社説

第2次石破政権成立、自民党政治は命脈尽きた 独立・自主で国民大多数のための政権樹立を 「日中戦争回避」は緊急・最大の国民的課題

 第2次石破政権が11月11日、少数与党として発足した。政局はきわめて不安定化し、流動化している。

 第50回衆議院選挙での自民党大敗が意味するのは、本質的には「保守合同」以降の自民党による対米従属で独占企業のための政治への不信任である。それだけでなく、議会政治における支配、すなわち「票」のために中小自営業者や農民にも「配慮」してきた、いわば「利益分配型政治」の破綻を経て、1990年代以降の中間野党を連立に抱き込む「策略型政治」による支配も限界に達したことを意味する。

 それは、労働者をはじめとする国民諸階層が貧困・格差に耐えられなくなったこと、加えて30年以上もわが国経済が沈滞し、国際的地位が急速に下落していることである。歴代自公政権は国民の苦しみを顧みず、一握りの多国籍大企業、資産家に奉仕してきた。

 しかも、議会内野党は自民党政治への対抗軸を示せていない。彼らは「民の竈(かまど)」に共感する心を失い、またわが国の進路を切り開く覚悟と構想を持てなかった。野党第一党・立憲民主党が政治的対抗軸を立てられず、与党批判の「受け皿」になれなかったことは当然である。

 世界資本主義が末期となるなか、米帝国主義を中心とするG7諸国は劣勢に追い込まれている。収奪・搾取・抑圧されてきたグローバルサウスは帝国主義との闘いを強め、中国はその後ろ盾となっている。世界はまさに歴史的転換期にある。世界の労働者人民は、闘いを余儀なくされている。

 こうした国際政治の激変が、対米従属政治を続けるわが国に襲いかかっている。国内の階級闘争も一層激化するであろう。

 石破自公政権は、こうした内外の難題に直面し、打開しようとあがくだろう。

 議会政治はいっそう不安定化し、大衆の怒りは直接行動を含むさまざまな形で沸き起こることが避けがたい。政治の根本的な変革なしに、内外の危機は打開できない。国民は、その方向を求めている。

 独立・自主で国民大多数のための政権樹立こそ、打開の道である。

 わが党は当面、中国との戦争を避ける闘いに最大限の努力を行う。財界、石破政権内部にさえ、対米・対中関係をめぐり動揺がある。広範な戦線を形成する条件は、客観的に広がっている。

 各界の人びとに共同の闘いを呼びかける。

総選挙、既存の政治・政党への強烈な不満が噴出

 自民党は56議席減の191議席と、戦後史的惨敗を喫した。

 比例得票数は前回比で約533万票、26・8%も減った。最も得票数が多かった1990年・約3000万票の半分以下への減少である。絶対得票率は史上最低の14%で、自民党を支持する有権者は7人に1人もいない。

 公明党も後退し、自公与党は過半数の233を大きく割った。自公与党は厳しい審判を受けた。

 他方、野党第一党の立憲民主党は批判の受け皿になれなかった。148議席を得たが、比例得票数は前回から約7・2万票、0・63%しか増えていない。立民が支持を集めたからではなく、自民党への支持が減ったことで相対的に浮上し、議席が増えたのである。

 与党「補完勢力」の日本維新の会も厳しい審判を受け、前回から約294万も支持を失った。

 共産党も約80万票を減らして約335万票に終わった。

 これらの党には、深刻で歴史的・本質的総括が問われている。

 一方、国民民主党とれいわ新選組は、部分的なものではあれ、一定の社会層をターゲットに生活を改善させるための政策を打ち出し、SNSなどを駆使して効果的な宣伝を行った。

 また、右翼政党の日本保守党、参政党は、排外主義的な「国家像」を一定提起した。これらは、危機的情勢に「応えた」ものと映り、ナショナリズムをくすぐるものでもあった。

 今回の投票率は53・85%(小選挙区)で、半数の有権者が投票所に足を運ばなかった。これらの与野党と、その政治に期待できなないからである。

世界の大転換、わが国の抱える課題

 こんにち、日本を取り巻く世界資本主義は、貧困化ゆえの需要不足で、経済の金融化、軍事化が進行している。リーマン・ショック以降の危機から完全には立ち直れず、コロナ禍を通じて、世界の官民債務は空前の規模となっている。各国内の階級矛盾はさまざまな形で激化し、欧州では極右政党が台頭、米国ではトランプ政権が再び誕生した。

 ウクライナ戦争は長期化し、イスラエルによるガザでのジェノサイド(大量虐殺)はやまず、イランに対する攻撃など戦乱は広がるばかりである。地球温暖化など環境危機、食料危機などもあり、世界はまさに大動乱である。

