第27回参議院議員通常選挙が近づき、マスコミなどは「消費税問題」が争点と報じている。
自民党は消費税減税と給付金支給をいずれも否定、野党は「消費税をどの程度の期間、何%に下げるか」という議論に終始している。立憲民主党は「1年間の食料品の消費税ゼロ」、国民民主党は「時限的に5%への減税」、日本維新の会は「2年間の食料品の消費税ゼロ」、共産党は「5%への減税」、社民党は「即時、食料品の消費税ゼロ」、れいわ新選組は「消費税廃止」などである。
消費税問題は、生活苦にある国民にとって切実な課題である。だがそれだけでは、危機的状況に追い込まれている国民生活・国民経済を再生させるためには到底足りない。まして「食料品の税率ゼロ」では価格低下につながらず、むしろ弊害が多いという指摘もある。
【関連記事】寄稿/食料品ゼロ税率はなぜダメなのか(湖東京至・元静岡大学教授、税理士)
現在の与野党の「議論」は些末(さまつ)なもので、国民生活を真に再生させるためのものにはなり得ない。対米従属政治への怒りと不満を高め、反政府的機運を高め、行動を始めている国民諸階層の願いに応えられるはずもない。
消費税は廃止以外にない。それを中心に「大企業と資産家優遇」の税制を転換し、かれらに負担を求め、「国民生活再生」のために財政を大胆に使う方向へと抜本的に転換させなければならない。
与野党「論戦」は欺瞞的
こんにち、世界は歴史的転換期にある。中国を中心とするグローバルサウスが主導的役割を果たすようになる一方、衰退する米国は軍事力と米ドルを武器に巻き返し策動を強め、東アジアでは戦争の危機が高まっている。わが国のあり方が厳しく問われている。
激変のなか、わが国は国民多数の貧困化と「格差」拡大、少子高齢化と人口減少、相次ぐ自然災害、政府累積債務の増大、アジアでの戦争の危機などの難題を抱えている。
とくに、国民生活は深刻な危機にある。労働者の実質賃金は下がり続け、アベノミクスとコロナ禍、物価高騰などで国民生活はいちだんと悪化している。大企業と中小零細企業間、正規と非正規間などの「格差」は著しく拡大している。
大企業はトランプ関税を「構造改革の好機」(新浪・経済同友会代表幹事)と位置づけ、日産、マツダ、パナソニックなどが次々と大規模リストラ策を打ち出している。労働者、下請け企業にとってはさらなる犠牲である。
わが国農業は存亡の危機にあり、農家経営は成り立たなくなっている。昨今の「米価高騰」は、歴史的な売国農政の責任である。中小零細企業は大企業からの圧迫や物価高騰に加え、インボイス制度導入による税負担が重くのしかかり、倒産・廃業が相次いでいる。
国民の生活苦を背景に、既存の政治・政党への不満と怒りが高まり、政治変革を求める行動が強まっている。自公与党が半数を割り込んだ昨年の総選挙結果もその反映であった。最近の世論調査でも、「野党中心の政権に交代」すべきとする有権者は48%と、「自民党中心の政権の継続」の36%を上回っている(読売新聞)。
深刻な国民生活を再生させるには、思い切った減税や財政支出が必要である。消費税問題は重要だが、そのための一部である。
だから現在の与野党の「論戦」は、国民生活の打開のための方策としてはきわめて部分的なものにすぎない。むしろ「票目当て」の欺瞞(ぎまん)で、国民を愚弄(ぐろう)するものである。
多国籍企業のための税制転換を
1989年に3%の税率で始まり、こんにち10%に引き上げられた消費税は、どのような狙いで導入されたのか。ここに、わが国政治が「誰のためのものか」が、端的に表れている。
70年代のベトナム戦争を機に衰退を早めた米国は、80年代のレーガン政権下で「対ソ連」で巻き返しを図った。だが、財政と貿易収支の「双子の赤字」で米国経済はさらに弱体化した。
1985年、米国は世界最大の債務国に転落、代わって日本が最大の債権国となった。ドル暴落を恐れた米国は、同年、先進5カ国(G5)で、日本と西ドイツにドル安是正の「協調」を迫った。
この「プラザ合意」で、輸出主導のわが国経済は転換を迫られた。政府は「前川レポート」を作成、米国に市場開放を「誓約」した。大型店の出店拡大、農産物の市場開放などである。
他方、わが国大企業は対外投資を増大させ、多国籍企業へと発展した。
