日本は米戦略から抜けるべき
羽場久美子・青山学院大学名誉教授
東アジアで戦争を起こさせないためには、ウクライナ戦争、ガザ戦争を早急に終わらせる必要があります。中国とは決して戦争しない、たとえどこかで事故が、偶然な紛争が起こっても、それを止めるために全力を尽くす必要がある。
台湾問題は中国の国内問題であるということをはっきりさせなければなりません。日中国交回復でも平和友好条約締結でも、また米中関係でも何度も確認しています。にもかかわらず米国は台湾に武器を送り、人を送って煽(あお)っています。米国の世界戦略というのは、覇権を維持するため、中国とロシアの力をつぶすことにあるからです。
バイデンは就任後の最初の先進7カ国(G7)で「民主主義対専制主義」ということを掲げて、ロシアと中国を専制主義と位置づけました。これらを封じ込めることを米国の最大の世界戦略にしています。秋の大統領選挙で、たとえトランプが勝っても、中国封じ込めは変わらないでしょう。また沖縄・台湾の戦争準備がますます進められていくことになるでしょう。
日本は米国の戦略、つまり自らは戦争せずに武器を送って近隣国同士を戦争させるという戦略から抜けるべきです。犠牲になるのは日本国民だからです。
世界戦略の観点からすると、沖縄・台湾で始まった戦争は、日本全土、東アジア全土に広がる可能性があります。ミサイルと司令塔は、今や沖縄だけではなくて、大分、青森、北海道に配備され始めているからです。青森、北海道のミサイルは中国に向けてではありません。ロシアに向けてです。「ロシア、北朝鮮、中国に向けてミサイルを配備している日本は怖くないか」と中国の記者団が私に質問しました。戦争が起こったときどうするかっていうことを本気で考えていかなければなりません。
東アジアの戦争は人工知能(AI)戦争となります。これは重要です。イスラエルに行ったパランティア・テクノロジーズという米国のAI企業の幹部が言った言葉です。東アジアの戦争は巨大なものになる、AI兵器を使わないとやっていけないと言っています。パランティア・テクノロジーズのAI兵器は既にイスラエルで使われ、そしてウクライナでロシアに向けて爆撃をしています。
国民を犠牲にしないため、東アジアの戦争を止めるため、国連や世界や日中韓、さらには欧州が協力して平和を目指して結束していくべきです。中国やアジアや周辺隣国が手を結べば、東アジアと国民の平和を必ず実現できます。
日中の労組交流進めたい
安河内賢弘・ものづくり産業労働組合(JAM)会長
労働組合の究極の目標は組合員とその家族の幸せの追求だと思いますが、それは平和がなければ達成できない。平和は最も重要なテーマだと思います。
戦前の産業報国会運動の中で労働組合も戦争に協力をした。この反省に立ち、労働組合も平和についてしっかりと議論しなければならないと思っています。
私は2019年の11月に中国に行きましたが、中国のお土産屋さんは日本人なんか相手にしてない。前だったら「社長さん」って話しかけてきたけど、もう誰も話しかけてこない。日本人がカネ持ってないってよく分かってるんですね。
ユニクロが最初に賃金をボンと上げた。日本の店長と中国沿岸部の店長と比べて日本の給料が圧倒的に低かったから。中国に行って指導する人間が現地の店長よりはるかに低い給料では成り立たないと給料を上げた。日立も「グローバル賃金」とのことでジョブ型賃金制度を整えようとしている。日本として給料を上げざるを得ないようなことになって、今賃上げが進んでいるわけです。物価高もありますけれども、グローバルで見たときに、日本の賃金が低くなりすぎたことが最大の原因だと思います。
生産性が上がらないと賃金を上げるべきでないと言う人がいるがウソです。国民総生産(GDP)は物の値段が倍になれば倍になる。グローバルで見たときに、同じような賃金体系、同じような物価になっていかないと、日本は購買力を失って物が買えなくなる。