 国際政治も激変する、歴史的転換期である。

 衰退する米国は、台頭する中国を抑え込んで覇権を維持しようとしている。トランプ政権の再登場は、危機を一段と加速・深刻化させるに違いない。

 こうしたなか、わが国は難問山積である。

 少子高齢化、農林水産業の衰退、地方の荒廃、自然災害の多発、気候変動危機、資源・エネルギー危機、食料危機などである。科学技術面でも立ち遅れている。わが国の国際的地位は急速に低下している。

 何よりも、国民生活の急速な貧困化は、緊急に解決すべき課題である。

 「失われた30年」などと言われ、労働者の実質賃金は下がり続けている。大企業は海外市場に利益を求めてリストラを進め、市場開放や規制緩和などで国内産業を棄損し、国民経済は衰退の一途である。本来「禁じ手」のアベノミクスで大企業・富裕層と中小零細企業や貧困層との格差を拡大・加速させ、円安・物価高で国民生活は徹底的に追い詰められている。

 米国の世界戦略に追随して中国に対抗し、「専守防衛」を旨とした戦後の安全保障政策も完全に転換させた。まさに亡国と戦争の道である。

 わが国が直面している危機は、資本主義の歴史的行き詰まりに加え、戦後とくに1985年の「プラザ合意」以降の、自民党とその亜流による売国政治の結果である。

 もはや「持続可能性」が問われる社会となった。根本的解決は、社会主義、共産主義社会の実現以外にはない。だがまず達成すべきは、わが国が置かれている特殊な状況から、国際関係の変化のなかで日米関係を清算し、日本が完全に独立し「アジアの一員」として生きる方向に大転換することである。

 それこそが、根本的解決に移行する条件をつくり出すことになる。

独立・自主で国民大多数のための政権こそ、国民の願いに応える道

 自民党政治は命脈尽きた。この好機を生かさなければならない。

 戦後続いてきた対米従属で多国籍大企業が牛耳る政治を根本的に転換するには、犠牲を強いられてきた国民諸階層の連合した闘いの発展が不可欠である。独立・自主で国民大多数のための新しい政治こそ打開の道で、そのための政権を樹立しなければならない。

 トランプ政権の再登場は、対米・対中関係をめぐり、財界、国会議員を含む諸階層に態度を迫り、分化を促すに違いない。

 石破政権の動きを注視しなければならない。この政権が、わが国の対米「自立」や日中戦争回避の国民運動の発展にプラスになるのか、逆に米戦略にさらに取り込まれるのかは、まずは政権自身の判断ではあるが、より本質的には、国民の自覚と運動の発展にかかっている。

 われわれは覚悟を決め、「支配層内部の矛盾」を利用して広範な戦線を目指して闘わなければならない。

 当面、中国との再度の戦争を避けるための国民運動と世論形成が、喫緊の課題である。求められるのは、もっとも幅広い国民的戦線である。

 中国と深く結びついた日本企業は数多い。日本経済は中国、東アジアのネットワークの中にある。互恵関係の確立こそ、わが国がとるべき進路である。

 最近、新浪・経済同友会代表幹事が訪中し、「(日中は)より深く、友好関係、交流を深めるべく邁進(まいしん)したい」と発言した。柳井・ファーストリテイリング会長なども同様の発言を行っている。賛成である。多くの財界人が日中関係の安定化のために声を上げることを望む。

 野党はもちろん、自公与党にも、石破政権内部にも対中関係の打開を願う人びとが多い。

 広い戦線をつくって闘う条件は、客観的に広がっている。

 平和を望むすべての国民が、「日中戦争回避」のために立ち上がることを呼びかける。重要なのは、この闘いを、深刻化する国民生活を打開する課題と結びつけて闘うことである。

 こんにち、玉城デニー知事を先頭とする沖縄県民は「子供の貧困」など生活苦と闘いながら、「中国との平和外交」を掲げた新たな県民運動を前進させつつある。沖縄県民を孤立させない、全国での闘いが求められている。各地で始まっている「対中国戦争のための基地機能強化」に対する闘いの連携を強め、発展させなければならない。

 売国農政に苦しめられ、存亡の危機にある農業の再生と農業者の経営再建、さらに「令和のコメ騒動」と言われる価格高騰で示された、食料自給率の大幅向上と農政確立のための闘いも重要である。

 パレスチナ問題や地球環境問題をはじめ、平和を求めて行動する青年・学生は重要な勢力である。

 最大の社会的勢力である労働運動の役割は決定的である。中国敵視の世論操作に惑わされず、国民運動の先頭での奮闘を期待する。「生活できる賃金」を求めて闘うことと結びつけて闘おう。

 わが党は、当面する「日中戦争回避」、さらに独立・自主で国民大多数のための政治を目指して奮闘する。共同の闘いを呼びかける。

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