「日中戦争回避、国交正常化の原点に戻ろう」緊急集会が6月17日、東京・星陵会館において開催され、国会議員を含む各界の人びとが集まった。主催は「一つの中国」原則の堅持を求める緊急集会実行委員会。司会は松尾ゆり・杉並区議会議員が務めた。

冒頭のあいさつに立った鳩山由紀夫・元首相は、中国の内政問題である台湾問題で「独立」をそそのかす日米の危険な動きに異をとなえ、頼清徳・台湾「総統」の就任式での発言に対する捉え方が日中間で違うことに触れた。日中戦争にならないためには、日中国交正常化の原点に立ち返るべきだと明解に述べた。
問題提起として基調講演を行った孫崎享・東アジア共同体研究所長(元外務省情報局長)は、中国との間で日本の国益をどう調整するか、冷静で論理的な思考があまりにも欠けてしまっていると指摘。日中戦争の歴史を踏まえた1972年の日中共同声明、そこで確認した「一つの中国」原則という約束が極めて重要なものであることを述べた。そして世界の構造、日中間の関係が大きく変わったもとで、「自分たちの国益を考え、どうしたら平和的にものごとが解決できるか、先人の知恵をしっかり守って、将来の発展の土台にしていかなけなければならない」と熱く語った。
孫崎氏の問題提起を受けて6人の国会議員が登壇し、政府との論戦の経過も踏まえて発言された。伊波洋一・参議院議員(沖縄の風)は「沖縄だけでなく、弾薬庫、ミサイル配備など全国で戦争準備が進んでいる。対中国貿易は対米よりはるかに大きく岸田路線は決して日本の利益にならない」、杉尾秀哉・参議院議員(立憲民主党)は「安保法制制定時から台湾有事が想定されていた。国会議員の訪中団を早期に出して日中関係のパイプを太くしたい」、原口一博・衆議院議員(立憲民主党)は「衰退する米国に付き従う必要はない。独立自尊、平和・善隣友好でアジアの繁栄を取り入れる日本にすべき」、川内博史・衆議院議員(立憲民主党)は「戦争の危機、物価高で国民生活のは困窮し混迷する状況。鹿児島でも戦争準備のカネが落ちている。新しい戦前という状況を変えなければならない」、大椿ゆうこ・参議院議員(社会民主党)は「1月に社民党の訪中団を出した。中国側は台湾有事を叫ぶ政治家、岸田政権に大きな懸念を抱いている。世界の中で日本が取り残されていることを政府は自覚しているのか」、高良鉄美・参議院議員(沖縄の風、沖縄社会大衆党)は、「沖縄の県民所得は復帰後ずっと最下位。南の玄関口にミサイル配備の要塞はいらない。グローバルサウスを見て外交をやるべきだ」などと発言した。また、山崎誠・衆議院議員(立憲民主党)、森山浩行・衆議院議員(立憲民主党)も会場に駆け付けた。
ついで、各界から羽場久美子・青山学院大学名誉教授、安河内賢弘・ものづくり産業労働組合(JAM)会長、野平晋作・ピースボート共同代表、棚田一論・日本青年団協議会事務局長の4氏が発言した。羽場氏は「東アジアで戦争が起これば強大なものになる。東アジアの戦争を止めるためには国連や日中韓、欧州が協力し結束していくべきだ」と問題提起。安河内氏は「労働組合がかつて戦争に協力したという反省の上で平和運動をやってきた」として、日中の経済関係は労働者の生活を守るためにも重要、労働組合としての日中交流をし相互理解を積極的に進めていきたい」と発言。野平氏は、世界各地での国際交流の経験を踏まえて、国際関係のリアルな問題や日本の閉鎖性について述べた。棚田氏は中国に対する加害責任の反省に立って日中青年交流を重視してきたことを紹介し、「外交に携わる政治家の役割が重要だ、青年の学びの場としてもこのような取り組みに協力していきたい」と発言した。
