社説

トランプ関税攻撃激化、日米基軸の転換は不可避 石破首相は日中共同声明守り東アジアの平和・共生に向かえ

 対米従属を続けてきたわが国の進路が、重大な岐路にある。

 衰退する米国は巻き返しを狙い、トランプ政権が世界を相手に「関税戦争」に打って出た。インドは対米独自外交を強め、対中国関係の調整を図っている。中国・グローバルサウスは、戦略的自立を堅持し、世界は多極世界へ向かっている。欧州連合(EU)も、対中関係の修正に動き始めた。とくにドイツは、軍事面も含めた自立政策に舵(かじ)を切った。

 わが国も大きく揺さぶられ、支配層は動揺を深めている。対米依存経済は限界で、転換は避けがたい。中国との関係強化、日中韓連携を基礎に台頭するグローバルサウスとの共同こそ展望ある道である。

 日本と中国は1972年、両国首脳の政治決断、共同声明によって国交を正常化させた。その後、日中関係は飛躍的に発展した。とくに経済関係では、互いに最大級の貿易相手国となっている。中国に進出している日本企業数は1万3千を超え、拠点数では3万を超える。こんにち、日中韓を中心とする東アジアのグローバルバリューチェーンは世界経済の中心となっている。

 しかし、わが国政治は米戦略に縛られ、対中国関係は米国とそれに従う反動勢力の妨害を受けてきた。政府は中国敵視の政治軍事大国化策動を進め、軍事費大幅増額や沖縄・西日本を中心とする前線基地化が進められている。

 このようななかで迎えた「敗戦80年」の節目である。中国との関係改善のためにも、わが国による侵略と植民地支配の過去を直視し、反省し、二度と繰り返さないと誓うことが求められている。

 石破首相は、当初構想していた閣議決定を伴う「戦後80年談話」を断念したようだ。だが、政権が続くのであれば、やれること、やらなくてはならないことがある。

 まずは1969年以来初めて、中国の内政問題である「台湾海峡」を明記した2021年の菅・バイデン共同声明以降の中国敵視政策、「台湾有事」策動を清算しなければならない。

 日米基軸からの転換は不可避である。中国との平和・互恵の関係構築で、激変する世界で活路を切り開かなければならない。

侵略と植民地支配の歴史の反省と謝罪を

 対中関係改善の上で欠かせないことは、第一に、日中共同声明の前提となっている日本の侵略と戦争の歴史認識、反省に立つことである。明治維新以降の旧日本帝国主義による侵略戦争と植民地支配の歴史を総括し、真摯(しんし)に反省することである。

 日本は維新直後の1874年、琉球・宮古島住民が台湾原住民に殺害されたことを口実に、清国領台湾へ軍隊を送り賠償を迫った。琉球の日本帰属を清国に認めさせると同時に、中国・アジア侵略を開始した。「脱亜入欧」はそのスローガンである。

 日清戦争、日露戦争、韓国併合などを経て、1931年の柳条湖事件以降、わが国は中国に対する侵略を本格化させた。日本は中国に対し、死者約2千万人という膨大な人的被害をはじめ「三光(殺し尽くし、焼き尽くし、奪い尽くす)」という暴虐を働いた。

 石破首相は8月15日、「全国戦没者追悼式」の式辞で、13年ぶりに「戦争の反省と教訓」に言及した。だが、アジア侵略への「反省」に触れない、きわめて不十分なものであった。

 2015年の「70年安倍談話」は、「侵略」「植民地支配」「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた」などという言葉はあるが、その主体が日本であることは認めていない。「先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ちを表明」ともあるが、その「行い」は何一つ具体的ではない。侵略戦争と植民地支配の歴史に無反省なものである。しかも「子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と謝罪は終わったとの立場である。被害者の側が納得できないのは当然ではないか。

 石破首相に求められる「80年談話」は、こうした弱点、誤りを克服する、わが国政府の態度表明である。

 歴史の事実を直視し、心から反省し、繰り返さないことを誓い、行動しなければならない。これは、日中関係を平和で安定的なものにするために、絶対に欠かせない点である。

「一つの中国」堅持も不可欠

 日中共同声明の原則のもう一つは、「一つの中国」の立場を堅持することである。

 台湾問題は完全に中国の内政問題である。ましてやかつて台湾を植民地として支配し、暴政を敷いた日本に、台湾問題に口を出す資格はない。

 わが国は日清戦争・下関条約で、清国から台湾を奪い、敗戦まで植民地支配した。

 1945年に日本が受け入れたポツダム宣言第八項は、台湾を「中華民国に返還」することを明記していた(43年カイロ宣言の「履行」という形で)。

 72年の日中共同声明で、わが国は中華人民共和国を「唯一の合法政府」と認め、台湾が中国の不可分の一部であるという中国の立場を「十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と約束した。日本と中国は、これを前提に国交正常化したのである。

