社説

日台海保の合同訓練に反対する

 日本の海上保安庁と台湾海巡署(海保)は7月18日、千葉・房総半島沖と伊豆大島沖で合同訓練を行った。日台の合同訓練は、1972年の断交後初めてである。海上保安庁幹部は先月、台湾を訪問し、張忠龍・海巡署長と懇談している。林官房長官は「日台間の協力のさらなる深化を図る」と語った。

 合同演習は、72年の「日中共同声明」以来の日中間の約束に反するもので、断じて許されない。

 日中共同声明によって、わが国は、中華人民共和国を「唯一の合法政府」と認め、台湾は「中国の一部」であるとして蒋介石当局と断交した。

 わが国は、台湾を国家として認めないことを約束したのである。その行政組織もまた「政府機関」とは認めず、台湾との関係は、民間の経済関係などに限るものとなった。台湾が「中国の一部」である以上、台湾問題は中国の内政問題であり、中央政府の了解なしに何らの関係を持たないことは当然である。

 だが、海上保安庁と海巡署は、れっきとした国家機関の一部である。どんな理由をつけようが、「政府機関」間の共同にほかならない。

 台湾当局は「人道主義の観点」を理由にしたが、欺まんである。「人道」を口実に、台湾は「独立国」のように振る舞い、岸田政権はそれを容認している。日中共同声明への明白な違反である。中国が「強烈な不満と断固とした反対」を表明したのは、当然である。

 5月には、頼清徳「総統」就任式に、31人の衆参国会議員が参加した。国会議員という「国権の最高機関」の一員が「政府機関」の公式行事に参加したのである。これも、共同声明を踏みにじるものにほかならない。

 岸田政権と与野党は、台湾を「独立国」として認めてはならない。頼清徳当局による「独立志向」を支持・激励する、あらゆる策動を中止しなければならない。

 合同訓練は、「対中国」での連携強化の一部でもある。

 菅政権以降、わが国政府は米戦略への追随を深め、台頭する中国を「戦略的な競争相手」として対峙(たいじ)し、争う道を明確にさせた。

 この下で、岸田政権は日米軍事一体化を強め、南西諸島へのミサイル配備や全国的な弾薬庫建設などの大軍拡、世界を股にかけた「対中国包囲網」の構築へと突き進んでいる。対中戦争準備が急速に進んでいる。

 政府やマスコミは、沖縄県・尖閣諸島周辺への中国海警局船の「侵入」を口実に、合同演習を正当化している。だが、尖閣諸島をめぐっては、2014年に日中間で「対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐ」ことで合意している。それを守ることが肝要で、緊張を高める日台合同演習はこの合意にも反している。

 先月、台湾巡視船は米ハワイに寄港している。海上保安庁、米国沿岸警備隊、韓国海洋警察庁は6月、日本海で初の合同訓練を行った。日台合同訓練は、海保を突破口に、米国主導の「対中国軍事包囲網」を強化する一環である。

 この先にあるのは、台湾を含む、米日韓などによる共同軍事体制の強化である。米国と台湾の海軍は4月、すでに西太平洋で合同軍事演習を行っている。

 アジアの緊張を激化させ、再度の日中戦争に導きかねない策動を、絶対に許してはならない。

 米中戦争、日中戦争を「させない」状況をつくることが、国民各層に求められている。

 日清戦争以降のわが国による中国侵略と植民地支配の歴史の事実を理解することと併せ、日中共同声明締結の原点に立ち戻り、共同声明や日中平和友好条約など「4つの政治文書」の立場を守ることが肝要である。

 また、政府やマスコミが振りまく「中国脅威論」を、事実に基づいて検証・暴露しなければならない。

 中国人民との交流を積極的に進め、相互理解を深めることも重要である。とくに青年・学生間の交流を強めることが求められる。
 これらは、対米従属政治を打ち破る闘いと結びつけて推進されなければならない。

 こうしてこそ戦争を押しとどめ、中国を中心とするアジアの平和と共生を実現できる。

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