20020101

日米基軸脱却、アジアと共生し日本の活路を
危機突破、共同して小泉政権と闘おう

2002年新春インタビュー

日本労働党中央委員会副議長 山本 正治


 

  • 世界はどう動く
     米国テロ事件の影響
     世間はどういう気持ちか
     米国指揮の大合唱に加わった共産党
     テロの背景をかくす共産党
     そのグローバリズムとは
     結局、事件をどうみておくか
     マレーシア、ベトナムに行って学んだこと
     メリハリつけて山へ行こう

  • 日本の政治はどうなる
     小泉の支持率はホンモノか
     小泉となれ合う野党の責任
     2大政党制の策動はうまくいくか
     敵の難問−労働運動、社民勢力など

  • 労働党はどう闘うか
     
    国民経済、国の進路の課題で
     生活危機打開のために
     労働運動の前進のために


  • 全国の同志の皆さんへ

(2)日本の政治はどうなる

−−昨年の党旗開きで山本さんは、日本はあらゆる方面で行き詰まった、と語られた。経済はもちろん、政治や安全保障、社会的にもさまざまな方面で、実例をあげて、日本は行き詰まったと。1年たって、日本も大きく変化し、行き詰まりはいちだんとはっきりしてきたように思いますが。

山本 行き詰まりと閉塞感はだれも否定できないところとなりました。この危機をどう打開するか。今年はさまざまな具体的な動きが始まる、そういう可能性を含んでいるのではと感じている新年です。
 日本経済は、3年連続のマイナス成長で先進国では最悪の不況に陥りました。しかも世界同時不況ですから、財政はもちろんダメですが、日本が得意とした輸出を突破口に回復という絵が描けません。打つ手なしで、小泉のように居直るしかない。失業、倒産など、勤労国民の生活は耐え難いところとなった。個人消費も落ち込んで、デフレスパイラルですね。小泉政権は、こういう経済環境にあります。世界恐慌が起こったら、あるいは日本発の恐慌の危険も取りざたされる昨今です。
 奈落の底ですね。商工業者などから、暴動が起こらないのが不思議だとか、労働者はなぜストをやらないんだとか、そんな声をよく聞きますね。

小泉への支持率はホンモノか

−−にもかかわらず、なぜ小泉政権がかくも支持が高いのか。これからどうなるのでしょうか。

山本 昨年5月の議長発言の中で、小泉政権について、不思議なことに改革で利益を受ける者も、打撃を受ける者もどちらもとりあえず小泉の改革を支持しているとのべていました。直前の森政権のひどさなど日本の社会が全体として行き詰まっていたので、打開、改革を求める声はまさに広範な世論、国民的要求でしたから。そういう意味では小泉人気はまだ分化していない状況だと指摘しました。そしてその後、「骨太方針」が発表となって、どうやらさまざま痛みが避けられそうもないなあという話が少し伝わるだけで、支持が揺らいだ。
 それでも、「テロ反対」問題での反対派はほぼ政党次元ではいなくなりましたね。そういう意味では9月11日以降、しばらくの間は鳩山らのように、みな小泉政権の後押しをやったわけで支持が高まるのは当然なんですね。分化はむしろ止まった。
 そして11月になって、もう一度改革が焦点となったわけですが、ところが野党はこれも同様だった。特殊法人改革に対する問題での先日の各政党の談話をみても、あれは中途半端で不徹底だから、もっと改革をやれということです。鳩山のところはもちろんのこと、共産党、社民党もこの点ではそんなに変わらない。改革推進です。
 それからもう1つは、自民党内の抵抗勢力、ある意味ではここだけが小泉の改革にまさに抵抗している。その背後には、建設業界とか、特定郵便局長とか、自治体の首長たちなどという旧来の保守層、保守基盤の1番の中心勢力がいるんでしょう。ここが激しく抵抗して、この勢力対小泉、それに小泉を応援する野党と、今こういう構図になっているわけです。しかも抵抗勢力は、まさに自民党内の抵抗勢力であって、自民党なんです。政党支持や内閣支持でいえば小泉支持なんですよ。
 議会内の政治勢力でみると、自民党内の抵抗勢力といわれる連中も小泉政権支持です。野党もほとんどの人びとが改革推進で小泉の応援団ということです。だから、国民から見ると非常に分かりにくいですね。

