世界のできごと
ガザ侵攻1年、イスラエルさらに凶暴に
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への侵攻から10月7日で1年が経過した。パレスチナは死者は約4万2000人、がれきの下に1万人が埋まっているとされている。イスラエルによるジェノサイド(大虐殺)はいっそう凶暴性を増している。
イスラエル軍は10月1日、レバノン南部への地上作戦を開始した。同軍のレバノン地上侵攻は2006年以来18年ぶり。また10、11の両日、レバノン南部に配備された国連レバノン暫定軍(UNIFIL)を攻撃、インドネシア国籍の隊員2人が病院に搬送された。
またイスラエル政府は2日、国連のグテレス事務総長を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定、入国を禁止すると発表した。グテレス氏はこれまでガザの人道危機拡大を懸念しイスラエルに自制を要請、イスラエルは反発していた。
米のイスラエル軍事支援、1年で約2兆6400億円
米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所は7日、米国からイスラエルへの過去1年間の軍事援助総額が少なくとも179億ドル(約2兆6400億円)に上ると発表した。
同研究所は米政府の発表やメディア報道をもとに、イスラエル軍がガザ侵攻を始めた昨年10月7日から今年9月30日までにバイデン政権がイスラエルに行った軍事援助額を計算、軍事援助額は1年当たりとしては過去最大規模としている。
また、供与される武器を製造しているのは、ボーイングやジェネラル・ダイナミクスなどだとし、「イスラエルはこれらの企業にとって重要な顧客で安定した収入源」などと指摘している。
さらに米防総省は13日、米軍の終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイルとその運用部隊をイスラエルに派遣すると発表した。
イスラエルのガザ侵攻が米国によって支えられていることを改めて示すものだ。
英がチャゴス諸島返還、米軍の基地使用は継続
英政府は10月3日、インド洋チャゴス諸島の返還でモーリシャス政府と合意したと発表した。同諸島最大のディエゴガルシア島には米軍基地があるが、合意では基地は引き続き存続・使用され、軍事拠点は維持した格好だ。
チャゴス諸島は1965年、インド洋に基地を確保したい米国の意向を受け、英国の植民地支配下にあったモーリシャスから分離された。モーリシャスが独立した68年以降は英領となり、基地建設のため全住民約2000人が強制移住させられた。
米国は米国から島を借り受け、66年から基地建設を開始した。2001年以降のアフガニスタンへの空爆や2003年のイラク戦争において爆撃機や艦艇の出撃拠点とした、米戦略における要衝。
だがこの統治をめぐっては、3019年には国際司法裁判所(ICJ)が英国の統治を違法と認定、英政府に「できる限り早期に統治を終わらせる義務がある」と勧告していた。
(参考記事)
人民のたたかい
世界各地で10月5日、イスラエルのガザ侵攻への抗議行動が行われた。米国ワシントンではユダヤ人団体「平和を求めるユダヤ人の声」も参加する大規模集会が行われた。英国ロンドンでは30万人以上が参加するパレスチナ連帯行動が行われた。
米国の港湾労働者の労組・国際港湾労働者協会(ILA)と雇用者側の米海運連合(USMX)は10月3日、今後6年で約62%の賃上げなどで暫定合意した。ILAは1日、新たな労働協約を巡る交渉が不調に終わったことを受けて米東海岸とメキシコ湾岸の港湾で一斉にストライキに突入していた。港湾労働者約4万5000人が参加する1977年以来、約半世紀ぶりの大規模ストだった。
南米アルゼンチンで10月2日、国立大学に資金投入を図る大学資金法案に対する拒否権を発動すると表明しているミレイ大統領に抗議して、学生や教職員、大学当局者や卒業生など数十万人が全国で緊縮策抗議デモを行った(写真)。
日本のできごと
石破政権が成立、早くも欺瞞的性格あらわに
衆参両院本会議の首相指名選挙で10月1日、石破茂・自民党総裁が指名され、第102代首相に就任した。
党・閣僚人事では、岩屋外相、中谷防衛相、小野寺政調会長と、防衛族議員を主要ポストに配置した。また、林官房長官、小里農水相、三原女性活躍担当相など、岸田前首相や菅元首相に近い議員も多く入閣した。
首相は4日に行われた就任後初めての所信表明演説で「納得と共感内閣」を強調したが、バイデン米大統領との電話会談で持論の「日米地位協定見直し」は提起せず、解散・総選挙の前倒しや金融緩和政策の「維持」を表明、「納得と共感」とはほど遠い船出となった。
