日中学生会議(第43期、山本英昴委員長)は8月24日、東京大学で成果報告会を開催した。
同会議は1987年以来、毎年、日中学生間の交流を行ってきた。今回は東京、広島、大阪、中国の蘇州、上海で行われた。日本は東大、早稲田大、慶應大、東京外大などから24人、中国では北京大、復旦大などから28人が参加した。
今期は「山川異域 風月同天〜良き隣人であるために〜」をスローガンとし、外務省、文科省、日中友好協会が後援、三菱UFJ国際財団などが助成した。
報告会は山本委員長の開会挨拶に続き、4つの分科会の討議内容が報告された。
環境分科会では、両国における電気自動車(EV)に対する考え方や政策の違いについて討議した。中国でEV購入意欲が高い背景として、政府の補助金や「緑色のナンバープレート」などのインセンティブがあることが指摘される一方、日本では「企業が世界市場に追随できる」ための政策であると報告された。
観光分科会では、オーバーツーリズムの解決策について討議された。訪問税を導入した宮島(広島県二日市市)などを例に、二重価格制や宿泊税で財源を確保してインフラ整備にあてることの是非などが討議された。また、観光客を増やしたいという国・自治体の政策と、オーバーツーリズムの弊害を除くことのバランスが指摘された。
伝統文化分科会では、地域文化と深く結びついた方言について討議された。方言に対する好意的心情は高まっている一方、中国ではその消滅を防ぐことが社会課題となっていること、日本では「かわいい」というイメージの下、娯楽化されている点で違いがあると報告された。
エンターテインメント分科会では、日本製アニメなどが中国でよく知られている一方で、中国製品の日本での普及はこれからである現状が報告された。ただ、スマホゲーム「原神」のように中国製であることが知られずに普及している例が紹介され、エンタメ消費が両国関係の改善につながることが指摘された。
経済分科会では、キャッシュレス、とくにモバイル決済の普及状況の違いが検討された。中国でモバイル決済が急速に普及した背景として、経済発展に伴うキャッシュレスの必要性が拡大した時期が、スマホの普及と重なったという特殊性が指摘された。最後に、日中がデータプライバシー保護分野における協力を強化すべきだと提言された。
続いて、高原明夫・東京女子大特別客員教授、阿古智子・東京大学大学院総合文化研究科教授、熊達雲・山梨学院大学教授(孔子学院学院長)が講評を述べた。熊教授は、「両国関係が芳しくなくても、課題に向けて共に努力する精神を広げるべき」と述べた。
最後に、小川瑛莉華・中国側委員長が閉会挨拶を行い、会は終了した。
日中関係が厳しいなか、両国学生が交流し、互いの違いを含めて討議を深めることは、戦争を阻止してアジアの平和を実現するうえで大きな意義がある。