小泉となれ合う野党の責任

−−そうすると、野党の犯罪が大きいですね。

山本 小泉改革の本質が暴露されていないんですね。これは、鳩山以下、不破まで含めて野党勢力に大きな責任があると思います。本来小泉に対抗すべき野党の弱さ、裏切りが、小泉がかくも支持を集める状況をつくっているわけです。小沢一郎や民主党のだれかが、与党と対決するのが野党だと鳩山を批判していた。まったく当たり前のことを発言したら、これがニュースになる。おかしなことです。昔よく、犬が人間に食いついてもニュースにならないが、人間が犬に食いつけばといわれた。
 しかし、もう青木建設の倒産のように、言葉としての痛みから現実の痛みにこれからは次々と変わっていくわけで、暴露の過程は早いと思いますよ。みんな「痛い」と言い、さまざまな業界、団体が決起大会をやって、改革反対と言い始めている。それだと思うんです。  いまのところ騒いでいるといっても、まだ穏やかなものです。これからはそうでなく、本当に痛いと感じる人びとが騒ぎ出すことになります。他に手段がなければ何でもする。米国でのテロのようなものかどうかはありますが、暴動のようなことも含めて、痛みに対する怒りの表現は避けられないと思いますよ。失業者だって黙っていられない。多くの人びとが黙っていられるかどうか、という局面に変わってくると思います。
 そうした認識を広める上で、小泉政権も批判しなければいけませんが、小泉を暴露せず、実質上擁護している「野党」も暴露しなくてはなりません。怒りを結集し政府に向ける必要があります。労働新聞の役割はますます大きくなります。

2大政党制の策動はうまくいくか

−−そうすると政治状況はどんなふうに移り変わるのでしょうか。党は、「支配層は中長期には2大政党制をねらっている」と一貫していってきましたが。

山本 財界、支配層が、今も2大政党制をたくらんでいるのは違わないと思います。でも、状況はずっと難しくなった。議会的方法での安定した支配は容易でないということだと思います。1980年代後半から、開放体制のもと構造改革が始まり、財政の行き詰まりなどもあって、政治再編が避け難くなりました。リクルート疑惑などもあり自民党は行き詰まった。財界は、国際競争に対処できる政権を求め、中長期には2大政党制での政治支配をたくらんだ。そうこうして93年の総選挙を通じて自民党の単独支配が崩壊しました。そして連立政権時代が始まった。それからもう10年余がたちました。
 経済構造が変わり、いよいよ財政もなくなり、ますますグローバリズムへの対応が迫られています。条件がより不十分になっていくもとで、政権を維持するために術策型、要するに野党をたぶらかしては、自民党政権を維持しているわけです。野党は、93年以降、政権のうまみに翻弄(ほんろう)されている。
 いま小泉政権ですが、小泉政権が行き詰まれば、小泉政権にいろいろとエールを送っている野党、とりわけ民主党が存在しています。小泉改革が行き詰まれば、何らかの再編、それなしには小泉は政権を維持できない。改革も進められないと思います。再編劇の可能性が高い。だが、自民党内では「抵抗勢力」もある。議員は、階級利害でも動くが、自分の議席維持と役職などでも動く。
 こんにち演じられている議会的なだまし合い(猿芝居といってもよいでしょうが)は、それが術策型であろうが、以前の利益誘導型であろうが、国民各層の現実の利害はほとんど反映していません。ところが、現実の利害の対立がだんだん激化し、闘争が顕在化する状況が急速に進むでしょう。各議会政党もこれへの対処をだんだん迫られると思います。
 他方で、支配層が議会支配の枠内に階級闘争を押し込めたい、何とかして米国型の保守2大政党制に移行して、安上がりな議会を使った政治支配を維持したいという策動を進めています。これには議会政党はおおかた協力しています。
 そのもとで、小泉政権の行き詰まりからこの局面の政治闘争がどういう結末を迎えるかは、まだせめぎ合いだと思うんですね。政党再編がどうなるか。すぐに議会外での闘争が決定的というふうに移り変わるとは思えませんが、動き出したら早い。間違いなくその移行期だと思います。
 その中で、われわれは役割を果たしたいと考えているわけです。

