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米兵による死亡事故裁判を傍聴して 「日本はいまだ米占領下」痛感 あまりに軽い刑罰、断じて許せない

 神奈川県横須賀市には在日米海軍司令部があり、米軍関係施設4カ所が集中する。街には米軍人らしき人も多く、米兵が起こす事件や事故が後を絶たない。

 昨年9月、米軍横須賀基地所属の第7艦隊旗艦「ブルーリッジ」乗組員の2等兵曹が右折禁止の道路で右折し直進してきたオートバイと衝突、乗っていた伊藤翼さん(当時22歳)は無念にも命を落とした。

 この刑事裁判を傍聴した感想などを投稿したい。結論から言えば、私はこの傍聴を通じ、この国がいまも米国の占領下にあることをまざまざと痛感した。

米兵の危険な運転が横行

 今年5月7日に横浜地裁横須賀支部で裁判が始まった。100人を超える人が傍聴希望の列をつくり、関心の高さがうかがえた。私は運よく抽選に当たり、傍聴することができた。

 在日米軍の刑事裁判は、一般的な裁判とは違い、在日米軍法務官らが立ち会う。これは地位協定17条で「合衆国政府の代表者を裁判に立ち会わせる権利」が保証されているためだ。「無言の圧力」というところか。翼さんのご両親も意見陳述するために席に着いた。通訳も入り、裁判が始まった。

 まず事故の検証が行われた。事故を起こしたとき、被告は救命活動をせず、憲兵隊に連絡して憲兵隊の到着を車の中で待っていたという。その間現場近くにいた人たちがAEDを使って救命活動した。市民の通報によって日本の警察が現場に着いたものの、被告はその後到着した憲兵隊と共に基地に帰ってしまった。

 被告は「事故を起こした場合はまず憲兵隊に連絡するように言われている」と証言した。現場に警察と憲兵隊が両方いた場合は、原則として憲兵隊が拘束するという日米合意があるとのこと。先に日本の警察が現場にいても現行犯逮捕できないということであり、理不尽極まりない。

 さらに被告は「事故後も運転の制限はされなかった」と証言した。実際に事故後も基地内で運転を続けていた。死亡事故を起こしても免許も取り消されないとは! 日本では当然取り消しだ。米本土でも許されないことではないのか。

 そもそも「外国免許切替制度」によって、外国人の運転には日本の警察の許可が必要だ。だが在日米軍人の運転許可は、米軍が行う講義を受け簡単な筆記テストに合格すれば、実技試験もなく1日で取得することができる。フリーパスに近い状態で日本国内で運転していることになる。

 見えてきたのは、米兵が日本の標識や左側通行についての十分な経験や知識がないままに危険な運転をしている現実だ。

「なかったことにしないで」

 続いて被害者の両親の陳述が行われた。父親は「家族は亡くなったことを受け止め切れずにいる。これから仕事に行くとバイクで出かけたのに。何が何だか分からない中で、遺体だけが帰ってきた。遺体が帰ってきたとき雷が鳴り響き、翼の怒りのようだと感じた。これから幸せな人生があったはず。これは危険運転による殺人だ。被告は刑に服しても社会復帰できるが、私たちはもう翼に会うことはできない。執行猶予を付けない実刑を望む」と、つらい心情を語った。

 母親は「いまだに信じられない。涙が出て、何も楽しむことができない。息子は安全運転をしていた。事故は被告のルール違反で起こったのに、加害者の名前すら教えてもらえなかった。救命もしなかった。反省しているようには見えない。何事もなかったようにしないで。刑務所で罪を償い、息子の命の重さを考えてほしい」と厳罰を訴えた。息子の命を奪われた両親の悲しみと怒りに、共感の思いが広がった。

司法へのあからさまな圧力

 この裁判に関して、在日米海軍の法務部長から裁判長に「執行猶予の付いた判決が出た場合は、被告人を迅速に米国に移送する」という書簡が送られていたことが明らかになった。これに対し遺族の代理人を務める呉東正彦弁護士は「これは司法独立に対するあからさまな圧力」と、米軍の司法介入に憤った。

 後日、裁判長は禁固1年6カ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。日本人が同様の事故を起こした場合は、4-6年の懲役または禁固刑だ。それに比べてあまりに軽い刑だ。司法が米軍の圧力に屈したとしか思えない。両親は「息子の無念さを思うとあまりに悔しく、断じて許せない」と判決を批判した。

 日本で罪を犯しても米国に逃げ帰れば免罪される。日本人の人権や命がここまで軽く扱われていることに怒りをおぼえる。横須賀市ではこの4月にも米兵の車がバイクと衝突し、バイクの男性が死亡した。米軍の言う「再発防止」は言葉だけだった。

 これは「第二の基地県」と言われる神奈川の現実だ。最も米軍基地が集中する沖縄での米軍の無法ぶりはさらにひどいはずだ。

 1960年にできた不平等な日米地位協定は、日本の主権を損ない続けているが、まだ一度も改定されていない。またその内容も非常にわかりにくい。

 神奈川県では、各自治体に対して日米地位協定改定を求める意見書採択の請願や陳情の運動が広がりをみせている。敗戦から 年がたった今、いつまで日本は米国の植民地であり続けるのか。再考すべきではないか。(神奈川県・K)

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