世界のできごと
ICCがイスラエル首相らに逮捕状請求、米国の孤立と影響力低下反映
国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)のカーン主任検察官は5月20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相らに逮捕状を請求したと発表した。今後、ICCの予審裁判部が逮捕状を出すか判断する。カーン氏は会見で、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で民間人を意図的に殺害し、飢餓状態などの深刻な傷害を与えたのは犯罪行為であり、「首相らが刑事責任を負うと信じるに足る合理的な証拠がある」と強調した。
これに対し、ネタニヤフ首相や米国のバイデン大統領は反発、英国やドイツも同調し、米国はICCへの制裁の検討も打ち出した。一方、欧州連合(EU)外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は「ICC設立条約を批准した国は裁判所の決定を実行に移す義務がある」とし、フランスも「ICCとその独立性、そしてあらゆる状況における不処罰との闘いを支持する」と理解を示した。ベルギー、スペインなど米国の同盟国を含む国やチリ・コロンビア・南アフリカなどグローバルサウスからも、決定を歓迎する意が示された。
一連の動きは、米国やイスラエルの国際的な孤立が一層深まってる現状と、米国が他国や国際機関ににらみをきかせられない現状を如実に示している。
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頼清徳氏が台湾の新「総統」に就任、「独立」あおる米国
中国・台湾で5月20日、民進党の頼清徳氏が新しい「総統」に就任した。頼氏は就任演説で「国家」という言葉を35回も繰り返し「中華民国・台湾は独立した主権国家」と明言した。これに対し、王毅・中国外相は「一つの中国という原則こそが台湾海峡の平和を維持する。台湾独立の行為は台湾海峡の現状を変え平和を破壊する危険な変更」と強くけん制した。
米国は、就任式にこそ現職閣僚などを派遣しなかったものの、3月にはバーグマン下院軍事委員会委員長などが訪台して頼氏と会談、また5月据末にはエマニュエル駐日大使が台湾に最も近い日本最西端の島である沖縄県の与那国島を初訪問するなど、中国を刺激し続けてきた。
日本政府やマスコミは中国軍による演習を非難しているが、緊張をあおっているのは米国や頼氏の側だ。
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米がケニアを同盟国指定、アフリカでの影響力回復を画策
米国のバイデン大統領は5月23日、ケニアのルト大統領を国賓として招いて会談した。米国が国賓としてアフリカ首脳を招くのは2008年以来。バイデン大統領は会談後の会見で、ケニアを「北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要同盟国」に加える考えを明らかにした。日本やイスラエル、カタール、モロッコなどと16カ国と同様の位置付けで、サハラ砂漠以南のアフリカでは初。アフリカでは政変などを経て中国やロシアの影響力が強まり、米国やフランスは影響力や拠点を失っている。今回のケニア同盟国指定は米国は巻き返し策動だ。
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G7財務相、相違多で一枚岩遠く 影響力低下が顕著
イタリア北部ストレーザで開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は5月25日、ウクライナへの支援策などで合意して閉幕した。西側諸国が凍結したロシア資産総額3000億ドル(約47兆円)の利子を活用してウクライナの復興資金を捻出する大枠で、各国で「支援疲れ」が色濃くなる中での演出だが、国際法に抵触しない範囲での手段は詰められず、実現へのハードルは高い。
また共同声明では、各国で中国製の電気自動車(EV)や太陽光パネルなどの輸入が拡大していることに対し、「過剰生産」が「われわれの産業及び経済的強靱(きょうじん)性を損なう」と表明した。競争力を増す中国に対する危機感が示された形だが、米国が検討する制裁関税など具体的な対抗策をめぐっては米欧間の温度差もあり、声明には盛り込まれなかった。
巨大グローバル企業を対象としたデジタル課税の実現と富裕層課税の強化も盛り込まれたが、ここでも米欧間の差が表面化、「あらゆる努力をする」との記述にとどまった。
世界の中で相対的な存在感の低下が加速するG7だが、内部の利害の違いから一枚岩になれず、いっそう影響力を失っている。
パンデミック条約、合意なく交渉終了、問われる先進国の責任
コロナ禍を教訓に、将来の感染症のパンデミック(世界的大流行)に備える国際条約の策定を議論してきた世界保健機関(WHO)加盟各国は5月24日、条約の内容で合意できないまま、2年余りに及んだ交渉をいったん終了した。27日からのWHO年次総会で採択を目指していたが、ワクチンの公平な分配を巡る方策などで先進国と途上国の溝が埋まらなかった。途上国向けの資金・技術支援に関する折衝も難航した。テドロスWHO事務局長は24日の会合で「世界は今なおパンデミックへの備えができてない」と、警鐘を鳴らした。パンデミック対応には、先進国にはより大きな責任が求められている。