敵の難問ー労働運動、社民勢力など

−−こんにち、敵の政治的策略は中長期的には「2大政党制」にあるという見方でした。それを進める上でのポイントは労働運動ですね。

山本 そうです。支配層は、上層の労働運動、いわばグローバリズムを受け入れることが可能なような労働運動を取り込んで、保守2大政党制、つまり米国の民主党の足になるような労働運動に、このままじわっと連れ込みたいと、中長期に狙っているところです。
 しかし、危機の深まりで、労働運動が支配層の思惑通りには収まりにくくなっている。ここが支配層の泣き所ですね。つまり、いわばフライパンの温度が上がって、その上のゴマだか豆だか、しだいにはじけるように、矛盾が激化して各所で人民の不満がさまざまな形で噴出してくる。そのとき肝心なことは、とりわけ労働運動がどうなるかです。
 何度も繰り返しますが、たとえば、アルゼンチンの実例で考えると、暴動になって政権が野党に移ってさえも、やはり労働運動が登場しない限り、けりがつかない。米国が強硬に出てくれば、新政権も妥協するかもしれないし、したがって国内を弾圧するかもしれない。打ち勝ちうる力は、労働運動にしかない。そこまで労働運動の成長を支援できる政党の存在にかかっています。
 現状は、支配層の思惑からはずれたというには、まだいくらか距離があります。根拠のない楽観はできませんが、わずかな変化も見逃さず、闘いは支援し、変化は促進したい。昨年の参院選以降、連合と民主党の間に重大な亀裂が深まってきています。また、連合は最近は改革に対して自分たちは反対だと言い始めました。これは面白いことだと考えています。危機の深まり、リストラと失業、賃下げが普通になりかけている状況下では、当然といえば当然の動きです。
 こうした中で、敵の側は労働運動を取り込んで、保守2大政党制をやらなければならない。大変なことだと思いますよ。自治労中央の疑惑問題キャンペーンも、そういう一環としても見ることができる。「黙っておれ」という支配層の意思が表れているのではないですか。
 支配層は、政治支配で非常に難しいところにだんだん追い込まれていると思います。議会での支配では、2大政党制をたくらんでいるが、むずかしい。93年以来の策略型はあまりにも不安定。それを突き崩す、荒々しい「公然たる」諸階級の闘争が始まる足音が近づいている。こんな状況でしょう。
 その労働運動をにらみながら、政党がどんなふうになるか。とりわけ社民勢力は、一定の隊列を持っていれば、労働運動あるいは国民運動で重要な役割を果たすことがあります。これは戦後史の中でも何度も確かめられており、そこは見所ですね。それはまた、労働運動自身がどう変化し発展するかにも深くかかわっているわけです。
 社民勢力が、とくに社民党が、とりわけ労働運動と結びついて再建し、役割を果たそうとするかどうか。この点で、昨1年間の流れは必ずしも肯定的に見るわけにはいかないですね。土井党首が、自由党の小沢一郎氏などとあれこれ気脈を通じているように見受けられた。どう評価すべきでしょうか。やはり村山首相時代の路線転換問題などを、きちんと自己批判的に国民の前に明らかにすべきです。闘う党の再建、現場はそれを望んでいます。大会でもそうした意見が噴出していた。
 労働運動や国民大衆と結びついた、そこでの役割を果たすような社民勢力の結集、闘いを支持したい。

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