トピックス

世界・日本のできごと(7/8〜7/14)

世界のできごと

NATO首脳会議、ウクライナ「支援継続」演出も、先見えず
 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が7月9〜11日、米国のワシントンで行われた。各国首脳に加え、ゼレンスキー・ウクライナ大統領、米国がインド太平洋のパートナー国(IP4)と位置づける日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳も招待された。
 採択された首脳宣言では、ウクライナのNATO加盟に関し「不可逆的な道」と明記し、2025年に400億ユーロ(7兆円)の資金供与も盛り込んだ。またインド太平洋でのIP4との協力拡大や加盟国全体での軍需産業強化などもうたった。
 今回の会議は、NATOの中心である米国でウクライナ支援に消極的なトランプ元大統領が大統領選を優位に進めるなか、あるいは欧州各国でウクライナ支援に消極的な右派が台頭するなか、開催された。ウクライナへの支援継続をアピールすることは今回の会議の最大の眼目で、かろうじて「支援継続」はつくろった恰好。
 しかし、トランプ氏が欧州各国に軍事費のさらなる増大を求めているように、「ウクライナ支援疲れ」や物価高騰を背景に、今後NATO内の不協和音は拡大が避けられない。
(参考記事)

イスラエルによるガザ虐殺がエスカレート
 イスラエル軍は7月13日、パレスチナ・ガザ地区南部のハンユニスを空爆し、少なくとも91人を殺害、300人を負傷させた。空爆されたのはイスラエルが住民の退避先に指定したマワシ地域で、死者の半数は指示に従い退避していた住民だったとガザ保健当局が発表した。この蛮行に対し、国連のグテレス事務総長は同日、「多くの命が失われ、ショックであり、悲しい。女性と子どもを含む民間人の殺害を非難する」と表明、即時の人道的休戦を改めて求めた。
 イスラエル軍は9日にもハンユニスに近い学校の入り口を攻撃し、少なくとも29人を殺害している。犠牲者の大半が戦火を逃れた身を寄せていた避難民だった。
 米国の支持を背景に、イスラエルの蛮行はますますエスカレートしている。

米軍、難民を非人道的環境で不当拘束
 英国が実効支配しているインド洋のディエゴガルシア島で、同島に軍事基地を置く米軍が「安全保障上」の懸念からスリランカのタミル人難民への不法な拘束を続け劣悪な環境に置いていると、7月9日に英メディアが報じた。
 ディエゴガルシア島を含むチャゴス諸島の帰属については、英国から独立したインド洋の島国モーリシャスが自国領と主張、国連の国際司法裁判所(ICJ)は2019年、英国による同島の実効支配は不法であり、モーリシャスの脱植民地化を完了させる義務が英国にある、とする勧告的意見を出している。
 同島基地は、アフガニスタン侵略やイラク戦争などにも使用された、インド洋における米軍の戦略的要衝。この拠点維持のためには人権侵害など何ら顧みない、米国の野蛮な姿勢が改めて示された。
(参考記事)

人民のたたかい

 米国では、7月9日から開催さわれたNATO首脳会議に合わせて、首都ワシントンなど各地で抗議集会やデモ行進が連日行われた。参加者は「NATOは世界の脅威、廃止を」「米国は全世界から撤退を」などと訴え、ウクライナへやイスラエルへの軍事支援に抗議した。(写真はホワイトハウス前で行われたデモ行進)

 韓国のサムスン電子の労働組合・全国サムスン電子労働組合7月8日、賃上げや労働条件の改善を求めて本格的な3日間のストライキに突入した。創業以来55年となる同社での全面ストは初めて。また10日には無期限のストライキに入ると発表した。
 南米チリで7月10日、米小売り最大手ウォルマート傘下のウォルマート・チリが運営するスーパーの労働者がストライキに突入した。ストを組織した全国ウォルマート労働者連合は、賃上げや物価上昇に見合う支給額調整、休憩室の設置など待遇改善の要求に応じず交渉継続も拒否した会社の姿勢を批判した。

