必ずしも共感できないかもしれません。
ですから、理解を得るための運動の強化や、日常サービスの充実に努めていきます。
ハイタクフォーラム(全自交労連・交通労連ハイタク部会・私鉄総連ハイタク協議会)としては、24年に約23万筆の請願署名を国会に提出しました。全自交単独での署名活動も行いました。ライドシェアの危険な実態を知っていただくことが大きな課題だと思います。
これらの活動は、今後も継続します。また、上部団体である交運労協も熱心に取り組んでいますので、決起集会などで積極的な役割を果たしていきます。
26春闘は賃金制度で節目に
26春闘についてですが、今年は大きな節目と言える状況です。
全国的に運賃改定が進み、その一部が労働環境改善の原資となる前向きな状況があります。一方、賃金制度改悪の動きも目立っています。運転者の賃金は、基本給と歩合給を組み合わせたものが一般的ですが、歩合給部分の配分率を会社側に有利な形で見直す動きがあります。
会社側は、配車アプリの手数料や、キャッシュレス決済導入のための設備投資と手数料負担を理由にしています。しかしながら、この期間に実施された運賃改定は、こうした費用を計上して導き出され、認可を受けています。ですから、「手数料があるので歩合給の比率を下げてくれ」というのは理屈が通りません。
とはいえ、すべての企業が運賃改定で同じように収入が伸びるわけではありません。労働組合としては、客観的な資料を十分に示すことを前提に、協議に応じることは必要でしょう。
26春闘では、賃上げ要求だけではく、このような企業側の要求をはね返す形での交渉が主体になったのが特徴です。(文責・編集部)
公共交通を守る議論と運動をーー労働ジャーナリスト・浦田誠さんに聞く
地方経済が衰退し、住民の移動手段をどう確保するかが問題になっています。そこで、米国式のライドシェアを日本でも全面解禁すべきという意見があるようです。
しかし、諸外国での事例を見れば、これはまったく的はずれです。
ライドシェアでは、運転手が「儲かる都市部」に集中するのは必然的です。肝心の地方は収益性が低く、運転手は定着しにくいからです。
実際に米英では、地方のドライバーが都市部へ「遠征」し、駐車場などで車中泊しながら働く例が目立ちます。最大のライドシェア・プラットフォーマーである米ウーバーが株式上場した際の目論見書にも、人口密度の低い郊外や地方へ事業を浸透させることが「引き続き課題」と明記されています。
カナダ・オンタリオ州のイニスフィル(人口約3万6千人・当時)は、2017年、公共バスではなく、ウーバーのライドシェアを全面導入しました。利用者は定額料金を払い、残りの実費は市が負担しますが、利用者が増えると市の財政負担も増すという問題が起きています。併せて、ウーバーが車両の動態情報や利用データを自治体と共有しないため、自治体側は将来の交通政策立案に必要な情報を得られないという問題があります。
いずれにしても、運転手は個人事業主扱いなので、公共交通の代替サービスを担うエッセンシャルワーカーであるにもかかわらず、待機時間に最低賃金が保障されず、諸経費は自己負担なのです。
そして何より、安全性が一貫して大きな社会問題になっています。
米国ではタクシー運転手になる場合、FBI(連邦捜査局)のデータベースで犯罪歴を照会されます。対してウーバーでは、社会保険番号を使った安価な審査を利用しており、情報の抜け落ちが生じています。
米ウーバー運転手による性犯罪は、「強制性交等」で19年の発生率を比較すると、日本のタクシーの388倍にも達します。一般的な発生率での差は39・2倍です。ニセ運転手による犯罪が頻発しており、在ロサンゼルス日本領事館は邦人に注意を喚起しています。車椅子利用者や盲導犬同伴者への乗車拒否も後を絶ちません。
ライドシェアに限りませんが、規制緩和推進論者は「評価制度があるので悪質な運転手は排除される」と言います。しかし、これは被害を未然に防ごうとしない「事後対応」で、この姿勢こそが批判されるべきです。
ウーバーは、事業開始直後から犯罪パターンを把握していたにもかかわらず「事業が維持できる水準の安全で十分」とし、積極的な対策を怠り、問題運転手を使い続けていたという報道もあります。米運転手による性犯罪でウーバーが抱える裁判件数は今、3500件を超えています。
以上の海外の例からも、ライドシェアの解禁は行うべきではありません。
地方交通問題の解決に万能薬はなく、市町村の実情に合わせた個別の解決策が必要です。ライドシェアはもとより、公共交通が民間経営に依存することに限界があることは、国際的な共通認識になっています。
英国では、30年ぶりに鉄道が再国有化されました。ドイツの統一サービス産業労組(ヴェルディ)は、環境保護団体と共闘して「公共交通は気候変動対策に有効」と訴え、政府に補助金増額を求めています。こうした議論はどちらも重要で、日本でも参考にできないのでしょうか。米国では、労組や住民団体が共闘して、交通予算削減をストップさせる運動が広がっています。
地方での公共交通の確保には、財源問題の議論が欠かせません。米マサチューセッツ州では、年収100万ドル超の富裕層に追加課税する「フェアシェア税」を導入しました。
労働者の待遇に関しても、改善例があります。スペインでは、ギグワーカーをまず労働者とみなす「雇用の推定」の原則を含む法律が成立、労働者保護が前進しました。
ギグワーカー自身が自発的に運動体をつくり、ストライキに立ち上がるケースも多くあります。
日本でも、公共交通を守り、ギグワーカーの待遇を改善する議論と運動が求められています。(文責・編集部)

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浦田誠・著 748円(税別)