社説

米軍の性犯罪と政府の隠ぺい許すな

 またも、米軍人による女性への性的暴行が明らかになった。

 昨年12月、米空軍兵が公園で女性を誘拐し、自宅で暴行した。卑劣な犯罪で絶対に許すことはできない。わが党は、徹底した捜査、犯人の身柄引き渡しと厳罰を要求する。

 あろうことか、事件は6月末、地元マスコミの報道でようやく判明した。米軍、外務省、防衛省、警察庁、要するに政府はぐるになって米軍犯罪を隠ぺいし、県や市町村、国民・県民に伝えていなかった。

 沖縄県によると、2021年4月以降、米軍犯罪に関して沖縄防衛局と県警からの情報提供はないという。23年以降に発生した5件の犯罪も、逮捕や起訴後もまったく公表されていないことが分かった。

 青森、神奈川、山口、長崎各県でも、米兵による性犯罪などの凶悪犯罪が数年にわたって発表されず、各自治体への通報もなかったことが判明した。

 外務省、沖縄県警・警察庁は、00年以降、凶悪事件を犯した容疑者の身柄引き渡しさえ求めていない。今回も同様である。

 米軍犯罪の組織的隠ぺいは少なくとも、3年以上も続いてきた。

 これは、事件の「速やかな通報」(1997年の日米合意)や、起訴前の身柄引き渡しへの「好意的配慮」(2004年日米合同委員会の確認)にさえ反している。

 しかも、12月に犯罪を引き起こした米兵は、現在、身柄勾留さえされていない。米軍は、従来、凶悪犯罪発生時に形式的とはいえ行っていた「外出禁止措置」さえとっていない。容疑者は「無実」を主張し、被害者女性と家族の尊厳を傷つけ、苦しめている。

 在日米軍司令部は、日本政府と共に住民を含む「フォーラム」をつくると表明した。だが、犯罪の糾明と隠ぺいが続いたことの検証抜きの新組織は欺まんである。

 エマニュエル大使は「遺憾」と述べるのみで、謝罪すらしていない。沖縄を軍事植民地扱いする、帝国主義者の本性が表れている。

 米軍に「好き放題」にさせるわが国政府は、国民を守れぬだけでなく、主権国家としての捜査権や裁判権すら放棄している。

 犯人起訴後の4月に行われた日米首脳会談で、岸田首相は事件について抗議どころか、議題にさえしなかった。

 岸田首相は訪米の際の議会演説で、中国に対抗して日米同盟をさらに強化することを誓った。性犯罪を取り締まらず隠ぺいしておきながら、「自由と民主主義、法の支配」を掲げるとは笑止千万で、怒りなしに聞くことはできない。

 日本政府の主権放棄はきわまり、独立国とは到底言えない。国民の生命、財産を米国に捧げ、尊厳さえも踏みにじらせる「売国政府」にほかならない。

 沖縄県議会は7月10日、女性暴行抗議決議と政府への意見書を全会一致で可決した。

 意見書は、①被害者への謝罪及び完全な補償、②被害者への精神的ケア、セカンドレイプ(性的2次被害)の防止を徹底、③米軍による犯罪事案について、被害者のプライバシーを守ることを第一としつつ、沖縄県及び関係市町村への迅速な通報ができるよう、日米合同委員会を通じ調整を行い、断固たる措置を取る、④米軍を特権的に扱う日米地位協定の抜本改定、特に身柄引き渡し条項の早急な改定を求めている。

 いずれも、当然の要求である。政府は誠実に履行しなければならない。

 沖縄県民、とりわけ女性は長年、米軍の蛮行に傷つけられてきた。

 由美子ちゃん事件(1956年)など米軍施政下は言うまでもなく、被害は72年の「返還」後も変わっていない。少女暴行事件(95年)のような、おぞましくも痛ましい事件が続いた。生後9カ月の乳児が殺された事件もある。

 2016年にはうるま市で強姦(ごうかん)殺人事件が発生、20歳の女性が殺害・遺棄された。犯人は「彼女の運が悪かった」などと供述し、被害者を冒涜(ぼうとく)している。

 これらの事件は「氷山の一角」である。

 事件のたびの米軍の「綱紀粛正」は形ばかりのものである。県内紙「琉球新報」が「米軍撤退を」(6月26日付社説)と掲げたように、米軍基地がある限り事件・事故はやむことはない。日米地位協定は、米軍基地のあるどの国よりも不平等で劣悪な内容である。

 沖縄県民は、昨年11月に「沖縄を戦場にさせない県民の会」が主催した県民大会を成功させるなど、闘いを前進させている。うるま市では、保守層を含む闘いで自衛隊訓練場計画を「白紙撤回」させた。玉城デニー県政は、アジアの平和を目指す「地域外交」を積極的に推進し、中国との友好関係を強化している。

 米日両政府は、沖縄県民の闘いがさらに高揚し、日本全国で闘いが発展することを警戒している。対中国のアジア戦略が揺さぶられることを恐れている。

 沖縄県民の怒りを共有し、全国で、女性への性暴力事件に抗議しよう。米国・米軍に抗議をたたきつけ、売国政府を徹底的に追い詰めよう。

-社説
-, , ,