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人民のたたかい
世界各地でパレスチナ・ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルやその後ろ盾となっている米国に抗議する行動が続いている。
米国のハーバード大学で5月23日、卒業式に出席していた学生のうち数百人が式典を途中退席し、大学周辺をデモ行進した。大学側は前日、学生のうち13人の卒業を認めない決定を下していた。卒業生たちは「彼らに卒業を」「パレスチナを解放せよ」と抗議を続けた。イェール大学やデューク大学などでも、卒業生が式から退席している。
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チリ大学学生連合や大学内のパレスチナ連帯組織が呼びかけ、5月24日にサンティアゴでパレスチナ連帯デモを行い、「ジェノサイド(集団虐殺)をやめよ」と声を上げた。学生らはキャンパスに連帯キャンプを設置。大学当局に、イスラエルを非難することや、イスラエルの企業や大学との関係を断つよう要求している。
韓国の半導体大手サムスン電子の労働組合が5月24日、ソウルにあるサムスン電子の社屋前で集会を開き、年6・5%の賃上げ、営業利益に応じたボーナスの支給、休暇改善などを求めた。集会には全国サムスン電子労組の2000人が参加し、民主労総からも約200人が駆けつけた。
日本のできごと
台湾新「総統」就任式を悪用、中国挑発強める政治家
台湾の新「総統」となる民進党の頼清徳氏の就任式が5月20日に行われたが、これに自民党や立憲民主党など超党派の国会議員でつくる「日華議員懇談会」(会長・古屋圭司衆議院議員)を中心に31人の議員団が参加した。就任式への国会議員の出席人数として最大規模で、頼氏との昼食会も行った。大量参加は台湾を「一つの国」と内外に演出する効果を狙ったもので、中国の内政に干渉し緊張をあおる蛮行だ。
また「台湾独立」を印象付けたい自治体長や地方議員も大挙して参加、出席した沖縄県石垣市の中山市長は、X(旧ツイッター)に「台湾は世界が認める国家」と投稿するなど、中国への挑発が強められている。
中国外務省は「少数の国家と政治屋の誤った言動は『一つの中国』の原則や国際関係の基準に背き、中国の内政に対する乱暴な干渉で主権と領土保全を損ない、台湾海峡の平和と安定に危害を与えた」と批判している。
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昨年度の実質賃金2.2%減、2014年度消費税増税に匹敵
厚生労働省が5月23日発表した2023年度の毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、現金給与総額(名目賃金)に物価の変動を反映させた実質賃金は、前年度比2・2%減となった。賃金の伸びを物価上昇が上回り、2年連続のマイナスに。落ち込み幅は、消費税増税の影響で物価が上昇した14年度(2・9%減)以来、9年ぶりの大きさとなった。
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住民が波照間空港の軍事利用に反対
有事に備えて政府が公共インフラを整備する「特定利用空港・港湾」の指定候補に県管理の波照間空港が挙がっていることを巡り、波照間島の住民らが5月22日、整備候補に挙がっている波照間空港の滑走路延長に反対する意思を玉城デニー知事に伝え、軍事利用を認めない県主体の滑走路延長を求めた。
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能登地震の関連死30人、問われる国や県の責任
石川県は5月23日、能登半島地震の災害関連死として3市町の30人が認定されたと発表した。関連死の正式認定は初。これにより、直接死230人を含む死者数は260人となった。14日に初開催された県と市町の合同審査会が30人の認定を決めていた。100人超の遺族が申請しており、認定者数は今後大幅に増える可能性がある。避難生活中の不便な生活と高いストレスによるもので、国や県の防災体制次第では命が失われずに済んだ可能性も高い。国や自治体の責任も問われている。
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静岡知事選、自民系敗北、岸田政権にまた大打撃
静岡県知事選挙は5月26日に投開票され、立民と国民が推薦した鈴木康友元浜松市長が、自民党が推薦した元副知事らを抑え初当選した。今回の選挙は共産党が独自候補を立てて「野党分裂」となったが、それでも自民推薦候補は及ばなかった。自民党や岸田政権に対する不信や怒りの根深さを示すもので、4月の衆院3補選での自民「全敗」に続き、岸田政権には大きな打撃となった。
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