世界のできごと
米トランプ政権再登場、資本主義の危機加速へ
米大統領選挙が11月5日に投開票され、共和党のトランプ前大統領が勝利した。
(関連記事)
BRICS拡大後初の首脳会議、米欧の制裁を
新興国グループ・BRICSの首脳会議が10月22-24日、ロシア中部カザンで開催された。BRICSが従来の5カ国からエジプト、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが加入、9カ国となって初めての首脳会議。
採択した「カザン宣言」では、「違法な制裁を含む非合法な一方的強制措置が、世界経済や国際貿易に及ぼす悪影響を深く懸念する」と明記した。BRICSの枠組みにおける金融協力についても、加盟国間の決済における自国通貨の使用拡大を引き続き検討するとした。主催国であるロシアのプーチン大統領は「より公正で民主的な世界秩序のために多極化を強化する」との意思を示した。
米欧日などはBRICSを「中ロが中心となって米欧中心の世界秩序への対抗軸としたい意図」などと警戒を強めているが、BRICSやグローバルサウスなど「非米欧」による国際秩序づくりを志向する動きは強まる一方だ。
(参考記事)
イスラエルがUNRWA活動禁止、人道上の暴挙
イスラエルの国会は10月28日、自国内で国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法案を可決した。イスラエルが軍事作戦を続けるパレスチナ・ガザ地区などでのUNRWAによる人道支援活動をほぼ不可能にするもの。ガザでは1年以上に及ぶイスラエルの攻撃でこれまでに約4万3000人が死亡、多くの人がUNRWAの支援に頼って生活している。
これに対して国連の安全保障理事会は30日、「重大な懸念」を表明する声明を発表した。この声明には米国も賛同しているが、一方でイスラエルへの多大な軍事支援は継続するなど、実質的にはイスラエルの蛮行を容認・支援している。
(参考記事)
NATO、「朝鮮部隊派遣」口実にウクライナ支援拡大狙う
国連の安保理は10月30日、「ロシアへの朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)部隊の派遣」をめぐり、ウクライナの要請で緊急会合が開かれた。米欧が批判するこの「問題」に対し、ロシアのネベンジャ国連大使は「仮に(朝鮮軍のロシア派遣という)情報が正しかったとしても、なぜロシアは同盟国からの軍事的支援を受けてはならないのか。ロシアと朝鮮の軍事その他の分野での交流は国際法に沿ったもので、誰も禁止することはできない」と反論した。
この「問題」をめぐって、北大西洋条約機構(NATO)は28日に韓国との会合でウクライナへの支援拡大を協議した。特に韓国側は殺傷兵器を供与しないとしてきた方針の見直しを示唆、「防御用兵器」の供与に踏み込もうとしている。
日本政府や報道機関も、米欧の言い分を垂れ流してロ朝を批判、返す刀で「黙認した」と中国も非難している。中国は「双方とも独立した主権国家であり、2国間関係をどのように発展させるかは彼ら自身の問題」と反論している。あえて「問題」化する米欧や日韓は、これをウクライナ軍事支援拡大への新たな口実をつくることが狙いだ。
英連邦首脳会議、奴隷貿易の補償議論で合意
南太平洋のサモアで行われていた英連邦首脳会議は10月26日、過去の大西洋奴隷貿易や奴隷制についての補償を議論することで合意し閉幕した。英国の消極姿勢を押し切って奴隷貿易・奴隷制の被害を受けたアフリカやカリブ海地域諸国の主張が首脳声明に盛り込まれた。
英連邦は英国やインド、オーストラリア、カナダ、またアフリカやカリブ海の旧英植民地国など56カ国でつくる緩やかな連合体。連邦首脳会議は2年に1度開催される。
英国は16世紀後半以降、アフリカからおよそ300万人を奴隷としてカリブ海諸国や南北アメリカの植民地に送り込み、砂糖やタバコを栽培させて富を築く一方、過酷な環境で多くの犠牲者が出た。奴隷貿易には英政府だけでなく王室も関与した。近年は英連邦加盟国内で謝罪と賠償を求める意見が強まっていた。カリブ海諸国でつくるカリブ共同体(カリコム)は、公式で全面的な謝罪や現代に続く被害の修復、債務の帳消し、技術移転、教育支援などを要求している。
これに対し、チャールズ英国王は昨年、ケニアが英植民地からの独立闘争の際に経験した残虐行為などの英国が犯した「過ち」について「最大の悲しみと後悔」を表明したものの謝罪はしなかった。スターマー英首相も保守党政権以来の姿勢を踏襲、首相府報道官は21日に「賠償は支払わない」「謝罪についての立場も変わらない。首脳会議で謝罪は行わない」と述べた。
