日本労働党中央委員会宣伝局 大嶋和広
第51回衆議院総選挙が2月8日に投開票された。
自民党は、単独で全議席の3分の2を超える316議席を得た。自民・維新の与党は、合わせて全体の4分の3を超える352議席。
対して、野党は全体で109議席と半減した。中道改革連合が49議席と解散時の3分の1以下に激減する大敗を喫したのをはじめ、共産党、れいわ新選組、減税日本・ゆうこく連合は後退した。保守党、社民党は議席を獲得できなかった。国民民主党は1議席増、参政党は13議席増だったが、昨年の参院選時の勢いはなく、比例得票数も減らした。チームみらいは衆議院で初の議席を得、11議席と躍進した。
今回の総選挙は、わが国が「失われた30年」から脱却できず、国民多数の貧困化と格差拡大、大災害頻発など環境破壊が進み、しかも中国の台頭と強国化、他方で米国の衰退など、わが国の方向性が問われる中で行われた。
国会の力関係が激変するなか、支配層・マスメディアは「高市旋風」などと宣伝して闘う人々の意思をくじこうとしている。選挙、とりわけ小選挙区制の投票結果は、有権者の意思をほとんど正確に反映しない。そうであっても、選挙の結果をどう見るかも政治闘争の一環である。支配層の宣伝を打ち破り、選挙結果に表れた有権者の「ささやき」に耳を傾け、その「願い」を読み取って闘いを進め、力関係を変えなければならない。
高市政権は信任を得てはいない
今回の投票率は56.25%で、戦後5番目の低さであった。前回比で2ポイント余上昇したとはいえ、全有権者の半数近くが投票所に足を運んでいない。1億351万7115人の有権者中、約4500万人が棄権した。
マスコミは「自民党大勝」と宣伝しているが、棄権した有権者の意思はどうなのか。少なくとも自民党、高市政権を積極的に支持してはいない。それでも「大勝」なのか。
しかも、自民党の絶対得票率(比例)は20.37%で、有権者の「5人に1人」しか支持していない。この事実に基づくなら「辛勝」と言うべきだ。
「自民党大勝」の小泉郵政選挙(2005年)時でも絶対得票率は25.1%で、今回はそこから約5ポイントも低い。鳩山政権成立の総選挙(2009年)では、民主党への支持は比例で29%近かった。
有権者の2割の支持にもかかわらず、自民党が得た議席数は全体の3分の2超、小選挙区に限れば86%以上。このすさまじい乖離(かいり)こそが選挙、とりわけ小選挙区制の選挙の特徴だ。当選者以外に投じられた、いわゆる「死票」は2735万票で、総得票数の48%、約半数にのぼった。
高市首相は「信任をいただいた」などと述べたが、それには程遠い実態である。「高市旋風」はデタラメで、支配層による思想攻撃にほかならない。
「高市旋風」はマスコミの虚像
マスメディアは、高市政権に最大限に協力した。
政権成立直後から、日米首脳会談でのトランプ大統領との大はしゃぎなどのパフォーマンスを大々的に報じることで、高支持率に「貢献」した。
解散直後は「自民が過半数」、選挙戦が進むにつれて「絶対安定多数」などと報道し、高市自民党への支持が次第に「広がっている」かのような印象をつくり出した。
お手盛りの世論調査で「勝ち馬」評をあおり、バンドワゴン効果(支持を集めている選択肢に、人々がさらに同調する心理現象)をつくった。マスコミが選挙予測を繰り返すことが、自民党の議席数を増加させた。
こうした姿勢は今回に始まったことではないが、事実上の情報操作と言わずに、何というのか。
「高市旋風」なるものは、マスメディアによる反動的創作である。
トランプ政権による不当な干渉
きわめつきは、米国による露骨な内政干渉である。トランプ大統領は投票日直前、高市首相を「完全かつ全面的に支持する」と表明した。選挙直後にも、「圧倒的な勝利を心から祝福する」と祝意を送った。
トランプ政権の狙いは、わが国を対中国戦略に引き込んで矢面に立たせ、多額の自国製兵器を買わせること、遅れている5500億ドル(約86兆円)規模の対米投資の実行を迫って「成果」とし、自らの政権基盤強化に貢献させることである。
徹頭徹尾の「米国第一」だが、日本国内の親米売国勢力を大いに激励したし、投票先を決めかねていた無党派層の一部への「最後の一押し」となったのではないか。
鈴木・自民党幹事長でさえ「好ましいことであるとは言えない」とコメントしたのに対し、高市首相は「温かいお言葉に心から感謝いたします」と、内政干渉を容認した。
トランプ大統領の態度は、断じて許しがたい内政干渉である。高市首相の売国ぶりもきわまっている。まさに「公正な選挙」どころではない。
無党派層の受け皿になった自民、みらい
石破政権当時の2024年総選挙では、無党派層の25%以上が立憲に投票した。昨年の参議院選挙では、それぞれ13〜15%が国民民主党や参政党を支持した。これらの党は、「受け皿」となって議席を増やしている。