会場からは、日本労働党の大嶋和広・党中央委員が発言、続いてイスラエルのガザ攻撃・虐殺に抗議して立ち上がった「パレスチナキャンプ」に集う大学生2人が登壇し、支援・連帯を訴えた。
最後に本集会アピールが読み上げられ、参加者一同で確認した。
今回の集会は、岸田政権が日米軍事一体化と戦争準備を具体的に進め、台湾「独立」を画策する政治家の動きが強まるなかで、国会議員を含む各界の人びとが、日中戦争回避のため日中国交正常化の原点に戻ることの一点で集い、発言した画期的な集会となった。日中間の経済、文化を含む各界の民間交流、政治・政党交流を再開、発展させることも強調された。
孫崎氏が喝破したように、世界のすう勢と現実は岸田政権がいかに時代錯誤なのかを浮き彫りにしている。今回の集会を出発点に、沖縄県民はじめ岸田政権に抗して闘っている人びと、青年学生をはじめ労働運動、知識人など各層の人びと、そして議会内でも闘う人びとの運動と連携がさらに強まることが求められている。(N)
日中戦争回避、国交正常化の原点に戻ろう
「一つの中国」原則の堅持を求める緊急集会アピール
岸田首相は今年4月の「日米共同声明」で中国を「脅威」と決めつけ、日米軍事一体化で戦争準備を加速させています。
台湾「総統」就任式で頼氏は「台湾は独立主権国家」と主張し、「独立」をより鮮明にさせました。日本から過去最大の31人の国会議員が参列しました。エマニュエル米駐日大使は就任式直前に沖縄県の先島地方を訪問、「中国と一戦を交える覚悟」を唱えた糸数・与那国町長らを激励しています。
当然、中国は反発し、緊張が高まっています。
こんにち、世界は大きく変化しています。米欧が主導する世界から、中国・グローバルサウスと呼ばれる新興諸国・途上国が経済的に力をつけ、政治的発言力も増大させています。とりわけ中国の発展には目を見張るものがあります。ところが、岸田外交はこの動きに逆行しています。米国は自国の衰退を巻き返そうと必死です。
1972年の日中国交正常化と以降の関係進展は、東アジアと世界の状況を「戦争と敵対」から「平和と発展」へと劇的に変えました。
「日中共同声明」で日本は、侵略戦争と植民地支配の「責任を痛感し深く反省」するとともに、「台湾が中国の一部であるとする中国の立場を十分理解し、尊重」すると約束しました。この「一つの中国」の原則こそ、日中間の信頼と発展の礎です。日本はこれを守り、中国の内政である台湾問題に干渉してはなりません。
問題は、この日中関係をめぐって国会内外での議論がほとんど起きていないことです。台湾「独立」をあおる政治家、大手マスコミの危険な動きすら目立ちます。政治は何ら対応できていません。
私たちは日本政府に、日中国交正常化の原点に戻り、「一つの中国」原則を堅持し、日中関係を発展・強化する外交政策を求めます。
中国を敵視した抑止力強化一辺倒の危険な動き、日中戦争につながりかねない緊張を激化させる政策に反対します。敵基地攻撃ミサイルなどの軍備増強に反対し、「専守防衛」原則と憲法第9条を堅持し、平和国家路線を堅持しなければなりません。
「再び戦場にされる」危機の下、玉城デニー知事を先頭に、沖縄では中国との平和外交を進める県民運動が発展しています。全国でこれを支え、連帯しましょう。
中国との幅広い国民的な友好交流を発展させることが重要です。とくに未来を担う青年・学生間の交流と相互理解が不可欠です。自治体、経済界、労働界、知識人、市民など、皆で日中戦争への道を阻止し、平和と発展の東アジアのために力を尽くそうではありませんか。
私たちは今日を出発点に、日中戦争を回避するための努力を強めることを決意し、各界の皆さんに共同を呼びかけます。
2024年6月17日
日中戦争回避、国交正常化の原点に戻ろう
「一つの中国」原則の堅持を求める緊急集会 参加者一同