社説

日中国交正常化の原点に戻れ 「一つの中国」の原則堅持しアジアの平和を

 米国とそれに追随するわが国政府・支配層は、「中国敵視」とりわけ軍事的包囲策動を強めている。

 米国の狙いは、「唯一の競争相手」となった中国を抑え込むことで、衰退を巻き返して世界支配を維持することである。わが国支配層は米国に追随し、その衰退を横目に見ながら「対中国」で米戦略の前面に立つことを約束した。「アジアの大国」として登場することを夢想している。

 こうして「台湾有事」があおられている。だがこの道は、国民の命と財産を未曽有の危機にさらしかねない戦争と亡国の道である。

 「日中戦争回避」の旗を掲げた国民運動の発展が、切実に求められている。6月17日に行われた「日中戦争回避 国交正常化の原点に戻ろう 日本外交の転換を求める緊急集会」は、戦争の危機が高まる情勢にふさわしい取り組みとして成功した。わが党も微力を尽くしたが、力を尽くした皆さんに敬意を表したい。

 闘いはこれからである。集会アピールでも確認されたように、「日中戦争回避」の闘いを力強く発展させるためには、「一つの中国」の原則を再確認することが肝要である。

「一つの中国」は日中関係の基礎

 米日両政府は、台湾を「一つの国」のように扱う策動を強めている。マスコミはもちろん、頼清徳「総統」就任式に際しての国会議員31人の訪台を見れば明らかなように、ほとんどの議会内野党も同様である。

 これは、「一つの中国」原則に反する、中国への悪質な内政干渉である。

 「一つの中国」とはすなわち、①中国という国家は一つであり、②台湾は中国の一部で、③中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であるという原則である。

 この原則は、国際的にも認められている。中国と台湾の双方を「正統」とする国は存在せず、国連も1971年の「アルバニア決議」で中国に代表権回復と安保理常任理事国の席を与える一方、蒋介石の代表(台湾)を追放した。

 わが国も、72年の日中共同声明で以下のように合意した。

 「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」

 「十分理解し、尊重」するという表現で、わが国は「一つの中国」の原則を受け入れた。これにより、台湾問題は中国の内政問題であるという立場を約束したのである。

 この合意を基礎として、日本は米国に先んじて、中国と国交を正常化することができた。中国は「中日両国国民の友好のために」として、日本に対する戦争賠償請求を放棄した。

 この共同声明、日中平和友好条約(1978年)など「4つの政治文書」を通して、日中両国は経済・政治の両面で全体として良好な関係を継続させてきた。これは、アジアの発展の重要な要因でもあった。

 共同声明で約束した「一つの中国」の立場は、日中関係の基礎であり、アジアの平和に貢献するものである。

 「台湾有事」に反対する人々、団体は、日中国交正常化の原点に戻り、日中共同声明、「一つの中国」の原則を堅持することが求められている。

「台湾住民の民意を尊重」は成り立たない

 中国の内政問題である以上、わが国は台湾問題に干渉してはならない。

 英国やスペイン、カナダなど、先進諸国内部にさえ地方の独立運動は存在する。だが、米国が台湾に対して行っているような、第三国による武器供与などは、先に挙げた国々では見られない。他国は内政問題に干渉しないことが常識だからである。内政不干渉は、国連憲章や総会決議でも定められている。

 台湾問題が中国の内政問題であることにふれない代表格が、日本共産党である。

 共産党の志位議長は4月17日、「東アジアの平和構築への提言」という講演で、台湾問題について以下のように述べた。

 志位氏は台湾問題に関して、中国による「武力行使や武力による威嚇に反対」とし、続けて「日本と米国が軍事的に関与・介入することに反対」と述べた。さらに「台湾住民の自由に表明された民意を尊重すべき」と主張している。

 台湾問題が「平和的に解決」することは、もちろん望ましいことである。だがそれも、重ねていうが中国の内政問題である。

 志位議長は米日の「関与・介入に反対」としつつ、「一つの中国」原則にまったく言及していない。つまり、台湾問題を中国の内政問題とは認めていないか、あいまいにさせているのである。

 これでは、米日の「関与・介入」や中国敵視の戦争策動と闘うことはできない。

 仮に、台湾が何らかの手段で「独立」を宣言したらどうするのか。志位議長の論法に従えば、わが国は「台湾独立」を認めなければならず、日中共同声明を破棄することになる。それは米国の望むところだろうが、日中関係を根底から破壊することである。

