24春闘以降の職場の動きを報告する。
食品スーパーAの私が働いている店舗は、正規職は店長、副店長、青果と海産のチーフ、各サブチーフの6人だけで、他の精肉・惣菜(そうざい)・日配・グロサリー(一般保存食品)は、パート、アルバイトの非正規職労働者が中心で店をきりもりし、非正規職労働者は70人余りで全体の90%を占める職場だ。
半年に一度、非正規職労働者は「契約書」更新があり、今年も4月末までに対象者全員が手続きした。
24春闘の結果、時給がいくら上がったか「契約書」更新の書面でわかるので、手続き当日はみんな作業をしながら期待半分・不安半分だ。更新手続きが済み、事務所から出てくる人の表情に、時給が期待通りか否かが投影されている。あれから1カ月余りが過ぎ、今回の時給アップ状況を何人かに聞いてみた。
65歳までは50〜80円の幅で昇給(業務評価あり)、66歳から一律50円アップという結果だが、物価高騰が続き、さらに電気・ガス代の政府補助金も今月以降なくなるため、わずかな賃上げでは手元に残らないと皆言っている。
もちろん「賃金アップして良かったね」で済ませないのが資本家だ。
スーパーA資本は、昇給で人件費支出がアップする分、店長会議で具体的数字を挙げ経費削減せよと指示を出した。この店では早速、5月からさまざまな部分の経費削減の動きが出てきている。
まず売り場(牛乳売り場、プリン・ヨーグルト売り場、ペットボトル飲料売り場)の冷ケース内照明の消灯で節電を始めた。次に、警備会社派遣の警備員2人が従来、毎日8時間勤務で駐車場出入り口の誘導を担当しているが、6月から警備契約を解除し、警備員不在の態勢となった。これにより月65万円の経費削減になるとのこと。客が駐車場から店前にある幹線道路に出るのに警備員の誘導がなくなり、道路に合流するタイミングがうまくつかめず、なかなか出られない人が見られる。A資本は来店した客の安全より会社の利益が優先なのか。テレビで高齢者の車の事故のニュースを見るたびに気がかりになる。
節電対策で暗くなった冷ケース
また子会社・Aクリーンの清掃パートは、午前と午後各3時間勤務で、店内床面やトイレなどの清掃、店頭のゴミ箱の袋交換、イートインの清掃など清掃全般を担当しているが、これを契約解除しレジスタッフにやらせるとの打診があった。これで月約20万円経費節減するのだという。
この話に対し、皆「そんなに何でもかんでもできない」と不満の声が爆発、数人で店長に「野菜の品出しが終わったら、精肉や惣菜の商品補充・陳列手直しと忙しく動き回っているのに、さらに清掃員の仕事まではムリです。私たちにそんな時間はないですよ」と申し入れた。店長から「仕事だよ、やれないなら辞めてもらっていいよ」との一方的な言い方をされ、怒りが収まらない4人は先月末で退職した。ただ、ベテランパートが何人も欠員となればレジは回らなくなるので、清掃作業の追加の話は結局なくなった。
困った店長は本部に相談し、穴埋めで「派遣」を導入、現在5人がレジ専属として投入されたが、彼女らは他のスーパーでレジ経験があり、レジの機種が異なっても〈1日研修〉すればレジに入れ、何とか乗り切れた。
今後さらに経費を節減するため、冷ケース内照明の消灯箇所の増加や天井照明の照度ランクを落とすなどと併せて、さまざまな形で労働強化を伴う経費節減を要求してくるに違いない。
ところで、派遣スタッフは派遣会社に〈仕事に入れる日と勤務希望時間帯〉を登録する仕組みのため、入る人が日ごとでコロコロ変わる。決められた時間帯に勤務に入り、指示された作業のみこなして帰る。翌日、銀行口座に振り込まれる日払いだ。
パート労働者はA資本と雇用関係があり、労働者同士は仲間意識もあるが、派遣労働者はA資本と直接雇用関係はなく、日ごとにメンバーも変わる。他の社員とは仕事の会話や指示だけの関係となり、職場のコミュニケーションや人間関係が希薄になる。仲間意識も薄くお互いに関係をもたないので、A資本にとって都合がいい存在となる。
今回の件でA資本は味を占め、派遣スタッフの比率を上げる可能性もあり、注意が必要だ。また、私とは勤務時間帯が異なる仲間数人が、店長の納得いかない指示で退職してしまったことを残念に思う。
職場で連携して働き、苦楽を共にする労働者は、不満や怒りを一人で抱え込まず多くの仲間に相談し、仕事を辞めずに仲間と団結し、集団で交渉することが大事だ。団結してこそ、労働者の力は発揮できるものだからだ。