羽場久美子・自主・平和・民主のための広範な国民連合代表世話人、青山学院大学名誉教授
あけましておめでとうございます。本年が、世界中の戦争で苦しんでいる人たち、そして日本国内で貧困や失業に苦しんでいる人たちにとって、平和と幸せで健康な一年となりますよう心から祈念いたします。
現在は世界的な変動期、200年、300年に一度の大変動期にあると思います。ローマ帝国は1000年続きました。英国は300年、米国はまだ100年です。他方、中国は5000年、インドは4000年の歴史を持っています。アジアの国々は非常に深くて豊かで、文化的にも重要な数千年の歴史を持っている。その一部に私たちもあるということです。
次の時代はどのように進んでいくのか、そして私たちはどこと結んでいくべきなのか、大局的に考える必要があると思います。
21世紀に入ってからの中国、インド、BRICS、そしてグローバルサウスの成長は極めて重要です。中国は、2010年に日本の国内総生産(GDP)を、14年には購買力平価のGDPで米国を抜きました。24年のGDPで米欧日とBRICSのトップ10カ国で比較すると、米欧日で50兆ドル、BRICSで64兆ドルと、既に米欧日をBRICSがしのいでいます。
1月のBRICSの会合でインドネシアが加盟しました。東南アジアでは初です。今後、BRICS、グローバルサウスの国々が非常に大きな力を持っていくことは間違いありません。
しかし懸念事項もあります。米国の覇権は衰退しつつありますが、巻き返しも図っています。中国が10年後に米国を抜き、インドが30年後に米国を抜くと言われていますが、これは経済のこと。いまだ米国は世界の軍事力の過半数を握り、そしてこの間も戦争を継続してきました。米国はあと100年覇権を継続させるつもりです。
現在の国際対立は、1989年に東欧の社会主義体制が崩壊し、91年にソ連邦が崩壊してからの旧社会主義体制と、先進資本主義国の資本主義体制の生き残りのための世界の二分化の戦いでもあります。
今年は戦後80年の年です。帝国主義植民地支配を交代させる時代です。しかし、あわよく交代できるでしょうか。数千年の中国やインドやアジアのですが、欧米が軍事力と科学技術と感染症で豊かなアジア・アフリカを植民地化していった歴史が今後も続かないとは限りません。
一つは軍事です。トランプ次期米国大統領はNATO加盟国は軍事費をGDPの5%にするべきだと主張しています。欧州は第2次大戦が終わってから不戦共同体をつくってきました。アジアでも現在、不戦共同体をつくろうとする動きが広がっていますが、それに対抗するような方針をトランプは打ち出しています。
同様に、日本や韓国などインド太平洋の同盟国にも今後3%とか、あるいは同程度の負担増を要求する可能性が高い。トランプは、自国の軍事費の負担を減らして同盟国の軍事負担を増加させて、戦争と覇権の継続を図るでしょう。そうした中で、昨年から今年にかけて石破政権のもとで、2025年度の防衛予算は過去最大の8兆7005億円になりました。
韓国の尹大統領の非常戒厳令も、実は米国の東アジア戦略、東アジアの軍事拡大と密接に関わっています。突然戒厳令を出して軍隊が政権を押さえるということを米国が知らなかったと思えない。非常戒厳令の直前、私は韓国の軍事研究者から「台湾有事は沖縄有事だけではなく朝鮮有事とダブルで行われるらしい」との話を聞きました。この情報を集めているときに非常戒厳が行われました。これだったのかと思いました。韓国は朝鮮を挑発し、朝鮮から軍事行動を起こさせて「防衛のための軍事化」を強行する可能性があったということです。
これに対して韓国の国民と、特に若者たちが闘う民主主義を短期間で実行したことは素晴らしいと思います。もし日本で夜の10時に非常戒厳が出されたら、その真夜中に議員が続々と集まって戒厳解除の決議をするということが考えらますか。日本では朝まで様子を見ようと考えている間に国会を軍隊が占拠した可能性があります。ですから、尹大統領と、ひょっとしたら米国政府も韓国民衆の行動を見誤っていたと考えることもできます。
日中韓の共同によって米国を東アジアから追い出すことは難しい状況が継続しています。沖縄を平和のハブにする運動や日中不再戦は素晴らしいが、切り崩しもあるでしょう。これに対し、沖縄や九州など各地域が中国との交流、平和と経済で関係と対話を深めていることが、今後の発展の大きな礎になると思います。
