会計年度任用職員など非正規公務員の処遇改善に向けた取り組みが進んでいる。当事者である非正規公務員や労組、女性団体、市民団体、地方議員・議会、司法関係者、教育・研究機関、報道機関などの連携も進んでいる。公務非正規問題自治体議員ネットの発起人の一人でもある江川あや・北海道旭川市議会議員に聞いた。(文責編集部)

私は市会議員として非正規公務員の処遇を改善する課題に力を入れて取り組んでいます。私自身が非正規公務員として「身分差別」のような経験をしてきた元当事者でもあるからです。
非正規として働いて
私は「就職氷河期世代」「ロストジェネレーション」と言われる世代です。大学と大学院で学び、図書館司書の資格を取得しました。しかし、自分らしく働きたいと目指した図書館司書には、正規職員の求人は皆無でした。
図書館司書に限らず、学校や女性関連施設の相談・支援員や給食調理員、学芸員、保育士など、その仕事に就きたいと思えば非正規雇用しかほぼ選択肢がないという職種があります。女性の割合が高い職種が多く、制度設計の根本に「女性のやる仕事は待遇が劣っていてもいい」というような差別や偏見があるとしか思えません。「自分が専門的に学んだことを生かしたい」「社会に役立つ仕事をしたい」という熱意を自治体が悪用している「やりがい搾取」でもあります。
いろいろと葛藤はあったものの、非正規であっても図書館司書としてのキャリアを積みたいという思いから、「不本意非正規」として出身地である旭川市の図書館で嘱託職員として働き始めました。
図書館では、選書やレファレンスなどの図書館業務の中核を専門知識のある非正規の図書館司書が担っていましたが、待遇はアルバイト程度でした。一方、異動で配属された市の正職は私たちよりできることがずっと限られていたものの、給料は倍以上もらっていました。そのことを考えるといたたまれない気持ちになり、当時はあまり考えないようにしていました。
このような形態で働くなかで、非正規が自治体側に都合よく利用されていることを思い知らされる経験をしました。
働き始めて7年目の初夏、図書館のすぐ隣にある公会堂の改修工事で剥離剤が使用されたのですが、密閉が不十分なまま工事が行われたため、揮発した薬剤が窓から図書館内に流入する事故が起きました。
図書館で働いていた私は、「工業っぽい臭いする」と思ったと同時に一瞬で目の前が青くなりました。気のせいかとも思ったのですが、職員や来館者が次々と体調不良を訴える事態となりました。
この事故で私は一日にして化学物質過敏症を発症してしまいました。市は、図書館業務に支障を来たさぬことを最優先し、重症の職員を配置転換しましたが、私を含めた被害を受けた嘱託職員は翌年から任用を切られました。当時私は、職員研修を担当するなど図書館の中心的な業務を担っていました。当然、納得のいく説明を求めましたが、得られませんでした。「業務に差し支えるから薬剤反応しない人を雇いたい」というのが本音なのでしょう。市に掛け合いましたが労災としても扱われず、労組へ相談するも「あなたは非正規だから」と対応を拒まれました。
退職の際にもらった寄せ書きに、当時の図書館長が「ないものねだりではなく、あるもの幸せですよ」と記しました。「劣悪な処遇でも仕事があるだけありがたいと思え」とでも言いたいのでしょうか。健康被害を受けた上に切り捨てられ、さらに追い打ちをかける言葉で職場を見送られた…この経験は私が非正規の課題に取り組む原動力になっています。
旭川市での取り組み
2020年度から会計年度任用職員制度が始まりました。これにより、それまで自治体ごとにバラバラだった非正規公務員の採用や待遇のルールが全国的に統一されました。
この制度の大きな問題の一つが、任期と公募が導入されたことです。これによって、雇う側である自治体は「公平性」を名目に職員を都合よく雇い止めすることが可能となります。雇われる側の職員は、民間と比べても継続雇用が保障されていないため、常に任期を切られる不安を抱え続けることとなります。
2019年の統一地方選から政治の世界に入った私は、早速この課題に取り組むこととなりました。旭川市では元々、主に専門職である嘱託職員と臨時職員からなる非正規公務員がいました。それがおおよそ同じ待遇で会計年度任用職員へと移行されることとなり、その制度設計は同年9月の第3回定例会補正予算特別委員会で議論されました。それまでの嘱託職員と臨時職員の仕事内容が引き継がれること、その時働いていた人たちは、いったん公募にかけられるものの、基本的に再任用されることが決まりました。
