沖縄の戦後80年にこの映画を紹介したい。本作は歴代沖縄県知事の姿を追うドキュメンタリーである。題名にある「ティダ」は、その昔は「リーダー」をあらわす言葉でもあったという。全国の米軍基地の7割が集中する沖縄の知事は、国と米軍と県民と自らの心情のはざまで「日本でいちばん厳しい立場におかれた知事」(大田昌秀氏)だ。
この作品では第4代県知事の大田氏(任期1990-98年)と第7代の翁長雄志氏(2014-18年)にスポットを当てる。
大田氏は沖縄戦で鉄血勤皇隊に動員され、地獄のような体験をしている。1995年の少女暴行事件糾弾県民大会で、行政の長として少女を守れなかったことを県民に謝罪した。その直後から日米地位協定の見直しを訴え、当時の橋本首相から「普天間基地全面返還」の言葉を引き出すが、県内移設が条件となる。
一方の翁長氏は大田氏とは政治的スタンスを異にする。自民党沖縄県連幹事長として大田県政を激しく批判し、大田氏を退陣に追い込んだ立役者だった。
しかしその翁長氏も、教科書問題やオスプレイ配備問題で、政府と対決する姿勢を強めていき、「オール沖縄」の運動をつくる原動力となる。知事に当選した翁長氏は辺野古埋め立てを強行する安倍政権と対峙(たいじ)していく。その翁長氏の原点にも、沖縄戦を戦った父の姿があった。
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本作は関係者へのインタビューと当時の報道を使って沖縄の戦後県政史をていねいに編集している。上映時間は2時間に及ぶが、記録の中にもドラマがあり、見応えがある。
「沖縄県は日本ですか」「沖縄だけに米軍基地を押し付けるのは差別ではないですか」「安倍総理は日本を取り戻すと言っていますが、その中に沖縄は入っているんですか」「辺野古に基地をつくらせないという決意はみじんも揺らぐことはありません」など、知事たちが発した言葉の重みは今も全く変わらない。
いつしか翁長氏も大田氏と同じ道を歩むことになった。政治の対立を軽々と超えさせた力は「二度と沖縄を戦場にしない」という強い思いだった。この力は今の玉城デニー知事にしっかりと受け継がれている。信念に沿って行動し、苦悶し、平和を求めた二人の姿は、人間としての魅力にもあふれている。
「沖縄には日本の矛盾が詰まっている」ともいわれる。日本の現実を知り未来を考える上でも、おすすめしたい作品だ。(K)
佐古忠彦監督、2025年、全国で上映中