日本のできごと

NATO首脳会議に岸田首相が出席、「中国の脅威」あおる
 米国の首都ワシントンで7月9-11日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が行われた。岸田首相は「パートナー」として3年連続で出席した。
 岸田首相は、「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」として、NATOとIP4の連携をより強固なものとする必要性を訴えた。
 首脳宣言では、中国を「ウクライナへの侵略を続けるロシアの決定的な支援者」などと批判しているが、このような内容を盛り込むに当たって日本政府が各国に働きかけたという報道もある。だが中国は、グローバルサウスの多くの国と同じように、ウクライナとロシアに対しては中立の立場を堅持している。批判は全くの言いがかりだ。
 中国敵視をあおりNATOをインド太平洋に拡大させようとする日本外交は、対立と軍事的緊張をあおる犯罪的な姿勢だ。しかしその策動も、NATO加盟国がウクライナ支援でさえ出し渋るなか、徒労に終わることは目に見えている。

日比2+2で円滑化協定署名、南シナ海への関与拡大
 日本とフィリピン両政府は7月8日、外務・防衛閣僚協議(2+2)をマニラで開いた。安全保障・防衛協力を強化すると確認し、自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする円滑化協定にも署名した。日本にとって円滑化協定締結は「準同盟国」と位置づける豪州、英国に続く3カ国目。
 2022年に対米関係重視のマルコス政権が発足して以降、中国けん制を念頭に、米日両政府はフィリピンの「準同盟国化」を加速させている。6月には海上自衛隊がフィリピン、米、カナダとの4カ国による南シナ海での共同軍事訓練に初めて参加するなどしている。
 南シナ海の領有権問題に関し、日米両国は当事者ではない。日本は南シナ海問題に首を突っ込んで対立をあおることはやめるべきだ。

防衛白書、「ウクライナと同様の事態が東アジアでも」と危機あおる
 防衛省は7月12日、「2024年版防衛白書」を公表した。中国の軍事的動向を「わが国の平和と安全を確保する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけた。また日本の周辺事態について、中国を念頭に「国際社会は戦後最大の試練のときを迎え、新たな危機の時代に突入しつつある」「ロシアによるウクライナ侵略と同様の深刻な事態がインド太平洋地域、とりわけ東アジアで発生する可能性は排除されない」などと明記、これまでになく危機感をあおった。

防衛省220人処分、軍需産業との癒着も
 防衛省は7月12日、「特定秘密」の漏えいや海自潜水士による手当の不正受給などの違反・不正があったとして、事務次官や自衛隊制服組トップを含む関係者計218人(のべ220人)の処分を公表した。200人以上が一斉に処分される異常事態。木原防衛相は、最も多くの違反があった海上自衛隊トップの海上幕僚長を交代させることを明らかにした。
 また同省は、川崎重工業が海自との潜水艦修理契約に関して、取引先企業との架空取引でつくった年間2億円、合計十数億円とみられる裏金で海自隊員らに接待や金品の提供をしていた疑惑について「特別防衛監察」を早急に進めるとしており、処分者はさらに増える見通しだ。
 岸田政権が防衛費を激増させるなか、これに群がろうとする軍需産業が水面下でうごめいている実態の一端を示すものでもある。

実質賃金減26カ月連続、過去最長を更新
 厚労省は7月8日、5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)を発表した。実質賃金は前年同月より1.4%減り、過去最長を更新する26カ月連続のマイナスとなった。労働者の困窮化はいちだんと深刻化している。
(参考記事)

博報堂に罰金2億円、五輪談合
 東京地裁は7月11日、東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、広告大手・博報堂に対し、独禁法違反(不当な取引制限)で求刑通り罰金2億円)を言い渡した。一連の談合事件で、企業側の判決は初めて。
(参考記事)

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