有権者は、対米従属政治の自民党から離れ、政治の打開を求めて流動化を強めている。
今回は、約25%が自民党を支持したと報じられており、都市部を中心とする無党派層は対抗軸を示せない野党ではなく高市自民党にひきつけられた。
「日本列島を、強く豊かに」「責任ある積極財政」といった自民党のスローガンは、わが国を「自立」に導き、国民生活を改善させるかのように映ったのであろう。「女性初の総理・総裁」という事実も、「古い政治」と闘うかのようなイメージを与えた可能性がある。
昨年10月の高市政権発足以降の円安・債券安・株価上昇という「高市トレード」を見れば、とくに金融独占と都市部を中心とする一部資産家、さらに労働者上層の一部が、この政権を支持し期待していると言える。
また、チームみらいが一気に11議席を獲得した。「デジタル技術を生かした国家経営」を掲げ、他の野党が競った「消費税減税」ではなく「社会保険料の引き下げ」で特色を打ち出した。東京ブロックで自民、中道に次ぐ得票を得たのをはじめ、都市部の高学歴の若者・現役世代を中心に支持を広げた。30歳代以下では、候補を擁立した8ブロックで中道を上回り、女性の支持も比較的多かった。
自民党、みらいとも多分に「イメージ先行」ではあれ、政治の変化を求める有権者に、何らかの形で「刺さる」ものであった。
対抗軸を示せなかった野党
野党は高市政権に対する政治的対抗軸を提示し、争ったのか。
苦境の高市政権を追い詰められず、有権者の願いに応えられなかった野党の弱さ、主導性のなさこそが決定的である。
野党は政策的にはいずれも「日米基軸」の枠内で、中国敵視に迎合した。
中でも、立憲民主党と公明党が合流した中道改革連合は、安保法制、軍備増強、対中国外交など、国の命運にかかわる問題で高市政権と大差なく、対抗軸を示せなかった。加えて、「高市退陣」「政権交代」さえ言わなかった。名護市辺野古への新基地建設と闘う沖縄県民が大いに失望しただけではない。中道は、政治の転換を求める広範な有権者を裏切ったのである。
野党は、高市自民党ほどにも「変える」ことを印象付けられなかった。中道が典型だが、国民など他の野党にも、程度の差はあれ共通することではないか。
振り返れば、2009年に政権交代した旧民主党、その後の立憲民主党、「野党共闘」に望みを託した社民党や共産党も、自民党への包括的な対抗軸を打ち立てられなかった。闘う勢力には真剣な総括が求められている。
選挙戦術にも問題
自民党が今回以上の2588万票を得た2005年の総選挙でさえ、獲得議席数は296であった。それから約400万票、絶対得票率で約5ポイントも低い今回は316議席を得た。これは、野党の選挙戦術の失敗である。
小選挙区制度が前提となる選挙制度下において自民党に勝利するには、野党間の候補者調整が必須となる。だが、多党化が進むなかで野党票は以前にも増して分散した。
前回、立憲と国民の小選挙区での競合は14選挙区だったが、今回は46にも及んだ。両党間の調整ができていれば、15選挙区で自民党に勝利できたという試算もある。共産党は小選挙区候補者を158人擁立した。参政党も182人を擁立した。
本来、候補者調整の大きな責任は、野党第一党である旧立憲執行部にあった。だが、彼らは指導力も戦略もなく、候補の乱立を許し、結果的に高市自民党を利した。挙げ句の果てに、新党での生き残りを策しての大敗である。
高市政権の基盤は弱い
高市政権はさらなる中国敵視、軍備増強、安保3文書の改定前倒しなど、「国論を二分する」政策を強めるだろう。非核三原則の「撤廃」、スパイ防止法、さらに憲法9条改悪を日程にのせる可能性も高い。
国会内の勢力地図がどうなろうと、政権を取り巻く危機的環境は変わらない。資本主義の危機、世界の構造変化に加え、円安・物価高を抑えるのは困難で、国民生活の再生は急務となっている。アジアの緊張を高め、国民負担増を招く軍備拡大は、内外の反発が避けがたい。食料自給や再生可能エネルギーの充実も課題である。
米国からの投資要求の実行も、容易ではない。国民大多数だけでなく、対中国関係の安定化を望む財界や業界団体などの要請に応えられるかどうか。高市首相の「外為特会」発言に対するみずほ銀行の反応に見られるように、財界は金利上昇による日本発の金融危機に警戒を強めている。
高市政権は「勝利」したが、文字通り難問山積である。
政権の「化けの皮」は、早晩はがれる。
闘う勢力は、この弱さを見抜いて闘いに備えなければならない。
支配層による思想攻撃に惑わされず、国民生活再生のための闘いを基礎に、わが国の独立・自主、中国をはじめアジアの共生を実現する政権を目指そう。わが党は労働運動を中心とする国民運動を発展させ、政治の転換のために奮闘する。