財界は、自らの国際競争力を高めるため、負担になる法人税の大幅減税を要求した。消費税は、その代替として導入された。輸出企業への還付もある消費税は、大企業にとって「笑いが止まらない」税制である。
消費税が3%で強行導入されると同時に、法人税は42%から40%に減税された。以降、法人税は消費税増税と反比例するように引き下げられ、現在は23・2%である。
東日本大震災を機に導入された「復興特別税」も、所得税への上乗せ分が2037年まで続くのに対して、法人税上乗せ分だけは2014年に前倒しで廃止された。
このほか、大企業に有利な研究開発減税は 年度に拡充され、現在の減税額は年間7500億円を超える。
所得税の累進課税も、1980年代は12段階で最高税率は75%であった。現在は7段階へとフラット化され、最高税率は45%でしかない。実効税率では37%前後で、これも欧州諸国と比べて低く、高額所得者に有利である。主に資産家が課せられる配当課税(キャピタルゲイン税)は20・3%で、フランスの30%(分離課税)など欧州諸国に比して低率なままである。
これらは、大企業と資産家に有利な税制の「氷山の一角」にすぎない。
消費税収の一般会計税収全体に占める割合は、税導入時の89年3・3%だったが、こんにちでは24・9%(2025年度予算)にまで拡大している。
対して、法人税の割合は1989年の19%が、同19・2%とほとんど変わっていない。「史上最高の法人税収」が宣伝されるなかでも、割合ではほぼ横ばいなのである。
まさに、国家財政の「消費税依存」が深まったのである。
その結果、多国籍企業は税負担が減ってボロ儲(もう)けし、国民は社会保障制度の改悪も加わった重税と生活苦にあえいでいる。
こうした「大企業に軽く、国民に重い」税負担を逆転させなければならない。
財源は大企業と資産家への増税で
減税は、財源を必要とする。財源論議を抜きにした減税は無責任である。
一部の識者、政治家は「通貨発行権を持つ国は、赤字財政でも破綻しない」というMMT(現代貨幣理論)を唱え、紙幣や国債発行を財源にすべき主張している。だが、「破綻しない」という根拠は怪しく、予想されるインフレに対処できる保証もない。
何より、「大企業に軽く、国民に重い」税制の転換なしの財政膨張は、結果的に、大企業と資産家にさらに奉仕する結果とならざるを得ない。国債発行も、その「使い道」こそ問われるべきである。
一方、立憲民主党や国民民主党、あるいは日本維新の会など野党の消費税「減税争い」には、減税のための財源に関する論議がほとんどない。政党として、無責任この上ないものである。
共産党は「内部留保への課税」を主張している。一定の財源にはなろうが、米国では内部留保への課税が投資家への配当増加を促しているという意見もある。これのみを「万能薬」のように唱えることには賛成できない。
わが党は、大企業と資産家に対する課税を抜本的に強化し、国民生活・国民経済の再生のための財源を確保すべきであると主張する。
中途半端な時限的減税ではなく、消費税を即時全面的に廃止し、大企業の法人税を増税すべきである。所得税と相続税の累進性強化や富裕層の資産への課税強化、かつての物品税のようなぜいたく品への課税など、大企業や資産家への課税こそ強めなければならない。
このような増税と併せ、米軍需産業に奉仕する巨額の軍事費や米軍への「思いやり予算」、大企業への各種補助金を削減・廃止する。
そうすれば、農家への所得補償など食料自給率向上に向けた諸施策、医療・介護をはじめとする社会保障制度の拡充などを含めて、国民生活・国民経済を守るための財源を捻出することは十分に可能である。
「消費税は社会保障財源」などというのは、支配層による思想攻撃である。労働組合は、このようなデマに惑わされてはならない。
わが党は、国民生活を少しでも改善するための闘争を重視し、推進する。国民生活の打開は、まさに「待ったなし」だからである。
中央でも地方でも、心ある政治家、労働組合、学者・文化人、女性、青年・学生の皆さんに、共同の闘いを呼びかける。
その上で、税制の抜本的転換には、現在の対米従属で多国籍大企業のための政治を打ち破り、独立・自主で国民大多数のための政権を樹立することが最大の保証となることを訴える。