第21回全国地方議員交流研修会が10月27日〜29日の3日間、札幌市で開催された。約200人の地方議員が参加、地域の生活、平和で豊かな国をつくるための研修会を行った。

一日目の開会あいさつで、全国実行委員会共同代表の山内末子・沖縄県議は「初の女性首相が生まれたが手放しで喜べない。子育て、ジェンダーの視点から見れば社会の流れと逆行し戦争に向かう政治。戦争と貧困を避けることが政治の基本だ。沖縄では米軍基地強化や自衛隊の配備が進み、大変な危機感がある。政権に対して注視しながら国民が何を求めているかを見定めて、それを丁寧に共有していこう」と研修会の趣旨について述べた。
歓迎あいさつは現地実行委員長の市橋修治・北海道議が行い、「今年は戦後80年だが、戦前の一年目と言う人もいる。来日するトランプは防衛費の増額を要求している。北海道は日本の食料基地だが、経営が成り立っていない、道内の各市町村は地方衰退で財政的にも行き詰まり、介護・医療制度が持続できない。泊原発再稼働に向けた動きなどに直面している。地方議員としてどのような立ち位置で国の政策に迫るのかが問われている」と述べた。
来賓あいさつの後、鈴木宣弘・東京大学大学院特任教授が「令和の米騒動の教訓—食の属国から自立の国へ」と題した記念講演を行った。また、特別報告として羽場久美子・城西国際大学特別栄誉教授、高橋宏通・令和の百姓一揆事務局長、佐藤英行・泊原発立地4町村住民連絡協議会代表が、問題提起として北海道高校生平和大使の2人の学生、アジアの平和と未来をひらく若者訪中団に参加した大学生の金澤伶さん、笹の墓標強制労働博物館の殿平善彦氏が発言した。
鈴木氏は「令和の米騒動の犯人は、米の供給を絞った政府だ。日本の栄養不足人口は他国と比べても多い。農業問題は消費者の命の問題だ。ミニマムアクセス米についても米国と35万トンの密約がばれた。日米交渉で60万トンを入れ米国の農家に日本が補助金を払っていることになっている。食料自給の確立を求める議員連盟の活動を強め、県など自治体ごとに自給率を高める運動を進めていこう」とよびかけた。
羽場氏は「なぜ野党は政権交代できなかったのか」と問題提起し、今後の課題として、あらゆる野党との共同、若者の重視、非正規労働者の組織化、自治体から声を上げること、生活苦をかかえる人びとの生活と基本的人権を守ることを挙げ、地方議員の活動と若者の活躍に期待を寄せた。また金澤伶さんは若者が何に直面しているかぜひ共有してほしいと訴えた。
これらを踏まえ、広範な国民連合事務局長の山本正治氏が基調報告し、「共通テーマは『日本を変える!地方から変える!』。戦後日本政治が分水嶺(れい)に直面し、解決策を模索する。それは文字通り国民全体の課題だ。地方議員に皆さんが先頭に立たれることは大変重要で意義深い」と述べ、①排外主義に反対、東アジアの平和、「多文化共生社会」をめざす、②社会保障の確立をめざし自治体議員連盟を発足する、③「食料自給の確立をめざす議員連盟」と「日中不再戦地方議員の会」を発展させる、④日米地位協定改定へ自治体議会から世論を喚起・発展させる、との4つの共同をよびかけた。
2日目は5つの分科会に分かれて助言者を交えた事例報告と討論が行われた。第1「日中不再戦・日米地位協定の抜本改定に向けて」、第2「国民の食料自給を確立する」、第3・第4「公的責任で社会保障確立を 介護と医療/生活困窮者を自治体が支える」、第5「持続可能なエネルギーの地域自給をめざして」で、真剣な討論が行われた。それぞれこんにちの日本社会が直面している重要なテーマだ。
最後に、外国人受け入れと多文化共生社会の実現を求めるアピールと、「社会保障の確立を求める議員連盟」設立について提案が行われ、採択された。
閉会あいさつで実行委共同代表の藤本眞利子・和歌山県議は「連携し地方から政治を変えていくために、各自治体の現場でここで採択された趣旨をアピールしてほしい」とよびかけた。
3日目は現地フィールドワークとして、ウポポイ民族共生象徴空間や北海道開拓記念館を訪ねた。
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今回の研修会は自民党を中心とする政治が限界を迎え、国政レベルでの議会政治と政党関係が新たな状況になったなかで行われた。
国民がこれまでの政治を拒否し、現状打開と変化を求めた直接の背景は、貧困と格差拡大が放置され、年金・介護・医療などの社会保障が後退、そこに近年の物価高騰、主食であるコメさえ食べられない、などの積もり積もった不満や不安があった。だが政治がこれに応えられていない。自民党が窮地に立っても政権交代さえなしえなかった。
戦争を回避し、中国や韓国はじめアジア諸国との連携強化や、気候危機への対処、経済的格差の是正、食とエネルギーの自給、社会保障や防災・インフラ整備の確立も待ったなしだ。国民生活を持続可能で豊かにするために日本社会の立て直しが求められている。
これらは地方自治、住民福祉と平和のために日々活動する自治体議員が直面し、打開や政策方向が求められているものばかりだ。
折しも研究会当日に米国トランプが来日、首脳会談が行われた。衰退する米国が「自国第一」の関税攻撃や防衛費増などわが国にさらなる負担と犠牲を押しつける今こそ、対米従属から脱却し、独立・自主の国づくりが求められている。
新たな政治を打ち立てるために具体的な事例にぶつかりながら切磋琢磨(せっさたくま)する全国各地の地方議員が連携をさらに進めれば、政治を変える大きな力になりうることが実感できる研修会となった。