その日本経済を支えているのはどこかと言うと中国市場です。いろんなことがあっても中国との関係は非常に深い。今ちょっと中国の景気が悪くなっているんで、日本企業の売り上げがどんと下がってる。やっぱり中国との経済関係についてしっかりやっていく必要があると思います。
平和のために何ができるかを考えたとき、労働組合としては人と人との交流をしっかりやっていくということ、民間外交、日中の労働組合同士で働くということを軸にすることが重要だと思っています。
この 月には中国の工会(労働組合)から日本に来られて交流することになってますし、来年はわれわれが行く番です。こうした交流を今後も活発に進めていくことで平和を実現する一助にしたい。
多民族多文化共生のモデルに
野平晋作・ピースボート共同代表
ピースボートは船で世界各地を回って国際交流している団体です。コロナの間は活動休止状態でしたが、その後復活し、年に2回以上は中国も訪問します。
最近の特徴は、船に乗っている人の3割以上が日本以外からということ。中国大陸も含め、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、韓国などからいらしてます。そうなると当然想定してなかったような問題もいろいろ発生するんですが、それと一つ一つ向き合って解決してるっていうのが今の私たちです。
例えば講座をするとき、英語、中国語、韓国語とかも同時通訳、逐次通訳をやっています。通訳機を使うときも、どれにするか選べますけど、中国語っていう言い方に違和感があるという人たちもいるんですね。例えばシンガポール、マレーシアの人で中国語がわかる人。いろいろ議論した結果、ピースボートの中では中国語を「中文」と表記することにしました。そうすると、どこの人が見ても中文で通じる。
ピースボートには広島・長崎の被爆者の方が乗って証言したりすることもあるんですけど、あるとき「貴重なお話ありがとうございました。しかしあなたの話を聞いていると、歴史が1945年の8月6日から始まったような印象を受けます。そもそもなぜ広島・長崎に原爆が落とされたんですか。それ以前の植民地支配や侵略戦争もあったでしょう。なぜそのことに一切触れないんですか」っていう意見が出た。
日本人だけが乗ってるときは問題にならなかったことが、日本以外の人がかなりの数乗ってくると、そういったことに気づかせてくれる。いま貴重な体験をしてるなと思ってます。
私はピースボートを多民族多文化共生のモデルにしていきたいと思っています。そういうモデルになるような空間をつくっていきたいなと思ってます。
交流なくして外交はない
棚田一論・日本青年団協議会事務局長
日本青年団協議会は、ここに掲げてある国交正常化の原点の前、1956年から中国に渡って日中の青年の交流を続けてきました。
その背景にあるのは、かつて日本の青年団は加害の歴史として中国現地に日本の青年たちを送ってしまったという現実があります。戦争に加担した歴史から、私たち青年団は二度と銃をとらないんだということを、中国の青年たちと交流を通じて交わし合い、今年で 年目を迎えます。
今、確かに日中関係が悪いということはありつつも、私たち日本青年団協議会は中国の青年たちと交流を続けています。その原点にあるのは、やはり交流なくして外交にはならないと思っているからです。
かつての先輩たちが日中国交正常化の前からやっていたのも、やはり国交が始まった際には必ず民間の交流が大事になってくる、そこには国情、思想信条、お互いの違いを認め合い、それを乗り越えた先に真の平和があるからだということで取り組んできたものを、私たちも続けております。
今年の8月にも中国に行き、現地の青年たちと意見を交換しながら、いかに私たちが手を携え、お互いに銃を向けることがないよう、そうしたことも含めて話をしてくる予定です。
5月に私たちは沖縄に行き、改めて過去の日本の戦争の問題、そして今の沖縄の問題を現地の青年団と一緒に考えました。やはり改めて過去の歴史に立ち、決して戦争がないよう、日中の青年がお互いに発展できるような取り組みをしていこうと確認し合いました。
