世界のできごと
イスラエル国内で高まる批判で政権基盤ガタガタに
パレスチナ・ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルで、ネタニヤフ政権への批判が強まっている。
イスラエルのエルサレムで6月17日、ネタニヤフ首相の退陣を求める反政府デモが行われた。数千人がクネセト(国会)の外に集結して市内にあるネタニヤフ首相の私邸まで行進、新たな選挙実施を訴えた。
また19日にはイスラエル軍のハガリ報道官が地元テレビのインタビューで「(ガザ地区を統治する)ハマスを壊滅、消滅させるという任務は人びとに真実を見えなくさせる。ハマスは人びとの心に根づいた思想であり、完全に排除できるとの考えは間違っている」「全ての人質を軍事作戦で取り戻すことは不可能。ほかに人質を帰還させるシナリオを見つけなければならない」などと述べ、戦闘を長期化させる政権と軍との間の対立を表面化させた。
政権は右派からも反発を受けている。イスラエル最高裁は25日、宗教的理由から兵役を免除されてきた超正統派ユダヤ教徒も徴兵するよう政府に命じる判決を言い渡し、ネタニヤフ首相が連立政権の維持で頼りとする超正統派の2政党は判決に抗議している。
イスラエル軍とレバノンのシーア派イスラム主義の政治組織・ヒズボラとの戦闘も拡大するなど、内外で難問を増大させている。それだけに米国の支持は生命線で、「米国あってこそのガザ攻撃」となっている。
(参考記事)
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イスラエル軍がガザ学校空爆、終わらぬ蛮行
イスラエル軍は6月25日、パレスチナ・ガザ自治区の北部ガザ市や南部ハンユニスなどの人口密集地に攻撃を行い、少なくとも45人を殺害した。ガザ市にある学校2カ所と難民キャンプを空爆、学校施設で少なくとも14人、難民キャンプで10人が殺害された。
日本のマスコミは、イスラエル軍のハレビ参謀総長が24日に南部ラファの地上作戦の終了が近いとの認識を示したことを繰り返し報道、イスラエル軍による虐殺が終わる見込みであるかのように印象付けているが、実際は真逆の地獄絵図が続いている。
こうした中、イスラエルの最大の後ろ盾である米国では27日、秋の大統領選挙に向けた初のテレビ討論会が行われたが、バイデン大統領とトランプ氏の両氏はイスラエル擁護を競った。バイデン大統領は、「戦争を続けたがっているのはハマスだけ」として責任をパレスチナ側に転嫁、「米国はイスラエルの最大の支持者」と支援継続の意を示した。トランプ氏は、「ハマスせん滅の課題を遂行させるべき」「(バイデン氏)はハマスに弱腰」などと強硬論を誇示した。
イスラエルの蛮行を米国が後押しし続けている。
ロ朝首脳会談、新条約署名、事実上の同盟化へ
ロシアのプーチン大統領は6月19日、24年ぶりに朝鮮民主主義共和国を訪問、金正恩朝鮮労働党総書記と会談した。両首脳は会談後、「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名、会見でプーチン氏は「侵略を受けた場合の相互支援を定めた」と説明、また金氏はロ朝関係が「同盟水準まで引き上げられた」と語った。
両国は米国を中心とした国々による包囲・圧殺に対抗するために軍事的協力を強化させた形で、米国にとっては自らの攻撃が「敵を強めた」結果となった。
BRICSへの加盟希望国が続出
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカを中心とした国々で構成するBRICSに加入する意思や関心を表明する国が相次いでいる。マレーシアのアンワル首相は18日、「近く正式にBRICS加入の手続きを取る」と表明した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国ではタイに続いて2国目で、タイ外務省報道官は20日、タイがBRICSに加盟することで、グローバルサウスと呼ばれる国々による「南南協力」の推進に積極的な役割を果たし、国際秩序の構築に貢献できると述べた。
BRICS加盟希望国は現在30〜40カ国にのぼり、欧州連合(EU)に加盟していないセルビアも加盟に意欲を示している。
BRICSは米欧を含まない新たな国際的な枠組みとして存在感を高めている。
人民のたたかい
カナダの労組ユニフォーは6月23日、航空機メーカーのボンバルディアとの新たな労働協約を巡る交渉が決裂したことから、トロント・ピアソン国際空港の製造工場で働く1350人がストライキに入ったと表明した。22日を交渉期限としていたが合意に至らなかった。労働者らは工場前でピケを張り、ユニフォーの赤い旗や「スト中」と書かれたプラカードを掲げた。
