2025年1月9日 日本労働党沖縄県責任者・田中剛
沖縄県本島中部で昨年11月、30歳代の在沖米海兵隊員が20歳代女性への性的暴行の容疑で書類送検されたことが報じられた。事件の一報を受けて、玉城デニー知事は「激しい怒りを覚える」と述べた。県民の命と尊厳を守る知事として真っ当な発言である。
われわれは事件を引き起こした海兵隊員自身はもちろん、所属する在沖米軍当局、米国政府に断固たる抗議の意を表明する。また被害に遭った女性への最大限のケアと補償を関係当局に強く求める。
度重なる米兵によるあらゆる犯罪行為に、県民は「またか」と怒りを募らせている。昨年12月には女性団体が主導した、米兵の性犯罪に抗議と再発を求める県民集会が開かれたばかりである。事件発生の昨年11月は一連の米兵による性的暴行事件が報じられているさなかであり、米軍当局がいう「再発防止」がまったくのデタラメであることがまたも明らかになった。嘉手納基地司令官は米軍関係者による相次ぐ性犯罪について「小さな一側面」と言い放った。県民の命と尊厳は、米軍基地と「共存」できない。
米軍・米兵に治外法権的な特権を認めている日米地位協定が連続する米兵犯罪の大きな要因であることは明らかである。日米地位協定の抜本改定は待ったなしである。
だが、事件を受けて石破政権は「米側に再発防止策の徹底を」(林官房長官)と従来と変わらぬ姿勢に終始、米側へ「再発防止」を懇願するだけである。米側に抗議の声一つ上げない姿勢は到底、独立国とは言えないものだ。昨年6月、2023~24年に沖縄県内で起こった米軍関係者による性的暴行事件を政府、県警が県に知らせず、隠ぺいしていた問題が発覚している。県民は事件の元凶である米軍当局にはもちろん、政府に対しても怒りと抗議の声を上げた。しかし、石破政権の姿勢はそれを顧みたものとは言えない。「事件事故の防止に本気で取り組もうという姿勢は見えない」(沖縄タイムス)という指摘は至極当然である。
本当に石破首相が「地位協定の見直し」を持論とするならば、今回の事件を機に米国政府に対して地位協定の抜本改定を毅然と提起すべきである。
米国の中国への「台湾有事」策動とそれに追随する政府の下、沖縄県下では米軍主導による日米共同訓練が続き、軍事作戦の具体化が進められている。特に宮古、八重山では自衛隊基地の強化・拡大と併せて米軍艦船の入港など県内全体で基地負担が増加している。昨年、米軍関係者による性犯罪事件が4件あったとされている。これは過去10年間で最多だが、それさえ「氷山の一角」と言われている。戦争準備が進む中、真っ先に犠牲になるのは女性であることがまたも示された。
われわれは米兵による相次ぐ事件・事故の温床であるすべての米軍基地の整理・縮小、撤去を強く求める。その根拠となっている日米安保条約の破棄を呼びかける。当面してはあまりに不平等な日米地位協定の抜本改定を実現するための世論形成、具体的な取り組みに全力を挙げる。
日米地位協定の抜本改定一つとってみても、それを実現するには県民の団結こそ決定的である。1995年10月に海兵隊員による少女暴行事件に抗議する県民大会には8万5000人もの人びとが集まり、日米地位協定の見直しを訴え、当時の日米両政府を震え上がらせた。それから30年経つ今年こそ、日米地位協定の抜本改定を実現しよう。