その際に、生活給である基本給が実質的に下がることや、希望する職場で働けない職員が出ることなどを問題視し、議会で取り上げました。また離職者への離職票の発行を早めてもらうよう働きかけた結果、雇用保険の支給が1カ月早められるなど、運用が改善されました。
公募については、公募によらない再度の採用回数の上限を連続2回までとする取り扱い(3年公募制)を旭川市も採用していました。しかし、これを問題視する声の全国的な高まりを受けて、昨年6月に総務省が改める通知を出したことや、他の自治体で廃止する流れが広がっていることを受け、旭川市も廃止の判断をしました。
しかし、会計年度任用職員が1年ごとの任用であることには変わりはなく、人事評価制度でどう評価され、それが当該職員の任用継続にどうかかわるのかなど、不透明さが残されています。人事評価制度で不当な扱いをされている職員がないかを把握し、制度の改善につなげることが、当面の目標です。
議員ネット広げたい
公務員制度を理解することはなかなか大変です。労働法だけでなく地方自治法や地方公務員法などについてもよく知らなければなりません。
このようなことを勉強する過程で、北海学園大学の川村雅則教授や石狩市の神代知花子市議と知り合いました。お互いに協力し知識や経験を共有するなかで、「非正規公務員問題に取り組む議員ネットをつくり、もっと仲間を増やそう」という話が出てきました。先にお話しした経過で化学物質過敏症を発症した私は、香害問題に取り組む議員ネットなどの結成や運営にもかかわっていたので、ネットワークをつくることの利点を実感していました。こうした経過で、2024年8月に「公務非正規問題 自治体議員ネット」を立ち上げることとなりました。
同じ自治体の議員は、選挙では票を取り合うライバル関係にもなりますし、取り上げる課題についても「縄張り意識」が働いたりします。しかし、他の自治体の議員であればそのような対立関係はなく、同じ志をもった者として気軽に相談し合えたりもします。私がやや自信のない議会質問の内容について神代さんに相談したりということもあります。
議員ネットでは定期的に学習会を開いたりしています。今年11月に行われた学習会では、新潟市の中山均市議に、市の人事委員会に働きかけて会計年度任用職員の実態調査を行わせた経験について報告してもらいました。これまで私たちは自分たち自身による調査方法などを高めてきましたが、自治体の人事委員会や公平委員会を使って調査を進めることも一つの方法だと知りました。このように他の事例を共有することは大変ためになります。
議員ネットという名称ですが、労組や女性団体、研究者なども入っています。今後とも課題や意義を共有したり確認したりしながら、お互いの自治体、さらには制度の根幹をつくっている国も動かしていけたらと思っています。

労組ももっと関心を
市議会議員として活動していて思うのが、労働組合にもっとこの問題を関心をもってほしいということです。この課題で一緒に取り組めればもっと成果が上がると思うのですが、現実にはあまり興味をもってもらえていないように感じます。会計年度任用職員制度ができた時も、なぜこのような制度の改悪を問題視しないのだろうと思っていました。問題のある首長や行政の決定を労組が間接的に支えている構図も少なからず存在します。
背景には、正職が非正規を同じ働く仲間だと見ていないことがあるのではないでしょうか。たまに非正規の処遇改善に取り組む労組の人から「目指すのは正規職員だよね」などと言われて苦笑することがあります。悪意はないのかもしれませんが、「私たちの身分にしてあげよう」というような「無意識の身分差別」を感じます。
しかし、非正規を大切にしない自治体は正職も大切にしません。非正規の処遇悪化はいずれ正職の処遇悪化として返ってきます。また全国では、労働条件が悪いため会計年度任用職員を募集しても集まらず、公共サービスの維持に影響が出ている自治体もあります。
非正規の処遇改善の課題は、労働者の権利擁護というだけにとどまらない、自治体や国のあり方に関わる問題です。労組にはわがこととしてこの問題に力を入れて取り組んでほしいと思っています。