二つ目は経済です。米国はこれまで以上に同盟国も犠牲にするでしょう。トランプは大型関税を導入することを予告しており、中国に対しては60%増、それから周りのメキシコや周辺地域に対しては同盟国も含めて25%増の関税をかけると言っています。メキシコには日本のマツダや日産も含めていくつかの企業があり、それらに関税をかけられることは日本企業にとっても大打撃です。併せて、今回日本製鉄のUSスチールの買収に対して、大統領令としてこれを禁止する法令が出ました。これに対しても日本製鉄が、そして経団連が新しい形でそれを拒否し、そして中国や東アジアと結んでいくと言い始めています。日本の経済界が、旧来の日米同盟だけではなくて、中国や東南アジアやBRICSと結ぶこと、グローバルサウスと結ぶことを選び始めているのは素晴らしいことです。
第3は、米国が関与しているウクライナとガザの戦争の行方です。この3年間地獄のような戦争が続いてきました。これを止められないのは、国連ではなく、米国の1票の拒否権です。トランプはこれをやめさせると言っていたけれど、今はウクライナ戦争はあと6カ月様子を見ると言い、ガザについては、むしろイスラエルの側に立ってガザから全てのパレスチナ人を追い出し、ここをモナコのようなリゾート地にするというようなことまで言っています。4万人以上の非人道的虐殺に対して何の反省もなく、イスラエルを擁護する姿勢も変わりません。
こうした中で、大局的に日本はどうすべきか。一言ずつ4点申し上げます。
一つは、軍事化傾向に対して市民が日中不再戦を主張していくこと。ノーベル平和賞を受賞した被団協と結び、不戦と非核地域を東アジアにもたらす努力をする必要があると思います。
二つ目は、中国、インド、BRICS、グローバルサウスと結んで新しい時代と秩序を私たちの手でつくりましょうということ。
三つ目は、国内の貧困、人権問題を解決すること。皆さんが素晴らしい努力をされていることに心から尊敬しつつ、シングルマザーや子どもや非正規労働者の貧困、外国人労働者の人権などを守る運動することによって足腰を強め、市民から変革をすることが大事だと思っています。
最後に、そのための核として、沖縄、長崎、九州、日本各地域の自治体や市民やそれぞれの運動の方々と共に、国家レベルで軍事対立が続いても、下からの平和と繁栄と発展をつくろうという皆さまのご努力に深い敬意を表し、話をまとめとさせていただきます。
中島修・社会民主党総務企画局長
昨年秋の総選挙で、自公与党が過半数割れしました。安倍政権時代が典型的でしたが、強行採決や閣議決定で重要な問題を国会での審議もほとんどなく強引に通していくことが、今できなくなっている。この状況をチャンスと捉え、成立できるものについては国会の中でも全力で努力をしていかなければならないと思っています。
通常国会が今月24日に召集されます。自民党のごく一部の超反動的な議員を除いて多くの国会議員が賛成してる選択的夫婦別姓の問題があります。また先般、袴田事件で完全無罪を勝ち取りましたが、こういう冤罪(えんざい)を晴らすのに何十年もかかるような裁判のあり方を変えるためにも、再審法の改正をする。これもほとんどの国会議員が賛成しています。こうした果たされていない重要課題で成果を上げていかなければならない。そのために私どもも全力を挙げていきたいと思っています。
5年間で43兆円にも上ると言われる軍事費、これはさらに増えるんではないかと言われていますが、この問題。それから代執行から1年たった辺野古の基地建設。完成が見込めない基地建設に何兆円もの金が投入されようとしている問題。物価上昇が激しくなって国民の生活もますます苦しくなって厳しくなっている。こういうことに私たちはきちんと声を上げていかなければならないと思っています。
今の政治を本当に変えていくためにも、今年7月の参議院選挙で悪政の流れを断ち切って、社会全体をもう1回見つめ直していく必要がある。そういう政治を実現するためにも、私たち社民党は全力を挙げて奮闘してまいります。
大谷篤史・全国農団労元書記長
私たちは農協の労働者を組織している労組です。職場の課題と合わせて農業関連の課題にも取り組んできました。特に農協革新・農業再建をスローガンに掲げてきました。農協は農家組合員に対して利益をきちんと還元できる健全な事業運営を行う組織に変革していこうというのが農協革新です。昨今、共済の押し売りみたいな不正契約が世間を騒がせています。実際そういった問題は起きていますし、現場の労働者側の問題としても捉えています。
