ゴールデンウイーク前ごろからスーパーの店頭からコメが不足しだした。あまり気にしていなかったが、だんだんと大騒ぎになってきた。その後、お盆前に起きた日向灘地震で南海トラフ地震防災対応が呼びかけられ、水やコメなど生活必需品の買いだめまで起こり、さらに深刻なムードになった。
そんなころ、近所のコメ作りの仲間が「メシ炊くコメが手に入らん」と言ってきた。うちでは少し身内用もあるので分けてあげた。
彼はかつては自家用飯米と同じ出荷用のうるち品種も栽培した上に、これより価格が高い酒造用米・山田錦も地域からの割り当て量を栽培していた。
零細兼業農家で別種のコメを作る場合、1台ずつ保有のコンバインハーベスター(米麦刈り取り脱穀機)や乾燥機、籾摺(もみす)り選別機のセットを、品種を変えた時に完全に掃除する必要があり大変な手間がかかる。
だから、日本酒輸出振興策を契機に酒米植え付け割り当てが増加するかと期待したことや、またコロナ禍でコメの需要や価格が下落したこともあり、販売・飯米用うるち米の栽培をやめ、自家用飯米は購入することにした。その矢先のコメ騒動だ。
その他の数人の農家からも「コメが欲しい」との申し出があった。できるだけ少しずつ分けてあげたが、もう自家用米も逼迫(ひっぱく)してしまった。
こんな事態となったのは、「農家にとっても今やコメは作るより購入するほうが得」という状況があるからだ。
コメは高くない!
1袋30キログラム当たりの玄米価格。地元農協は買取価格は従来の5800円に最終1000円ほど上積みするとのことだ。酒米は1万2500円が2000円ほど上がるとのこと。
しかしこれは、消費需要が伸びて値上がりしているのであればいいのだが、原料費高騰を受けたもの。この1年で燃料や種苗肥料・農薬などが30〜80%も値上がりし、経営をさらに圧迫している。急激な円安の影響で諸物価高騰、さらに自然災害不安から必需品の水、コメの買い置きが2割増えると、物価は50%以上高騰する。不足の不安からさらに買いだめに走り、店頭から商品が消える。
他の値上がりしている食品価格を比べると、コメは茶わん1杯分約40円、カップ麺約200円、ペットボトル飲料約150円、菓子パン約140円だから、コメは安いものだ。そのコメの値段だが、昔は高くて30キロが1万円以上していた記憶がある。コメ作りに魅力があった時代もあったのだ。
地方都市も日本だ!
ところで、うちの地区は「市街化区域」として農地の別種地転用に制限がなくなった。農地に宅地並み課税が適用され、さらに小規模零細兼業農家が高齢化し、後継ぎもいない。そのような状況なので、ここ十数年の間に地区の水稲作付面積が半減してしまった。
代わって、幸か不幸か、どんどんと住宅が建ってきている。わが町内では世帯数は増加しているが、市内のわが地区以外の集落は人口が減少している。世帯数減、空き家増加で、直売所の仲間の話題で秋祭りの話になると、神輿(みこし)の担ぎ手がいなくて秋祭りもできない状態が進行している。
当然、市全体では人口減少し、小中学校の統廃合が具体化してきて、せっかく隣の町がわが市に合併したのに、その町の中学の生徒数が減って、市の中学校にその町の子どもが電車に乗って通ってくれれば乗車数が増加する、なんてことを市長は考えている。
JRの路線廃線圧力も強まって、市として乗車推進イベントを開いているが、根本的解決にはならない。
以前、「2050年には消滅する可能性のある自治体にわが市も含まれる」との予測がショッキングに発表された。自民党総裁選の候補者の中に、食料安保、国土保全、持続可能な農業振興を真に理解している者、米国と財界からの圧力に逆らうなんて骨のある候補者はいない。主権のない国じゃ、食料も農業も地方も守れない。