トピックス

世界・日本のできごと(7/15〜7/28)

世界のできごと

ICJ勧告、「イスラエルのパレスチナ占領は違法」
 国際司法裁判所(ICJ)は7月19日、イスラエルが1967年に占領したヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムに継続的に駐留していることを国際法違反と勧告した。イスラエルによる占領地の併合や入植活動の拡大、パレスチナ住民に対する差別的措置を全面的に断罪した上で、占領地での新たな入植活動の即時停止、すべての入植者の撤退、住民にもたらした損害の賠償を行う義務があると指摘している。
 この勧告的意見に対し、「イスラエルは人種差別撤廃条約に違反している」と批判してきた南アフリカなど、グローバルサウスを中心に歓迎する姿勢を表明する国が相次いだ。
 国際的に孤立し、また国内からも左右双方の立場から激しい批判にさらされているイスラエルのネタニヤフ首相は24日、パレスチナ・ガザ地区への攻撃を開始していから初めて米国を訪問、議会両院の合同会議で演説を行うなど、米国の支援継続を訴えた。
 イスラエルとそれを支持する米国に対する国際的な批判は一層高まっている。
(参考記事)
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中国が積極的な仲介外交、米外交不在よそに
 中国は7月21〜23日、パレスチナ自治政府の主流派ファタハやハマスなど14の各派が出席する会合を北京で開催した。対立するハマスやファタハの和解と統一政府樹立に向けて合意した「北京宣言」を23日に発表した。
 中国は昨年3月にサウジアラビアとイランの国交回復を仲介するなど、中東での平和外交で存在感を高めている。
 また24日には中国の王毅外相がウクライナのクレバ外相と広州市で会談した。ウクライナではロシアとの戦争が長引くなか、かつてなく厭戦(えんせん)気運が高まっており、クレバ外相は打開の糸口を中国に求めた格好だ。
 また中国は21日、南シナ海のフィリピン軍拠点への補給活動を巡り、フィリピン政府と仮協定に合意したと発表した。
 米国の内外政策が大統領選の影響で滞っているのをよそに、中国は積極的に仲介外交を展開している。日本のマスコミなどは「成果に疑問」などと粗探しに終始しているが、世界各地に対立を持ち込む米国と中国外交の姿勢の差は歴然としている。
(参考記事)
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中国共産党が3中全会、中国経済のパラダイム・チェンジへ
 中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が7月15〜18日に北京で開かれた。3中全会では、党としての中長期的な経済運営の方針などが決定される。
 習近平国家主席が掲げる「改革の全面的な深化」と、独自の発展モデルを意味する「中国式現代化」を推進する方針を決定、党の指導のレベルをさらに引き上げるとした。また「2029年の建国80年までに改革の任務を完成させる」として、今後5年で公正な市場競争の確保や不動産や地方政府の債務問題などのリスク防止といった一連の改革を完了させるという新たな目標が示された。
 日本のマスコミは「不動産不況への対応策がない」「市場統制を強化」などと「木を見て森を見ない」報道に終始しているが、中国はハイテク国家戦略を猛スピードで推し進めており、中国敵視の「批判ありき」の姿勢では正しく理解することができない。
(参考記事)
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G20で3会合ぶり共同声明、グローバルサウス主導で「超富裕層課税」
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が7月26日、ブラジルのリオデジャネイロで共同声明を採択し閉幕した。G20財務相・中銀総裁会議が共同声明を出すのは、23年10月のモロッコ・マラケシュでの会議以来、3会合ぶり。
 宣言には超富裕層への課税強化が明記された。議長国ブラジルを中心にグローバルサウスが格差是正に焦点を当て、先進国を相手に主導権を発揮した形。また、超富裕層への課税の推進や巨大IT(情報技術)企業を対象とするデジタル課税の多国間条約の早期確定などを盛った「国際租税協力に関するG20閣僚リオデジャネイロ宣言」も公表した。G20で税に関する閣僚文書をまとめたのは初めて。
 これまで国際課税の議論は先進国主導で経済協力開発機構(OECD)がけん引してきた。OECD加盟国ではないブラジルが国際課税の議論で主導権を握るのは異例で、国際政治上の力関係の変化を示すものとなった。