 一部にある「台湾住民の民意を尊重すべき」という、見解は成り立たず、客観的には有害なものである。

日中・日米関係の矛盾

 こんにち、米国による中国への包囲と圧迫が強まるなか、日米関係と日中関係をどうするか、厳しく問われている。

 台湾が中国の一部であることを認める限り、仮に中国が台湾に武力を行使しても、内戦(正統政府による反乱勢力の鎮圧)の一環にすぎない。米軍が「台湾防衛」の軍事行動を起こせば、中国の国内問題への違法な干渉である。日本がこれを「支援」する根拠もない。国際法上、当然の結論である。

 一方、日米安保条約は、「日本防衛」と同時に、台湾を含む「極東の平和及び安全の維持」を名目とし、米国のアジア戦略の中核である。在日米軍基地の存在と日本政府の協力なしに、この戦略は機能しない。

 こうした矛盾は、日中国交正常化交渉の際から問題になっていた。

 中国は当然、この矛盾に気づいていた。周恩来首相は、日本側が侵略戦争について「責任を痛感し、深く反省する」としたこと、また台湾の中国への返還を意味する「(日本が)ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」との一文を共同声明に加えることを提案したことで妥協し、日米安保については問わなかった。

 田中角栄首相も、中国との国交正常化は安保条約と関わりない態様で行うという趣旨の発言を行った。

 こうして日米同盟の枠内ではあったが、わが国は中国と国交を正常化した。先述したように、国交正常化は日中両国、アジアの発展に貢献した。

内政干渉の余地は残った

 とはいえ、台湾をめぐる矛盾は残された。

 大平正芳外相は73年、中国と台湾の関係は「基本的には中国の内政問題」で、台湾への安保条約の適用は「今後の日中両国間の友好関係をも念頭において慎重に配慮する」などと述べた。栗山尚一元駐米大使によれば、「中国が武力を用いて台湾を統一しようとして武力紛争が発生した場合には、事情が根本的に異なるので、わが国の対応については、立場を留保せざるを得ない」という意味である(カラーは栗山氏による傍点)。

 米国は米中国交正常化(79年)以降も、「台湾関係法」によって、大統領に台湾を「防衛」するための軍事行動の選択肢を与えている。台湾防衛の義務はない(あいまい戦略)が、米台関係は本質的には変わっていない。

 こんにち、バイデン政権は中国敵視を強め、4回にわたって「台湾有事」への「介入」を明言している。

 経過を考えれば、2021年の日米共同声明(バイデン大統領、菅首相)が、52年ぶりに「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と明記したことの重大性が理解できる。

 日本政府は台湾問題で米側の立場に立ち、「一つの中国」の立場を事実上投げ捨てることを約束したのである。岸田政権は日本が前面に立って中国と戦うとばかりに、中国敵視外交と、ミサイル配備などの軍備増強に余念がない。

 戦争を避け、日中関係を発展させるには、日米関係、本質的には日米安保条約の問題に行き当たらざるを得ない。

「日中戦争回避」の国民運動発展を

 わが国の進路が深刻に問われている。

 こんにち、世界は歴史的転換期にある。資本主義は末期症状を呈している。米欧が主導する世界は崩れ、グローバルサウスと呼ばれる新興諸国・発展途上国が経済的に力をつけ、政治的発言力も増大させている。

 中国は、困難を抱えつつも発展を遂げている。米欧による電気自動車(EV)輸入規制は、中国の科学技術力、競争力の発展を意味する例である。

 対米従属の岸田外交は、こうした世界のすう勢にまったく逆行している。自国の衰退を巻き返そうと必死の米国に追随する道は、繁栄するアジア、中国と結びつき、ともに生きる道を閉ざすものである。「経済安保」を掲げた中国との「分断」は、わが国経済の発展にも逆行することになる。

 中国敵視の報道を垂れ流すマスコミに惑わされず、歴史の事実と世界の現実を見なければならない。

 国交正常化の原点に戻り、「一つの中国」の原則を守る「日中戦争回避」の国民運動を幅広く発展させることが求められている。

 青年・学生間の交流と相互理解の推進は、「戦争回避」と東アジアの平和と安定のために役割を果たせる。「国交正常化の原点に戻る」ことを目指した、政党、国会議員、首長・自治体議員、経済界、労働界、知識人、市民など、各界の心ある人々による共同の努力を呼びかけたい。

 労働者階級・労働組合は広範な国民運動の中心勢力となり、平和と安定の保障となる独立・自主の政権を樹立するために奮闘しなければならない。

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