二つの新興国グループの首脳会議が相次いで開かれた。
一つは、上海協力機構(SCO)第26回首脳会議で、8月31日〜9月1日、中央アジア・キルギスの首都ビシケクで開かれた。もう一つは、新興国グループ・BRICSの第18回首脳会議で、9月12日〜13日、インド・ニューデリーで開かれた。
イランへの明確な支持表明
SCOは2001年に中国、ロシアと中央アジア4カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)による安全保障フォーラムとして発足した。その後、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシが加盟し10カ国となった。世界人口の42%、国内総生産(GDP)では25%を占める。アフガニスタンとモンゴルがオブザーバー国となっている。今年で発足から25年、安全保障にとどまらず、各国の開発・金融支援にも組織の役割を広げようとしている。
首脳会議には習近平・中国国家主席、プーチン・ロシア大統領、モディ・インド首相、ペゼシュキアン・イラン大統領をはじめ、10カ国の首脳が出席した。
採択された「ビシケク宣言」では、中東とイラン周辺の情勢に対する深刻な懸念を表明し、米国を名指しはしていないが、イランへの軍事攻撃を非難する立場を再確認した。イランの最高指導者ハメネイ師をはじめ犠牲者遺族に弔意を示した。
また、イランの主権と領土保全を支持することを再確認し、紛争解決は政治的・外交的手段のみによるべきだと主張した。核拡散防止条約(NPT)加盟国としてイランが平和的目的で原子力を研究・生産・利用する権利を支持し、一方的制裁に反対する立場も示した。
また、米欧主導の金融システムに依存せず、加盟国のインフラ整備に融資することを想定したSCO開発銀行の設立準備を続けることも確認された。
中国は、SCOを「一帯一路」の優先地域と位置づけている。習近平主席は会議で、25年の天津首脳会議で示された戦略構想の実施を呼びかけ、①発展を優先、②安全を重視、③人を本位とする、④対話と協議を堅持するという提案を行った。プーチン・ロシア大統領も演説で、SCOを「多極化世界で自立した、影響力ある中心の一つに変貌した」と評価した。
加盟国首脳らは「ビシケク宣言」を含む20以上の文書に署名し、米国に対抗する多国間機構としての結束を確認した。
BRICSも結束示す
BRICSは2009年に始まったブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の首脳会議に11年から南アフリカが加わった。2024年にイラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが加盟、25年にインドネシアが加盟して10カ国体制となった。
議長国インドのモディ首相は、会合に合わせて開かれたビジネスフォーラムで、BRICSは世界人口の50%、世界GDPの40%、世界貿易の25%以上を占めることを示した。さらに、BRICS諸国経済は世界全体に比べ約2倍のペースで成長していることを示し、BRICSの存在感が一段と高まっていると強調した。
会議は、140項目にわたる「ニューデリー宣言」が採択された。中東情勢をめぐっては、特定国の名指しを避けつつ「深い懸念」を表明。関係国に「最大限の自制」を求めた。
宣言のポイントは以下――。
・国際政治では、多極化と多国間主義を推進し、新興国・途上国の代表性と発言力を高め、より公平で包摂的な国際秩序の構築を目指す。
・国際金融では、BRICS加盟国間の貿易・投資での現地通貨建て決済の利用拡大、決済円滑化に向けた協力を推進。
・貿易・経済では、保護主義や一方的な関税措置に懸念を表明。世界貿易機関(WTO)を中心とする貿易体制を支持。
・安全保障では、国際紛争を対話、協議、外交を通じて平和的に解決することへのコミットメントをあらためて確認。
・技術・エネルギーでは、人工知能(AI)や量子技術などの技術分野で協力を強化。エネルギー安全保障の強化とエネルギー転換を推進。途上国の発展段階を考慮した公正な移行の必要性を強調。
フランスで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)に招待された5カ国のうち、3カ国(ブラジル、エジプト、インド)がBRICS加盟国で、G7のメンツはこれらの国の協力でようやく保たれている。
日本のマスコミなどは「BRICSは一枚岩ではない」とあげつらうが、地域や体制の違いなどがあるので、違いがあるのは当然である。だが、新興国の経済力と発言力を高めようと結束する努力で次第に力をつけているのは誰も否定できない。(H)