首脳声明は、大西洋奴隷貿易と奴隷制についての「補償的正義に関する議論への呼びかけ」を明記、平等に基づく共通の未来を築くために「意義のある、真実に忠実で、敬意ある対話をする時が来たことで合意した」と記した。
人民のたたかい
米国航空機大手ボーイングの労働組合「国際機械工・航空宇宙産業労働者組合(IAN)」は10月31日、4年間で計38%の賃上げを柱とした新たな労働協約で経営側と同意したと発表した。新協約は組合員投票でも承認され、IANは9月から1カ月半以上続けてきたストライキの成果だと表明した。新協約では、賃上げを4年間(13%、9%、9%、7%)続け、4年後には現在に比べ43.65%の賃上げとなり、労組側の要求である40%以上に届くことになった。また一時金として労働者1人につき1万2000ドル(約183万円)を支給、年金への企業側の負担も維持、雇用確保なども盛り込まれた。
南米アルゼンチンで10月21-22日、国立大学の教職員が大学予算を削るミレイ政権の緊縮政策に抗議する48時間ストライキを決行した。同国の国立大学予算を巡っては、議会が教職員の賃上げや大学維持・運営費の増額を含んだ大学資金法案を可決したものの、大統領が署名を拒否、議会下院で再議決に必要な3分の2の賛成を得られず廃案となっていた。22日には、首都ブエノスアイレスで教員と学生が集まり抗議の屋外授業を開催しました。
英国のレイクンヒース空軍基地に2025年から米国の核爆弾が配備される計画が浮上していることに対し、核軍縮運動(CND)などの反核平和団体は11月2日、各地で抗議行動に取り組んだ。同基地には核兵器の搭載可能なF35戦闘機の配備計画もある。CNDは「米国の危険な核兵器が非民主的に英国に置かれようとしている。英政府は米政府に配備計画を撤回するよう求めるべき」などと訴えている。
日本のできごと
総選挙で自公与党大敗、生活苦で国民の審判下る
第50回衆議院議員総選挙が10月27日に投開票された。自民党は選挙前から56議席減らし191、公明党も8議席減らし24となり、自公与党は215議席にとどまり定数465の過半数(233)を割り込む大敗となった。自公の過半数割れは政権交代が起きた2009年以来、15年ぶり。
また野党は、立民が50議席増やし148に、国民が21議席増やし28に、れいわが6議席増やし9となった一方、維新は6議席減らし38に、共産は2議席減らし8となった。
投票率は約53%と戦後3番目の低さで、特に10代では約43%と低水準にとどまった。
与党大惨敗の原因として自民党の「裏金問題」があったのは間違いないが、何より生活が悪化の一途をたどっていることへの国民の怒り・不満がある。
(談話)
日米共同統合演習「キーン・ソード25」強行、戦争態勢づくり
日米共同統合演習「キーン・ソード25」が10月23日-11月1日に日本全土で強行された。日米両国の兵士4万5000人、軍艦40隻、オスプレイを含む軍用機370機を中心に、オーストラリアとカナダが加わり、北大西洋条約機構(NATO)、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、リトアニア、インド、フィリピン、ニュージーランド、韓国がオブザーバー参加した。
事実上「台湾有事」を想定した実戦的な内容で、中国艦への攻撃を想定したミサイル発射・移動訓練、滑走路復旧訓練、パラシュート降下訓練、患者輸送訓練、CBRN(化学・生物・放射線・核兵器)訓練などが、西日本を中心に展開された。軍用施設だけでなく、30カ所以上の民間空港や港湾施設、さらに公的施設や病院、漁港なども使用された。
(社説)
キーン・ソード中に与那国島でオスプレイ事故
沖縄県の与那国島で10月27日、陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが離陸時に姿勢を乱し、左翼側が地面に接触、ローターのある「ナセル」という部分が一部損傷する事故が起こった。陸自V22オスプレイは23日にも、エンジンの油圧系統の不具合を知らせるランプが点灯、鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地に緊急着陸している。
事故を受けて、沖縄県の玉城知事は28日、「遺憾極まりない。キーン・ソードでのオスプレイ使用の自粛を申し入れていたにもかかわらず、こうした事態になった。オスプレイはそもそも欠陥機で、どこでどういう状況が起こるかわからない」とコメントした。
(参考記事)
沖縄で海上自衛官が少女に性的暴行、1年以上隠蔽
海上自衛隊第5航空群司令部(那覇市)は10月30日、昨年6-7月に沖縄本島内で18歳未満の女性に性的暴行を加えた上に、わいせつな動画を撮影し児童ポルノを作製したとして、第5整備補給隊の海士長を停職4カ月の懲戒処分にしたと発表した。海士長は県青少年保護育成条例違反と児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で宜野湾署に9月に2度逮捕され、今年1月5日付で那覇地裁が同法違反で沖縄簡裁に略式命令請求していた。