ILOが報告書、猛暑による労災、年2300万人に
 国際労働機関(ILO)は7月25日、気候変動による異常な気温上昇が労働者の健康状態や職場環境に及ぼす影響に関する報告書「職場の暑さ—安全と健康への影響」を発表した。
 報告書によると、世界の就労人口の7割超にあたる24億人の労働者が熱波にさらされる危険があるなかで働いており、猛暑が年間で世界の労働者約2300万人の労働災害を引き起こし、約1万9000人の死亡原因となっていると指摘している。また、猛暑にさらされている労働者の割合は、アジア太平洋が74%、アラブ諸国が83%、アフリカが92%としている。

人民のたたかい

 米国の主要7労組は7月23日、バイデン大統領に共同書簡を送り、パレスチナ自治区ガザに攻撃を続けるイスラエルへの軍事支援をただちにやめるよう求めた。書簡には、全米自動車労組(UAW)やサービス業国際労組(SEIU)、客室乗務員協会(AFA)など合計で約600万人を代表する幅広い業種の労組が名を連ねた。訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相が24日に米議会で演説、25日にはバイデン氏と会談するのに先立って公開され、「米国の軍事支援の即時中止がこの紛争を平和的に解決するうえで必要」などとしている。(参考)
 また、ネタニヤフ首相が米議会で演説した7月24日、米各地から数千人が議会周辺に結集、ガザへの軍事攻撃に抗議した。「ネタニヤフ氏をジェノサイド(集団殺害)の罪で逮捕しろ」などと書かれた横断幕を掲げてデモ行進し、同氏を招待した議会も批判した。
 フランスでパリ五輪が開幕する前日の7月25日、パリ中心部の共和国広場で、五輪反対とパレスチナ・ガザ連帯を訴える集会が行われた。
 またパリ五輪の開会式に出演予定のダンサー200人以上が労働条件と出演者間の報酬格差の改善を求め、7月22日に行われたリハーサルを途中で切り上げるなどのストライキを行た。24日には労組・舞台芸術組合(SFA)が報酬の一部について正規雇用のダンサーらと同等の待遇を保障することで雇用者側と合意したと表明、通告していた開会式でのストを取りやめた。

日本のできごと

日台海保の合同演習、1972年の断交後初
 日本の海上保安庁と台湾海巡署(海保)は7月18日、千葉・房総半島沖と伊豆大島沖で合同訓練を行った。日台の合同訓練は1972年の断交後初めて。台湾の頼清徳当局による「独立志向」を支持・激励し「独立」を既成事実化する策動で、1972年の日中共同声明以来の日中間の約束に反する、許しがたい内政干渉だ。
(社説)

日米2+2、自衛隊のみならず日本全体が「米軍指揮下」に
 日米両政府は28日、外交・軍事担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)を東京で開催した。
 採択された共同文書では、米国は核を含むあらゆる能力を用いた日本防衛への揺るぎなく関与するとし、米国が在日米軍を再編し「統合軍司令部」を新設すると表明した。来年3月に創設される自衛隊の「統合作戦司令部」の「重要なカウンターパート」だと位置付けたが、「独立した指揮系統」とは記されず、自衛隊が事実上の指揮下に置かれることは確実だ。
 また、空港・港湾の共同使用のさらなる機会の追求や、兵器の共同生産の拡大にについても盛り込んだ。
 さらに、中国を名指しで「他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序をつくり変えようとしている」と決めつけ、軍事的な中国包囲のための同盟強化であることも明確にした。
 ブリンケン米国務長官が「日米同盟は過去一番強固になっている」と強調したが、言い換えれば、自衛隊のみならず日本全体が強固に米軍指揮下に置かれることを認める内容で、度し難い内容だ。
(参考記事)