ネット通販最大手アマゾンの労働者を組織するアマゾン労組(ALU)は、米国最大労組の一つ全米運輸労組(チームスターズ)に加盟することを組合員による大多数の承認で決定した。6月18日の共同声明で発表した。労組つぶしを行う同社に対し、労組を承認させ労働協約の締結に向け圧力をかけることが狙い。
日本のできごと
沖縄の米兵による少女暴行事件、国は半年も隠ぺい
沖縄本島で昨年12月、16歳に満たない少女を車で誘拐して自宅に連れ去り、同意なく性的暴行を加えたとして、那覇地検がわいせつ目的誘拐と不同意性交の罪で米空軍嘉手納基地に所属する空軍兵長を起訴していたことが6月25日、明るみに出た。
那覇地検が起訴したのは3月27日で、外務省は同日、エマニュエル駐日米大使に「遺憾の意」を表明、「綱紀粛正」と再発防止の徹底を申し入れていた。だが、外務省はじめ政府は事件発生後半年、申し入れから3カ月もの間、県に一切の情報を伝えていなかった。6月16日には沖縄県議選が実施され、23日には沖縄の「慰霊の日」の式典に参加するために岸田首相が沖縄を訪問していた。
「沖縄タイムス」は30日、3人の米兵が少女を暴行した1995年から2024年までの29年間に沖縄県内で発生した米兵による性的暴行事件で、県警が逮捕や書類送検した30件のうち、公表していない事件が少なくとも半数の15件に上る可能性があると報道した。2023年以降の全5件は逮捕や起訴後も公表しておらず、日本政府が沖縄県民の反基地感情を抑えるために策動している疑いは濃厚だ。
【談話】米兵による沖縄・少女への暴行を糾弾する
【東京】沖縄・米兵の性暴行事件を隠した外務省に抗議
通常国会閉会、数々の悪法成立、野党闘えず
第213通常国会は6月21日、衆参両院の本会議で閉会の手続きなどが行われ、23日の会期末を前に事実上閉会した。自民党派閥の裏金問題を受けて政治資金規正法の改定が焦点となったが、セキュリティークリアランス(適性評価)制度を導入するための法改定や共同親権を可能とする民法改定、入管難民法改定、食料・農業・農村基本法の改定、子ども・子育て支援法改定など、自公与党によって多くの法改悪が行われた。岸田政権の支持率は「危険水域」にありながら、日米基軸など基本政策で与党と差がない議会内野党は対抗軸を打ち出せず、悪法成立阻止も政権打倒を成すことができなかった。
改定地方自治法成立、戦時念頭に国に「指示権」
改定地方自治法が6月19日、参院本会議で自公与党や維新、国民などの賛成多数で可決・成立した。政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と判断すれば国が地方自治体に指示ができる「指示権」を新たに導入する。
国は災害や感染症を例示しているが、「その他」「これらに類する」など「事態」の範囲は極めて曖昧で、また「発生のおそれがある」など判断も国に委ねられ、国による恣意(しい)的な運用が可能となっている。
岸田政権は22年12月に閣議決定した「安保3文書」にもとづき、軍事利用のための空港・港湾整備を推し進めている。戦時に国が沖縄などの自治体に空港・港湾の自衛隊や米軍の優先使用を強制する事態は容易に想像できる。警戒が必要だ。
(参考記事)
骨太方針2024、労働者・国民大多数の生活犠牲もくろむ
岸田政権は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)を閣議決定した。労働分野で、昨年に続き「三位一体の労働市場改革」として、リスキリング(学び直し)やジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化などを掲げた。財界の要求に沿い、クビ切り自由化と職務を口実にした中高年の賃金引き下げを狙うもので、格差拡大は必至だ。また昨年閣議決定した全世代型社会保障の改革工程を着実に推進するとし、高齢者の医療費窓口負担引き上げや都道府県内統一化の名による国保料(税)の値上げ、介護保険の利用料2割負担の対象拡大など、社会保障の全分野にわたる国民負担増と給付削減が盛り込まれた。
(参考記事)
円下落、一時161円台、37年半ぶりの円安・ドル高
東京外国為替市場の円相場は6月28日、対ドルで下落し、一時1ドル=161円20銭台を付けた。1986年12月以来、37年半ぶりの円安ドル高水準。円安による物価高が依然として収束するめどが立たず、国民生活に重くのしかかる。無策な岸田政権の責任は重大だ。
(参考記事)