米兵による犯罪と同じく、自衛隊員による犯罪も「基地があるがゆえの被害」であり、到底許されないが、逮捕から1年以上も事実を隠蔽、総選挙後まで公表を控えたことも絶対に許されることではない。
(参考記事)
国連の女性差別撤廃勧告、日本政府の姿勢を批判
国連の女性差別撤廃委員会は10月29日、日本の女性政策について最終見解を公表した。女性差別撤廃条約を批准している各国の取り組みを定期的に審査している同委員会は8年ぶりに日本を審査していた。
勧告で特に強調されたのは、夫婦同姓を義務付ける民法規定の見直しで、選択的夫婦別姓を導入するよう勧告した。同様の勧告は4回目で、「差別的な条項があるとしたこれまでの勧告に対し、何の行動も取られていない」と、日本側の姿勢を批判した。
人工妊娠中絶についても、女性に配偶者の同意を求める規定を撤廃するよう法改正を勧告した。人権侵害を受けた個人らが委員会に直接申し立てできるようにする「選択議定書」の早期批准も促した。
旧日本軍「慰安婦」問題にも触れ、被害者らの賠償請求などの権利を保証する努力を続けていくよう日本政府に求めた。
皇位継承が「男系男子」に限られている皇室典範の改正も勧告された。
勧告に対し、林官房長官は30日、選択的夫婦別姓制度の導入については「国民の間にさまざまな意見があり、さらなる検討を要する」と従来通りの消極姿勢に終始した。
(参考記事)
消費者物価37カ月連続上昇、コメ45%で49年ぶりの伸び
総務省は10月18日、9月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)を発表した。価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が108.2と、前年同月比2.4%上昇した。37カ月連続で上昇したが、政府による電気・ガス代補助の再開によって5カ月ぶりに伸び率が縮小した。
一方、食料の価格上昇は、米類では猛暑による出回り量の減少や外食需要の高まり、さらには新米の価格高騰により44.7%の上昇と49年ぶりの上昇幅だった。原料のカカオ豆の価格上昇でチョコレートは9.8%、肉類は肥料のコスト上昇で輸入先での価格が上がり、4.1%の上昇だった。生鮮食品を除く全522品目中、上昇したのは394品目。8月は387品目で、5カ月ぶりに上昇品目が増加した。
介護倒産が年間最多、訪問介護が半数
東京商工リサーチは11月7日、介護事業者(老人福祉・介護事業)の今年1-10月の倒産件数が145件となり、これまでの年間最多(143件、2022年)を上回り、2カ月を残し過去最多となったことを発表した。
業種別では訪問介護が過去最多の72件と半数を占め増加要因となった。短期入所は48件、有料老人ホーム11件となった。事業規模別では資本金1000万円未満が86.2%、従業員10人未満が83.4%を占めた。
同社は、「ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、2024年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性がある」と分析した。また、「効率化」が進む大手と小・零細の格差が広がっているとして、国や自治体の本格的な指導・支援がなければ、小・零細事業者の淘汰(とうた)が加速する可能性が高いと指摘、「このままでは介護事業者の倒産に歯止めがかからず、全国で『介護難民』の発生が現実味を帯びている」と警鐘を鳴らした。
女川2号機再稼働、避難計画疑問視される中で強行
東北電力は10月29日、女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機を再稼働させた。2011年の東日本大震災の影響で停止した女川2号機の稼働は13年ぶりで、被災地に立地する原発としては震災後初の再稼働。しかし、11月に入りトラブルで停止させた。
女川原発は福島第1原発のような事故には至らなかったが、外部電源5系統のうち4系統が断たれ、1号機ではタービン建屋地下の電源盤から火災が発生、2号機では配管トンネルなどから原子炉建屋地下に海水が入りポンプや熱交換機が水没するなど、深刻な事故と隣り合わせの状態に陥った。
女川原発の避難計画の対象となる原発から30キロ圏内には約19万人が暮らしているが、今年1月の能登半島地震でも地震・津波で主要道路が寸断され孤立集落が生じたように、避難計画には実効性がない。運転差し止めを求める住民訴訟も闘われているなかでの原発再稼働は住民の生命・健康を危険にさらす暴挙だ。