1990年代以降、農政も大きく変わる中で、旧来の事業モデルから脱却できていないことが不祥事の原因だと私たちは考えています。私たちの掲げる農協革新によって新しい事業モデルを展開し農家を支えていかなければいけません。
農家の経営もかなり厳しいところに追い込まれています。政策的な補助、政策的な資金の導入は必要です。農家の戸別所得補償といった形できちんと経営が成り立つように国がサポートしていく必要があると私たちは考えています。そのように運動も進めていきたいと思います。
地域で私たち農協が活躍することは、地域の経済活性化にもつながります。それによって雇用が生まれ、地域の再生につながる。そういう形で地域コミュニティーを再生するべく、私たちの活動を展開していきたい。その役割を果たすのは協同組合の大きな使命だと考えています。
今年は、2012年に続いて、国連が2回目の国際共同組合年として定めた年です。地方が衰退する中、農業を中心とした地域活性化、地域再生のために協同組合が役割を発揮することが本当に求められている。12年以降、協同組合の連携が行われ、かつては考えられなかった農協と生協が連携する成功例も進んでいます。そういった取り組みを一つ一つ広げて、地域の活性化、日本全体の活性化につなげていきたいと考えています。
李泰栄・在日本朝鮮人総聯合会中央本部国際局副局長
この会に来ると、何か平和な気分になります。総聯本部にいると、週1回以上は右翼が来たり、抗議があったり、嫌な電話があったりします。テレビや新聞を見ても曲がった報道しかない。電車に乗っても、道を歩いても、常に朝鮮学校に通う子どもたちのことが心配です。
今年は、日本においては敗戦80年、われわれにとっては解放80年です。最近の各新聞では、昭和100年をどう見るかという特集が組まれていますが、私は一言、「反省すべき」に尽きると思います。それがないと前に進まない。昭和100年の期間にあらゆる問題が起きたんですから。私たちは皆さんと共に、歴史をひもとき、歴史の鉄の綱を引き起こすことが大事だと思います。
朝鮮でも朝鮮労働党が80周年を迎えます。昨年12月末に朝鮮労働党の大会がありました。金正恩総書記はこのようなことを言いました。米国に、もう2018年みたいにだまされない、対米強硬で行き、対朝鮮敵視政策を撤回させようと。私はこれが今後の朝鮮半島の平和、アジアの平和につながると信じております。米国にはめげずに戦う姿勢でいるということを朝鮮は見せてくれていると私は信じております。
われわれ朝鮮総聯も70周年を迎えました。これもひとえに皆さまのご支援の結果です。今日は皆さんの発言から力をもらいました。今年をいい年にするため、また頑張っていきたいと思います。皆さん、共に闘っていきましょう!
李俊一・在日韓国民主統一連合事務長/韓成祐・在日韓国青年同盟委員長
韓国では年末に尹大統領が戒厳令を出して見事に失敗しました。戒厳令をあの短時間で止めたというのはやはりすごい。戒厳令を出したのが夜の10時で、狡猾(こうかつ)なことに国会議員の仕事が終わった直後に出した。しかしその瞬間に国民が「国会に行かないといけない」と直感し、野党議員の呼びかけよりも早く100万人が集まって警察や軍隊と対峙(たいじ)してクーデターを止めた。これは韓国が培ってきた民主化運動の成果、歴史ですよね。その意識が根付いている。これまで闘ってきたわれわれの先輩方もそうなんですけれども、代々受け継いできた意識があるから若者も行く。誇らしい歴史だと感じています。
ただ、韓国の青年の非正規職の割合が40%にもなっている。就労年齢だが働いていない人が40万人いる。これは働き口がないとか超学歴社会とかいろいろな要素があるにしても、こうした状況が前の政権から続いている。だから、ただ尹政権を退陣させる運動ではなく、どうやって韓国社会を変革していくのかが問われている。今「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」というのが大衆運動の中心を担っていて、そこには市民運動、労働運動や進歩団体などが入って議論をしている。社会基盤を支えている人たちが主体的に社会そのものを変えていき、自ら政権を担い、その末に自分たち中心の社会をつくる。このことが必要とされているのは多分日本でも同じで、これからの本当の課題だと思ってます。
