第20回全国地方議員交流研修会が1月29日〜31日、那覇市で開催された。
20回目の節目となる今回の交流研修会は、戦争への不安や生活苦からの打開を求める国民の願いに、政府も与野党も十分には応えられず、国民の政治不信がますます深まっている状況の中で行われた。参加者は、住民の生活と福祉に密着している地方自治体から国の政治を変えていくことを確認した。またそのためには「二度と戦場にさせない」と平和を希求する県民意思が強く示されている沖縄につどい、自治体議員同士の研修・交流を深め、これを平和と国民生活、地域主権を守る運動の前進につなげようと誓い合った。
交流研修会には全国各地から超党派の自治体議員約350人が結集した。3日間、熱心な討議と交流が行われた。1日目の記念講演や特別報告で基調的な問題提起、2日目の5つのテーマに分かれての分科会と全体会でのまとめ、3日目の沖縄現地のオプショナルフィールドワークという充実した内容だった。

全体会では「日米地位協定の抜本的な見直しを求める決議」を全体で採択した。主権国家の矜持(きょうじ)をもって連帯して、地位協定の抜本的見直しを全国に広く発信し、全国地方議会で決議し、国民世論を盛り上げること、また「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」や「日中不再戦自治体議員の会」の運動を継続して、全国的に広めていくことなど、具体的な行動を共同して行っていくことも確認された。
1日目は、共同代表の藤本眞利子・和歌山県議の開会あいさつに続いて、歓迎あいさつを沖縄県実行委員会代表の山内末子県議が行った。また沖縄県地元から3人、知念覚・那覇市長(代理)、仲宗根哲・連合沖縄会長、嵩原義信・JAおきなわ代表理事が来賓あいさつをした。
記念講演で登壇した玉城デニー知事は、「沖縄、日本を再び戦場にさせてはならない」とのテーマで沖縄の現状を伝えた上で、「米軍犯罪があとを絶たない沖縄の実態を全国の自治体に広く伝えてほしい。日米地位協定の抜本的な見直しが必要だ。国際平和創造拠点としての沖縄をつくっていきたい」と訴えた。
特別報告では、羽場久美子・青山学院大学名誉教授が「戦後80年、私たちから平和をつくる︱欧米からグローバルサウスの時代へ」というテーマで、「日本は戦争を続ける米国についていくのではなく、発展するグローバルサウスと結びつくべき。日本全国の地域から、自治体から日中不再戦、二度とアジアに侵略しない運動をつくっていきましょう」と発言。また、鈴木宣弘・東京大学特任教授がビデオ出演し、「命、子ども、食料を守る政策に財政出動するべき」とし、日本型の所得補償と食料自給率向上の政策を訴えた。
続いて、映画監督の三上智恵さんが登壇した。三上さんは「米軍基地・自衛隊基地に翻弄(ほんろう)される沖縄」をテーマに制作した5本の映画を紹介しながら、「皆で手をつなぎ逆に向かって歩き始めれば流れも変わる」と熱く語った。また、伊良波純子・沖縄県女性団体協議会会長から、昨年12月に行われた米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会と国会要請行動について報告があった。
前回の長崎での交流研修会後に発足した「日中不再戦平和友好をすすめる九州自治体議員の会準備会」から訪中とその後の報告会、「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」から国への要請行動などについて報告がされ、最後に問題提起を山本正治・広範な国民連合事務局長が行った。
1日目夜には、名刺交換会で各地域ごとに登壇した自己紹介、沖縄のエイサーの演奏などで大いに盛り上がった。
2日目の午前中は、以下の5つの分科会が行われた。それぞれ30〜80人ずつ、座長をつとめた地方議員の運営で、識者からの基調提起や各議員からの事例報告を受け討論し、交流を行った。
第1分科会は「日中不再戦 自治体・議員の役割」、第2分科会「農業・農村を守り、食料自給を確立するために」、第3分科会「岐路に立つ日本の社会保障 地域のケアをどう支えるか」、第4分科会「『こども計画策定』にあたってこどもの貧困の解消へ」、第5分科会「防災・復興、原発問題を考える地域主体の再生へ」だった。午後からの全体会では、各座長から分科会の報告が行われた。最後に「日米地位協定の抜本的な見直しを求める」決議が提案され、拍手で採択された。
3日目のオプショナルフィールドワークは、約200人がバス5台に分乗し、沖縄戦跡を訪ねるグループと辺野古基地建設の現地を訪ねるグループに分かれて研修交流を行った。
交流研修会は、内外とも歴史的転換期といわれる情勢のもと、物価高騰で国民大衆の生活がいちだんと厳しくなる一方、政府だけでなく与野党も十分に対応できていない中、全国から、しかも超党派で集まった自治体議員が「地方から政治を変えていく」と意気を高め交流と連帯を強めた、画期的な取り組みとなった。
地位協定改定を国へ要請
交流研修会実行委員会は2月6日、国会内で外務省や防衛省の担当者と面談し、日米地位協定の抜本的見直しを要請した。
要請行動は、沖縄実行委員会代表の山内末子県議の発議で、全体会で確認された「決議」に基づくもの。実行委員会共同代表の北口雄幸北海道議、藤本眞利子和歌山県議、山内末子沖縄県議をはじめ、全国から20人以上の自治体議員が出席した。また北海道や沖縄選出の衆参国会議員9人が駆けつけ国への要請を後押しした。
政府側から外務省と防衛省の担当者が出席したものの、石破首相の改定主張の認識にすら至っておらず、参加した議員らは姿勢を正すよう迫った。