国内最大規模の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」
 陸上自衛隊と米海兵隊は7月28日、九州・沖縄などで共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」を開始した。日米の部隊から過去最大規模となる計約8900人が参加、8月7日まで陸自駐屯地や在日米軍施設で射撃や戦闘の訓練を行う。3月に沖縄県の勝連分屯地で発足した第7地対艦ミサイル連隊が初参加、同県の与那国島では日米共同での机上訓練や兵たん訓練や患者輸送訓練を、石垣島では長射程ミサイル・12式地対艦誘導弾による対艦戦闘訓練(非実射)などを行う。
 また陸上自衛隊と米陸軍による実動演習「オリエント・シールド」も18〜26日まで、北海道の陸自矢臼別演習場と隣接する航空自衛隊計根別飛行場、陸自饗庭野演習場(滋賀県)、明野駐屯地(三重県)、伊丹駐屯地(兵庫県)で実施された。陸自から約1800人、米陸軍・海兵隊から約800人が参加した。
 主として中国を念頭に、日米両政府は格段に軍事演習を強めているが、東アジアの軍事的緊張をあおる危険な蛮行だ。

在沖米軍の刑法犯、過去最多ペース
 沖縄県内で今年上半期(1〜6月)の米軍人・軍属、その家族による刑法犯の摘発人数が39人(35件)に上り、前年同期比で14人増加(56%増)したことが、沖縄県警が7月16日に公表した資料で明らかになった。過去10年で年間最多だった昨年の60人を上回るペースで、米兵による性的暴行事件の隠蔽(いんぺい)が相次いで明らかになるなか、米軍犯罪が野放しにされている実態を示すものとなった。

太平洋・島サミット、中国への対抗意識さらに
 太平洋地域の島国・地域と日本による国際会議「太平洋・島サミット」が7月16〜18日、東京で行われた。同会議は、南太平洋の16の島国と地域の首脳に加え、オーストラリアやニュージーランドの閣僚らを日本に招き、経済協力や気候変動対策について話し合う。1997年から3年ごとに開催、今回が10回目となる。
 採択された首脳宣言と共同行動計画では、この地域で影響力を強める中国を念頭に「武力または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」と初めて明記、日本が他国軍に防衛装備品などを無償提供する政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じ、島しょ国の海洋安全保障能力強化のための支援も表明した。
 米国の意も受けて中国対抗に躍起となったが、支援規模で中国に対抗するのは無謀であることは日本政府関係者も認めるところ。真にこの地域の発展と共生を願うなら、むしろ中国とも連携した支援のあり方を探るべきだ。

最賃改定目安、「過去最大の上げ幅」も依然不十分
 厚労省の中央最低賃金審議会は7月25日、今年度の最賃改定の目安を全地域ランクで50円増(5%増)とし、現行の1004円から1054円へと引き上げる答申を採択した。「過去最大の上げ幅」などと言われるが、労組や識者が求める「全国一律1500円」とは程遠い。地域ごとのA〜Cランクという地域格差も是正されず、目安通りの引き上げであれば、最も高い東京都が1163円、最も低い岩手県で946円と格差は残される。

佐渡島の金山、世界遺産決定、依然侵略の歴史に向き合わず
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は7月27日、世界最大級の金生産地だった「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産への登録を決定した。佐渡島の金山をめぐっては、アジア・太平洋戦争末期に当時日本の植民地支配の下にあった朝鮮人の強制労働が行われており、これまで韓国が登録に注文をつけていた。今回、韓国政府との協議の中で、日本政府は朝鮮人労働者の歴史を現地で展示することを約束したが、これまで朝鮮人労働の強制性を認めないなど、依然として侵略の歴史に向き合う真摯(しんし)な姿勢は見られない。

6月消費者物価、2.6%上昇、34カ月連続
 総務省は7月19日、6月の全国消費者物価指数(2020年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.8と、前年同月比2.6%上昇した。上昇は34カ月連続で、2カ月続けてプラス幅が拡大した。政府の負担軽減策が半減されたことなどが影響し、電気代や都市ガス代が値上がりした。

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