社説

米日の「台湾有事」、戦争策動に反対する 中国・グローバルサウスとの連携、自立外交への転換を

 岸田政権はその3年間で対中国戦争の道に大きく踏み込み、諸物価高騰のなかで格差と貧困を拡大させた。国民が政府・自民党に不満と怒りを高めたのは当然で、岸田首相は政権「投げ出し」に追い込まれた。当面する政局は、自民党総裁選、野党第一党・立憲民主党の代表選で、その後は解散・総選挙が予想されている。

 わが党は、次のように主張する。

 本来、自民党政治の命脈は、政策的にも、支持基盤が崩れていることからもほぼ完全に尽きている。総裁選は選挙に有利な党の「顔選び」で、マスコミもこぞって「刷新」を演出する茶番劇である。

 内外の危機のなかで日本が直面する課題は深刻で、安全保障・外交でも、国民生活の危機を打開する点でも、国家財政を中心とする内政問題でも、政治の根本的転換が求められているのである。

 最大の政治的争点は、いかに東アジアでの戦争の危機を回避するか、大国となった隣国・中国とどのように付き合うのかである。なかでも、台湾問題への対応である。

 侵略と植民地支配という歴史問題をないがしろにし、「中国脅威」の世論だけがつくられるなか、国会内、政党間でのまともな論戦はほとんどない。

 ウクライナなどで戦争が続き、グローバルサウスが台頭し、当面する米大統領選挙の結果次第で激変があり得る世界情勢下、日本はますます揺さぶられている。国民各層はこれへの対応が迫られ、政治は流動化するだろう。

 わが党は戦争を阻止するため、広範な国民世論と運動を発展させ、自主・独立の政権を目指す。中国はじめグローバルサウスと連携する方向に、わが国のカジを切り替えるべきである。

わが国が抱える危機、困難

 こんにち、米国はウクライナ、パレスチナなどで紛争をあおり、戦争は泥沼化してあまたの命が失われている。さらに、米国は東アジアで「台湾有事」をあおっている。

 世界資本主義の危機はますます深い。世界は歴史的変動期にあり、米国を中心とする帝国主義は衰退を早め、抑圧されてきたグローバルサウス諸国が力を付けている。

 とりわけ中国の台頭は著しい。購買力平価ベース国内総生産(GDP)で世界一の経済力となり、電気自動車(EV)や人工知能(AI)など科学技術面での発展も著しい。パレスチナ各派による「北京宣言」を仲介するなど、国際政治でも大きな役割を果たしている。

 他方、わが国は国内総生産や科学技術などで凋落(ちょうらく)し、国際的存在感は低下の一途である。政府累積債務は、先進国中、最悪である。

 勤労国民の生活と営業は、一段と苦境にあえいでいる。物価上昇は止まらず、労働者の実質賃金は2年以上にわたって下がり続けている。貧困化と格差拡大が急速に進んでいる。

 能登半島をはじめとする被災地住民は、事実上の棄民政策で打ち捨てられている。地方、とくに第一次産業は存亡の淵にある。

 自民党は現実を直視しようとせず、時代錯誤の対米従属政治にしがみつき、その下で「アジアの大国」となることを夢想している。立憲民主党など議会内野党の多くも、日米同盟の枠内で「思考停止」状態にある。

 わが国の平和と繁栄を実現し、国民生活を再生するには、対米従属政治で多国籍大企業のための政治を転換して、中国・グローバルサウスと結びつく国民大多数のための政治を実現する以外にない。

台湾問題への態度は重大な争点

 中国との関係、とくに台湾問題にどのような態度をとるのかは、わが国政治の重要な争点である。

 米国は中国を抑え込もうと、台湾問題を最大の焦点として利用している。日本を「対中国」で軍事的に前面に立たせ、争わせ、自らは「漁夫の利」を得ようとしている。

 従来、米国は「一つの中国」という中国の立場を「認識」し、台湾の「防衛義務」は約束しないが、国内法(台湾関係法)で台湾を支援し続けるという「あいまい戦略」を維持してきた。

 だが、トランプ前政権以降、台湾関係法に基づく軍事支援を倍増させただけでなく、台湾旅行法(2018年)、台湾保証法(20年)などの国内法を相次いで制定によって、台湾の「国際的地位」向上を画策している。

