世界のできごと
G7サミット、国際的な影響力の低下が加速
先進7カ国首脳会議(G7サミット)が6月13、14日、イタリア南部プーリア州で行われた。
ウクライナへの新たな支援策としては、制裁で凍結したロシアの資産を活用することで合意、米欧各国で「支援疲れ」が指摘されるなか、改めてウクライナへの支援を続ける姿勢を示した。
中国をめぐっては、中国産電気自動車(EV)が米欧市場でシェアを延ばしている現状を「過剰生産」などと決めつけ、G7で連携して対抗することを確認した。だが、米欧日間の温度差がある上、関税引き上げには各国の経済界からも反対の声が上がっている。
そもそも、サミットは1970年代に顕在化した通貨・貿易・エネルギーなどの問題に対し西側先進国が協調する場として発足、冷戦終結後も先進国が自らの世界支配のために協調を維持する場として機能してきた。
しかし、先進7カ国の経済力とや国際的影響力は年々低下している。新興国の代表格であるBRICS主要5カ国(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)の世界経済に占める比重は2021年にG7を逆転、24年にはG7の世界経済シェアは3割を切ると見られている。
同時に、ウクライナ戦争支援やイスラエルのパレスチナ・ガザ攻撃に対する姿勢などでグローバルサウスと立場の違いも顕在化、またG7各国内の階級矛盾の激化から政権基盤の弱体化も進むなど、G7サミットはかつてなく国際的な影響力を失っている。昨年の広島サミットと比べても衰えは著しい。
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平和サミット、「グローバルサウス抱き込み」不発に
ウクライナのゼレンスキー大統領が2022年11月に発表した和平案「平和の公式」を議論する「世界平和サミット」が6月15日から、スイスのビュルゲンシュトックで開催された。
イタリアでのG7サミットを終えた岸田首相らに加え、グローバルサウスの代表を含む100の国と国際機関が参加した。だが、ロシアのプーチン大統領は招待されず、中国は欠席、米国のバイデン大統領も自身の大統領選に関連した行事を優先し欠席した。
また、参加国やサミットを主催したスイスからもロシアの参加が必要という声が相次ぎ、採択された共同声明にはインド、南アフリカ、ブラジル、サウジアラビアなどが不支持に回った。
ウクライナ戦争を米欧やウクライナに有利な形で終わらせるために画策された平和サミットだが、米欧のバックアップは細る一方、グローバルサウスからはパレスチナと比較して二重基準で優遇されるウクライナの「和平への本気度」が疑われており、平和サミットはすでに形骸化している。
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世界の難民、パレスチナ情勢などを受け「日本の人口の規模」に
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月13日、世界の難民や国内避難民の数が1億2000万人に達したと発表した。イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への侵攻などを受けて過去最多となり、国連は「日本の人口に匹敵する規模」として強い懸念を示している。
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人民のたたかい
イタリアで主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれた6月13、14日、平和や経済格差、環境問題などをテーマにとする抗議デモが各地で行われた。会場とプーリア州ファサーノでは14日、市民団体、労組、環境活動家ら約300人がデモ行進し、「地球破壊をやめろ」「平和を」などと書かれた横断幕や、イスラエルが侵攻するガザに連帯してパレスチナの旗を掲げた。
フランス全土で6月15日、極右政党「国民連合(RN)」に抗議する大規模なデモが実施された。欧州議会選挙で与党連合がRNに大差で敗れ、マクロン大統領が総選挙の実施を決め、RN党首のバルデラ氏が次期首相になりかねないことを憂慮した労働組合や学生団体、人権団体が呼びかけた。パリ、マルセイユなど少なくとも150の行進が計画され、参加者はパリで25万人、全国では64万人に上った。
ブラジルのサンパウロで6月15日、妊娠後期の中絶を禁じる法案に反対するデモが行われた。法案は保守派のボルソナロ前大統領が率いる極右の野党自由党(PL)議員が提出したもので、可決されれば、妊娠22週目以降の中絶は一部の例外を除き、殺人罪として禁錮6〜20年を科される。サンパウロ中心部に集まった女性たちは、国会議員に法案を破り捨てるよう求めた。ブラジリア、リオデジャネイロなどでも同様のデモが行われた。ルラ大統領も、「レイプ犯よりも重い刑罰を女性に科すのはばかげている」と指摘した。
日本のできごと
食料困難対策法成立、農家に作付け強制の悪法