今、政治不信とかいろいろあると思いますが、今日のような学びの場に来られなかった青年たちにもわれわれは伝えていきたいと思っておりますし、こうした場に多くの青年たちが集えるように引き続き協力します。一緒に頑張っていきましょう。
「パレスチナ連帯キャンプ」に支援を
東京大学生 小野寺 海斗さん
私たちが「パレスチナ連帯キャンプ」を始めてから今日で52日目になりました。52日前、あるいはもっと前は、「パレスチナは難しい問題だ」とか、そういう声が多かったと思います。でも、日々テレビやSNSで現在進行形のジェノサイド(大虐殺)を見せられる中で、「難しい問題だけど、でも停戦はできるよね」という声が増えてきたと思っています。
平和への希求や停戦運動は、ともすればナイーブなものとして批判されがちです。しかし、尊厳なんて「二の次」だとか、海を挟んだ大国が止めないならジェノサイドも「仕方ない」とか、そういう理念がはがされた実力至上主義の社会で本当に損をするのはどの国だろうかとも思います。
僕は今年20歳になりました。大学の3年生です。文学の授業では大江健三郎を読んで人間の尊厳を学び、哲学の授業では戦後ドイツの知識人たちが人間の尊厳とか暴力をどう解体していけるのかということを暴く姿を見てきました。学んだことを生かしているつもりで私は声を上げています。
そして私たちの運動が東京大学だけでなく、他の大学の学生たちにも届き、たくさんの学生の運動を盛り上げてきたというふうに思います。私たちの活動を支援していただけたら幸いです。
「台湾危機」は米国の責任
大嶋 和広・日本労働党中央委員会
誰が「台湾有事」の危機をつくり出し、あおっているのか。これをはっきりさせる必要があります。
結論を言えば米国であり、追随する日本政府、岸田政権です。
ウクライナ戦争は直接にはロシアが侵略したものですが、北大西洋条約機構(NATO)拡大でロシアを追い詰めたという経過があります。歴史を知っている人なら誰でも知っていることですが、パレスチナ問題では、英国の後を受けて米国がイスラエルを支援し続けてきました。米国の支援がなければ、こんにちのガザでの虐殺どころか、イスラエル国家自身が存続できません。
つまり、世界の紛争の大部分は、背後に米国の影があるということです。
なぜ、米国はそのようなことを続けているのでしょうか。
一つには、グローバルサウスが台頭して、世界の様相が大きく変わってきていることです。米国の思い通りになる世界ではなくなっているのに、自国の覇権を守るために必死です。とくに、グローバルサウスの中心である中国を抑え込もうとしています。
もう一つは、世界の資本主義が危機にあることです。米国内を見ると、コロナで数百万人が死亡し、「格差」はますます開き、社会的・政治的「分断」が深刻です。労働運動や学生の闘いが前進しています。年末の大統領選挙ではトランプ氏が「返り咲く」と言われていますが、結果がどうなろうと、政権移行が平和的に行われる保証はないと思います。それほどの危機です。
以上のような世界の激変下、岸田政権は衰退する米国に追随して大軍拡を行っています。これは時代の流れに反する危険な「火遊び」にほかならず、国民の生命と国土を危うくするものです。
しかも、米国は日本を「対中国」で前面に立たせ、自分は太平洋の向こう側で「漁夫の利」を得ようとしています。これは、米英が歴史的に使ってきた常套(じょうとう)手段です。惨禍に遭うのは日本であり、日本国民です。
こうした事態を避けるには、対米従属の岸田政権を倒し、わが国の独立・自主、自分の国の運命を自分たちで決める、そういう政権を樹立することです。別の言い方をすれば、日米安保条約を破棄できる政権でなければならないと思います。
これはあくまで、私どもの考えです。ただ、そう思わない方でも「日中戦争回避」では共同できると思いますし、そうできることを希望しています。
「日中戦争回避」のための運動を発展させなければなりません。わが党も、皆さんと手を取り合って頑張っていきたいと思います。