 わが国は、台湾を国家として認めないことを約束し、台湾との関係は民間の経済関係などに限るものとなった。共同声明を含む日中間の「4つの基本文書」でも、この立場は確認・継承されている。

 これが事実経過で、政府はこの立場から逸脱してはならない。

 こんにち、米国は中国敵視の一環として、台湾を「独立国」であるかのように扱う、事実上の「二つの中国」策動を強めている。日本も、故安倍元首相が「台湾有事は日本有事」などと叫び、麻生・自民党副総裁(当時)は「戦う覚悟」と中国を挑発した。

 石破政権はこのような言動は行っていない。だが、台湾問題に関して日中間の合意をしっかり守ってもいない。

 「台湾」を一国として扱うようなさまざまな策動が政府や与野党国会議員などで執拗(しつよう)に進んでいる。石破政権は3月、日中共同声明が「法的拘束力を有するものではない」と閣議決定した。2006年の小泉政権に次ぐものである。

 また、台湾当局は岩崎・自衛隊元統合幕僚長を政務顧問に任命、政府はこれを黙認している。特別職の国家公務員である国会議員の台湾訪問も続いている。

 これらは、日中共同声明への明白な違反である。

 政府与党だけではなく、野党も曖昧である。立憲民主党は「日本・台湾議員懇談会」での交流を行い、台湾を「国」として認識、発言する役員もいる。

 「一つの中国」の立場を守り、台湾問題に明確な態度を取ってこそ、再度の日中戦争を避け、中国との友好関係を築くことができる。

石破政権は日中関係改善へ積極対応を

 岩屋外相と王毅・中国外相は7月に会談を行った。両外相は、日本産水産物と牛肉の輸入再開問題や、中国からのレアアース輸出などについて議論した。歓迎できる前向きな動きである。年内開催予定の、日中韓首脳会談や日中首脳の相互訪問など実現につなげたい。

 石破首相も1月の施政方針演説で、中国との「『戦略的互恵関係』の包括的推進、『建設的かつ安定的な関係』の構築」を表明している。

 肝心なのは、これを文字通り実現する方向へ、積極的な対応を行うことである。

 石破首相は昨年10月、李強首相との会談で「日中共同声明で定められた立場を堅持する」と表明した。外務省がこれを報じなかったのは許しがたいが、石破政権はその言葉通り、日中共同声明を守る立場を堅持しなければならない。わが国の侵略問題の歴史への反省にしても、台湾問題にしても、共同声明の原則的立場なのである。

 対中国関係の安定と発展は、経済界も望んでいることである。新浪・経済同友会代表幹事は、「中国との関係を深めることは非常に重要」などとたびたび発言している。3月に訪中した同友会の中国ミッションは「中国との競争または連携抜きにグローバル・ビジネスは成り立たない」と危機感をあらわにし、「企業経営者が、さらに管理職層を含む実務者層が中国の実態を知ること」が重要と指摘している。賛同できる意見である。

 政党でも、立憲民主党は台湾問題で曖昧さもあるが、同時に、代表団が昨年8月に続いて3月にも訪中、中国共産党幹部と会談した。「ハイレベルの政治家同士の交流をより活発にしなければならない」(岡田前幹事長)との態度は評価できる。社民党もハイレベルの訪中団を派遣している。

 石破政権の一角である公明党も斉藤代表らが訪中したほか、支持団体である創価学会も大規模な訪中団派遣を続けている。

 そのほか、地方自治体を含む友好人士の粘り強い活動が続いている。青年学生の中でも、歴史を見据え戦争と排外主義に反対し、日中交流、東アジアの連帯を模索する動きも始まっている。

 さまざまな分野での直接交流を拡大させ、両国人民同士の相互信頼を増大させる。そのことが日中関係の真の基礎固めとなるであろう。

 日中関係の平和と共生を求める、幅広い国民運動を巻き起こすことを強く呼びかける。中国や韓国、東アジアが共生する方向へと、わが国の舵取りを変えなければならない。

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