食料供給困難事態対策法が6月14日、参院本会議で自公与党などの賛成多数で可決・成立した。
同法では、戦争や異常気象などによって食料不足の兆候が生じた際には農家に増産を「要請」する。実際に食料不足が起きるなど「食料供給困難事態」とされると、「要請」から「指示」に切り替わり、農家に増産計画の届け出を命じ、従わない場合は罰金を科す。それでも食料が確保されない際には、さらなる増産など計画の変更を指示され、従わない場合は罰金を科す。さらに食料不足が深刻化すれば、作付け品目転換を含む計画変更を命じられ、国民には配給制度が実施される。
これらの過程で必要な場合は農家は立ち入り検査を受ける。検査を拒んだり、求められた報告をしない場合は罰金となる。届け出計画通りに生産していないとされると名前を公表される。
同法は、米国の先兵となって他国と戦火を交える事態も見据え、農家に作付け統制・生産転換を強いる内容で、食料安全保障の責任を挙げて農家に押し付けるもの。米国の言いなりとなって市場を開放し、離農を促進させ農地を荒廃させてきた戦後農政への反省もなく、価格保障・所得補償で平時から農家と食料生産を支え発展させる姿勢も責任感もない。離農を促進するだけの悪法は撤廃されるべきだ。
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改悪入管法・技能実習法成立、人権侵害の温床を存続
技能実習制度に代わり、「外国人材の育成と確保」を目的とした育成就労制度を創設する改定出入国管理・難民認定法案が6月14日、参院本会議で自公与党や維新、国民などの賛成多数で可決・成立した。新制度に対しては、技能実習制度の問題に取り組む識者などから「人権侵害の温床となっている技能実習制度を実質的に存続させる」と反対の声が出ていたが、岸田政権は押し通した。
まだ改定法では、「将来的に永住者の増加も見込まれる」との口実で外国人の永住資格の取り消し要件が拡大され、納税や社会保険の支払いを滞納した場合などには永住許可を取り消すことができる規定も盛り込まれた。これも、在日外国人や人権団体などから批判されていた。
また10日には、難民申請者の命や人権を脅かすことが危惧される強制送還のルールを見直した改定出入国管理法が施行された。
岸田政権の下、外国人に対する差別・人権侵害を助長する施策がまかり通っている。日本への国際的信頼は低下するばかりだ。
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5月の倒産11年ぶり1000件超、コロナ支援終了に物価高・人手不足が打撃
東京商工リサーチは6月10日、5月の企業倒産件数(負債額1000万円以上)を発表した。前年同月比42・9%増の1009件で、2022年4月から26カ月連続で前年同月を上回った。倒産件数が1000件を超えたのは13年7月(1025件)以来で、増加率は昨年8月(前年同月比54・4%増)に次ぐ高水準となった。
また、負債総額は1367億6900万円。前年同月比50・9%減だが、負債1億円以上10億円未満が235件(同35・8%増)と負債規模の大型化が目立ち始めている。
産業別では、サービス業他が327件で最多。中でも飲食業(106件)は前年同月比23・3%、老人福祉・介護事業(21件)は同250%の増加に。
地域別では、最多の関東(355件、同28・1%増)はじめ、全9地区で前年同月の件数を上回った。
同社は「コロナ関連支援が終了するタイミングで、円安・物価高・人手不足が経営にのしかかっている。仕事を確保しても資金調達が難しい『黒字倒産』なども交え、企業倒産は増勢をたどる可能性が高い」とみている。
岸田政権の政治による要因が多く、責任は重大だ。
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「男女平等」で日本118位、経済・政治で依然として大きな格差
世界経済フォーラム(WEF)は6月12日、世界各国の男女の格差を示す「ジェンダーギャップ指数」の2024年度版を発表した。日本は総合ランキングで146カ国中118位と、過去最低だった前年(125位)から大幅な改善は見られなかった。特に政治や経済の分野で大きな遅れが目立ち、主要7カ国(G7)では引き続き断トツの最下位となった。
経済分野では123位から120位へと若干改善したが、男女格差がない状態で1となる指数では、0・568で、WEFは「格差が依然として縮まっていない」としている。政治、行政、経済分野の指導者や幹部職は6人中5人が男性で、「依然として重大な格差がある」として、推定所得の格差指数も0・583と大きな開きがあった。
政治分野では138位から113位へと上昇したものの、国会議員に占める女性の割合は11・5%にとどまっており、「長年わずかな動きしかない」と厳しく指摘された。
完全な平等を100としたときの日本の達成度は66・3で、同調査が始まった06年の64・5から18年間ほとんど改善していない。自公与党の責任は重い。
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