内閣の基本方針として①ルール②日本③国民④地方⑤若者・女性の機会を「守る」ことを掲げ、「経済対策の検討」を指示したが、当面の総選挙目当てであることは明らか。政治資金規正法に基づく第三者機関を立ち上げるとしたが、派閥の政治資金問題を巡る再調査を否定するなど、「政治とカネ」解明にも後ろ向きだ。
石破首相は総裁選時公約の「前言撤回」を続けており、早くもその欺まん的性格をあらわにさせている。
石破首相が初外遊、相変わらぬ対中敵視姿勢で孤立
石破首相は10月10日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議主催の一連の会議が開催されるラオスに到着した。首相就任後初めての外国訪問。
会議では、域内市場の統合を目指すASEAN経済共同体(AEC)の新たな実施計画の骨格がまとめられ、議長国ラオスのソンサイ首相は「包括的かつ建設的な議論ができた」と、国・地域との経済協力を深化させた成果を強調した。
一方、一連の会議に米国のバイデン大統領が欠席するなか、石破首相は「この地域の安全保障環境がますます厳しさを増している。世界中のどこであれ、力や威圧による一方的な現状変更の試みを許容してはならない」などと、米国の意に沿った中国敵視発言で対立を持ち込んだ。
会議を前にした記者会見などで、各国の首相は石破首相の持論である「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」に対し、「ASEANにNATOは必要ない」(モハマド・マレーシア外相)、「我々はいかなる国とも(安保の)条約を結んでいない。戦略的枠組みは念頭にない」(ジャイシャンカル・インド外相)などと、各国からは否定的な意見が相次いでいる。
対中敵視政策に固執すれば、日本はアジアでの孤立を深めるだけだ。
日本被団協がノーベル平和賞受賞、石破首相に苦言
ノルウェーのノーベル委員会は10月11日、今年の平和賞を、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。「核兵器は二度と使ってはならないという世界的な合意形成に、被爆者が語る個人的な経験やそれをもとにした教育運動が独特の役割を果たした」(フリドネス委員長)ことなどが評価された。
これを受けて、石破首相は日本被団協の田中熙巳代表委員に「長年、核兵器の廃絶に取り組んできた団体に授与されることは極めて意義深い」と電話で祝意を伝えたものの、田中氏から「核共有や非核三原則の見直しなど首相の安全保障の考え方が心配で心配でしょうがない」と投げかけらると、「現実的な取り組みが必要」などとして議論を避けた。
米国の核の傘を利用して中国や朝鮮などへの核によるどう喝を続ける日本政府が日本被団協のノーベル平和賞受賞を祝うなど、厚顔無恥も甚だしい。
8月の実質賃金、物価高で3カ月ぶりマイナス
厚生労働省は10月8日、8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)を発表した。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から0.6%減少し、3カ月ぶりにマイナスに転じた。
ボーナスなど「特別に支払われた給与」は2.7%増で、伸び率は前月の6.6%増から縮小した。一方、実質賃金の算出に用いる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)の上昇率は3.5%と前月から拡大した。
実質賃金は5月まで過去最長の26カ月連続マイナスだったが、賞与が給与総額に占める割合が大きい6~7月は、賞与の伸びが好調だったことからプラスとなっていた。
多くの国民によって生活苦が増すばかりであることを改めて示す統計だ。
今年度上期の企業倒産、物価高で11年ぶり高水準
東京商工リサーチは10月8日、2024年度上半期(4~9月)の企業倒産件数(負債額1000万円以上)を発表した。前年同期比17.8%増の5095件と3年連続で増加した。上半期としては13年度(5505件)以来11年ぶりの高水準。
全体の倒産件数のうち、「物価高」を原因とした倒産は4.7%増の353件、「人手不足」関連の倒産は80.4%増の148件だった。コスト上昇に価格転嫁が追い付いておらず、商工リサーチは「中小企業は体力以上に背伸びした賃上げを強いられている」と分析した。
産業別の倒産件数では、サービス業が15.3%増の1693件と、統計データが残る1989年度以降で上半期として過去最多に。金融・保険業を除く9産業全てで前年同期を上回った。