今年は日本で言う戦後80年、韓国では解放80年です。過去の清算問題を解決し、反動勢力を打倒してこそ、初めてやり直すことができる。これからは本当に大変革できる時代です。われわれ韓統連と韓青はこれからも皆さんと共に闘っていこうと思っています。
パレスチナ連帯運動から
パレスチナ連帯アクションを企画したりしてるザックです。2023年の10月7日以来、僕のスマホの画面は血まみれです。毎日バラバラの死体を見ています。燃えたテントと燃えた人間、頭がぶっ飛ばされた子ども、並んでいる赤ちゃんの死体。僕の親友もガザにいます。ほとんど食べられてない。空爆、スナイパー、殺人ドローン、飢餓、寒さ、移住、避難、死、死、また死。
この虐殺に日本はかなり加担してます。日本企業の取引、日本人の消費、日本政府の外交全てが関係してます。BDSというイスラエルを経済的に国際社会から隔てる運動があります。Bはボイコットつまり不買運動、Dはダイベストつまり資本の引き揚げで、Sはサンクション、経済制裁。僕はこれを歓迎します。日本政府はイスラエルの虐殺ドローンを僕たちの税金で購入してます。日本の年金は武器企業や戦争犯罪中の企業に投資してます。僕たちがコカコーラ、マック、スタバの商品を消費することで加担になります。
世界の構造を変えない限り事情はよくなりません。資本主義を廃絶しないと労働者は永遠に搾取されます。パレスチナの敵は帝国主義、植民地主義、資本主義です。要するに皆さんと共通の敵との闘いです。問題の根本を狙わないといけません。その根本はアメリカ帝国主義です。
【メッセージ】「インターナショナル」で連帯を イナン・オネル 思想誌「TEORI」編集委員(トルコ共和国)
2025年、新年のごあいさつを申し上げます。
振り返ってみますと、昨年は、世界各地の非搾取諸国民の希望と覚醒の年となりました。
新型コロナウイルスによって資本主義の偽善がくっきりと露呈し、西側の長年にわたるウクライナへの介入に対する抵抗の激化によって西側流民主主義の偽善が露呈し、パレスチナ人に対する大虐殺を見ぬふりし続ける「国際社会」の偽善が露呈し、いわゆる「グローバルサウス」そしてわれわれ先進諸国内の「ローカルサウス」の人びとをはじめ、人類が裏切者の支配者たちによって自分達に仕掛けられているわなに気付きはじめました。
そして昨年、世界多くの国民が帝国主義からの脱却、言ってみれば解放の道筋を、BRICSの拡大、上海協力機構の強化、世界経済のドル支配からの解放を見始めました。
しかし、年末にシリアで起きた政変は、人類の覚醒に対する帝国主義のリベンジの始まりを物語っています。シリアで今新憲法の制定が議論されていますが、ここで注目すべきは、シリアの宗教、宗派、民族、部族や出身地などの「アイデンティティー」ばかりが政治の議題にされ、社会階級が隠蔽(いんぺい)されていることです。たとえば、今後の体制の中で社会保障はどうなるのか、労働者の団体交渉の権利がどうなるのかなど、話題にもなりません。帝国主義のリベンジに応えるために、われわれは自分たちの間の差異ではなく類似性、共通性、同一性を見いださなければなりません。その最も現実的なのは階級制であり、労働者であるアイデンティティーこそ最も広範囲の共通項です。「グローバル」も「ローカル」も「サウス」は皆一致団結して挑まない限り帝国主義のリベンジに対抗できません。
帝国主義のこのリベンジの試みはきっと絶望に終わるでしょう。帝国主義の絶望の向こう側の未来に広がっているのはアジアの時代であり、東側の時代であり、「グローバルサウス」と連携する「ローカルサウス」の時代であります。ぜひとも人類のこの大いなる解放のために「インターナショナル」の精神で連帯し、共に闘いましょう。
本年もよろしくお願い申し上げます。
祝電・メッセージ
・玉城デニー・沖縄県知事
・福島みずほ・社会民主党全国連合党首
・岡崎ひろみ・新社会党中央本部委員長
・阿部知子・衆議院議員
・大石あきこ・衆議院議員
・福島伸享・衆議院議員
・山崎誠・衆議院議員
・大椿ゆうこ・参議院議員
・鬼木まこと・参議院議員
・高良鉄美・参議院議員
・辻元清美・参議院議員
・野田国義・参議院議員
・全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部