石垣市の陸上自衛隊配備を巡る住民投票が6年間実施されないことに対し、「石垣市住民投票を求める会」代表の金城龍太郎さんら3人が原告となって起こした地位確認訴訟(投票できる地位にあることを確認する住民訴訟)は一審、二審とも訴えが棄却され、最高裁に上告された。
「求める会」は9月6日、最高裁に上告を受理し弁論を開くよう要請し、上告受理を求める署名2万4157筆も提出した。
要請行動後、「求める会」は国会内で集会を開いた。支援者ら約100人が駆け付けた。
中山義隆・石垣市長は2015年、陸上自衛隊の受け入れを表明。市の自治基本条例(09年制定)には、有権者の4分の1以上の署名で代表者から市長に住民投票の実施を請求できるとする規定があったため、「求める会」が18年10月末、計画の賛否を住民投票で問うよう求める署名を開始。約1カ月で有権者の3分の1を超える署名を集め中山市長に住民投票条例の制定を請求したが、19年2月、市議会は条例案を否決した。これに対し「求める会」は19年9月、市に住民投票の実施義務付けを請求する訴えを那覇地裁に起こしたが、23年5月、請求は棄却された。これは提訴後の21年6月、市議会が住民投票の実施規定を削除したことを理由としたもので、「不遡及(そきゅう)の原則」に反する不当判決である。「求める会」は直ちに控訴したが、福岡高裁那覇支部も訴えを退け、上告するに至った。23年3月、住民投票は実施されないまま陸自石垣駐屯地が開設された。
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集会冒頭、金城さんは「最高裁前でビラ配りをしたが、途中で風向きが変わった。私たちもずっと声を上げ、帆を張ったから皆さんの支援を感じられた。東京に来ると、追い風が吹いている感じもした」と話し、共感の笑いを誘った。
次に、最高裁への要請内容が報告された。以下はその要約。
正しい方法で住民投票を請求したにもかかわらず実施を怠った石垣市長と市議会、救済を求めた義務付け訴訟で門前払いの判決を下した司法、さらに住民投票の規定を廃止し市民の声を届けるのが困難な状況にした市議会と市政運営、これらの状況は住民投票の枠を超え、石垣市の民主主義のあり方、ひいては全国の地方自治をも脅かす問題だ。
住民投票がいまだに実施されていないことが次世代を担う中学生や高校生などに政治への不信感を抱かせており、怒りに近い感情を抱いている。石垣市民は自らの意見を表明する機会を奪われた。この裁判を通して、少しでも明るい未来を見せることが私たちの責任だ。一審は不遡及の原則を破る判決、二審の地方自治、住民自治の考えを根底から覆す判決内容は、誰の目にも明らかな間違いで、最高裁にはこのことを重く受け止めてほしい。
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弁護団長の大井琢弁護士は「現状は市が法解釈をねじ曲げ、市民の権利を侵害している。最高裁がこれを認めてしまえば、法治国家とは言えなくなる。地方自治の問題にとどまらない」と強調した。
最高裁に同行した名古屋学院大学の飯島滋明教授は「地方自治の理念と実体」と題して講演。馬毛島基地反対住民訴訟団の塚本和也弁護士と村瀬はるか弁護士も「馬毛島の状況と裁判について」報告した。
最後に登壇した原告は、「石垣島への自衛隊配備は政府が進める南西シフトの一環であり、私たちだけで抱えきれるものではない」と訴える一方、「約6年の活動で全国から支援の広がりを実感していて、まだ希望を持っている」と述べた。