 これを引き継いだバイデン政権は、21年の「国家安全保障戦略指針」で台湾を「死活的パートナー」と明記した。バイデンは「台湾防衛」を4回も明言、ペロシ下院議長による高官訪問などで台湾を「独立国」と同様に扱っている。
 これらは、「あいまい戦略」の事実上の転換である。

国内法での台湾支援狙う

 わが国政府も、菅前政権時の21年、日米首脳会談で、「台湾の平和と安定」を明記することで中国の内政に干渉する方向に踏み込んだ。

 岸田政権はこれを引き継ぎ、米核兵器による「拡大抑止」に頼りつつ、中国への軍事的対抗を強化している。「安保3文書」改定、南西諸島における軍事力強化、全国での弾薬庫増強、統合作戦司令部創設、排外主義の扇動など、対中国戦争準備を急速に進めた。

 米戦略に追随し、日本が「台湾防衛」で前面に立つことを宣言したものが、中国と「戦う覚悟」を明言した麻生・自民党副総裁による発言である。

 次期政権では、米国同様、国内法によって台湾当局を露骨に支援する策動が強まるだろう。安倍元首相や麻生副総裁はすでに「前向き」の態度を示していたと報じられている。

 高市・経済安保担当相が「台湾を守るため国家として取り組む必要がある」と述べているのは、これらを意識した発言であろう。最近、一部マスコミは総裁選候補の一人に対し、法整備の必要性を執拗(しつよう)に迫ってもいる。

 すでにわが国支配層の一部で、一定の合意が形成されつつあると見ることができる。

 これは台湾が中国の一部であるという「一つの中国」の立場、1972年の国交正常化時の「日中共同声明」を事実上、投げ捨てるものである。中国との再度の戦争につながる、亡国の道である。

 この道を許すのか、すべての政治勢力がその態度を深刻に問われている。

世論と行動発展させ、独立・自主の政権を

 中国が、わが国と深い経済的結び付きを持つ隣国であることは、言うまでもない。中国はわが国最大の貿易相手国の一つであり、直接投資残高でも第3位である。米国主導のデカップリング(分断)への追随は、こうした中国との経済関係を失いかねない。

 まして、戦争は民族を存亡の危機に立たせる。

 頼清徳「総統」就任式への参加で台湾を訪問した国会議員の中にさえ、中国を挑発することに躊躇(ちゅうちょ)する意見があると報じられている。当然であろう。

 自民党総裁選はいわば「コップの中の嵐」だが、支配層の中にも、対中国関係をめぐる矛盾が深まるのは当然である。

 先述した台湾支援の国内法制定に関し、追及された議員は賛同しなかった。

 経済同友会のグローバル化推進委員会は、中国ミッションを3月に派遣した。その報告書は、「経営者が自ら中国を訪れ、自分の目で経済社会の実態を見て、中国のカウンターパートと率直に対話し、自らの中国観を鍛えることが重要である」と結ばれている。

 これらの態度には賛同できる。海江田・衆議院副議長や森山・自民党総務会長らが相次いで中国を訪れ、日中友好議員連盟が訪中したのも、同様の問題意識と併せ、現状への危機感が反映しているのであろう。

 わが党は、中国との平和外交を目指すあらゆる取り組みを支持する。活発な友好交流、とくに青年・学生間での日中交流はその重要性を増している。

 こんにち、政府の外交政策に抗するさまざまな動きが広がっている。

 長崎市は、平和記念式典にパレスチナ・ガザで大虐殺を行うイスラエルを招待しなかった。長崎市は世界のすう勢に沿い、イスラエルを非難するグローバルサウス諸国と同様の態度を示した。結果的に、虐殺を擁護して式典を欠席した米欧の帝国主義的正体をあらわにさせた。

 全国20以上の大学、さらに地域で、青年・学生を中心とするパレスチナ連帯運動が闘われ、イスラエルを招待しなかった長崎市への支持が広がっている。

 沖縄県では女性への性暴行事件に対する抗議が広がっている。

 沖縄県与那国町では、住民有志の会が「日中政府間基本4文書に深く学び」「平和的手段で解決」を求める声明を発表した。
 こうした世論と大衆行動を連携・発展させ、「中国と戦争をさせない」ための力を強化しよう。
 その最大の保証となる、独立・自主で国民大多数のための政権を目指さなければならない。

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