解説

台湾問題とは(3)ーー米国による台湾への武器支援は、約束違反の内政干渉

台湾は米国の「反共の最前線」であった。
台湾関係法で軍事同盟を事実上継続させた。
米国は「武器支援縮小」の約束を反故にした。

 1950年代、米ソ冷戦下の米国のアジア戦略は、中国革命以降の、アジアにおける共産主義の台頭を阻止し、抑え込もうというものであった(防共体制)。米比相互防衛条約(1951年)、日米安保条約(同)、米韓相互防衛条約(1953年)、米華相互防衛条約(1954年)の締結、東南アジア条約機構(SEATO・1954年)発足、「ベトナム共和国」(南ベトナム=米国の傀儡[かいらい]政権)への軍事援助開始(1955年)などは、そのためのものであった。

 この下で、台湾に逃げ込んだ蒋介石らは「大陸反攻」を掲げた。米軍は中国による台湾解放を阻止し、軍事支援を行った。台湾は韓国、南ベトナムと並び、「反共の最前線」として重視されたのである。

台湾軍は米軍の監督下にあった

 米華相互防衛条約は、「武力侵略または外部からの共産主義の破壊活動に対処する」ことを目的に、米軍の台湾駐留を決めた。また台湾当局は、米国の合意なしに、台湾・澎湖諸島の防衛力を「実質的に低下させる程度まで」移動させないとした。

 蒋介石の軍隊は事実上、米軍の監督下にあったといってよい。

 1960年代以降、中国を「国家承認」する国が増加するなか、危機感を深めた台湾は核開発計画を進めた。米国は低濃度プルトニウムを含む技術提供を行ったものの、台湾独自の核武装は許さなかった。

 こうした米国による「反中国・蒋介石支持」の態度が破綻し、「上海コミュニケ」による対中関係改善に追い込まれた(「対ソ」での狙いもあった)ことは、前回に述べた通りである。

 1972年、「上海コミュニケ」発表と併せ、米国は中国に口頭で以下を伝えた。

  • 「二つの中国」を奨励しない。
  • 米軍は台湾から撤退する。
  • 「大陸反攻」を奨励しない。
  • 日本の干渉に反対する。
  • 台湾の独立運動を奨励しない。

 現状を見るに、米国の約束違反は明確である。詳細は、次回以降で述べたい。

米国は武器売却「縮小」を約束した

 カーター米政権は同時期の1979年1月、鄧小平副主席の初訪米の下、中国と国交を回復させた。米国は台湾から駐留軍を撤退させ、米華相互防衛条約は失効した。米国は台湾と断交、米華相互防衛条約も失効した。

 代わって米議会が制定したのが「台湾関係法」(1979年)である。主な内容は以下である。

  • 米大統領に、台湾を「防衛」するための軍事行動の選択肢を認める。ただし、米軍の介入は義務ではない(あいまい戦略)。
  • 台湾への武器売却を続ける。
  • 台湾を諸外国の国家または政府と同様に扱う。ただ、外交特権は認められない場合がある。
  • 在米台湾協会に免税措置を与える。

 台湾関係法は条約ではなく国内法だが、台湾当局の要請をくんで制定されたものである。内容も米華相互防衛条約を引き継いでおり、事実上「二つの中国」に道を開くものである。

 中国は、台湾への武器売却のたびに談話などの形で非難した。1982年には、レーガン米大統領と趙紫陽首相と会談で、「台湾への武器売却に関する米中共同声明」(第2次上海コミュニケ、8・17コミュニケ)が発表された。米国は台湾への武器売却を「段階的に減少させる」ことを表明した。

「6つの保証」で「コミュニケ」を反故に

 だが、米国は一方で「第2次上海コミュニケ」を反故(ほご)にする。「6つの保証」である。これは当初、ホルドリッジ国務次官補(当時)による、蔣経国・台湾「総統」宛の秘密の「覚書」であったが、2016年になると米上下両院で決議として可決された。内容は、以下のようなものである。

  • 台湾への武器販売の終了日を設定することに合意しない。
  • 台湾と中国の間で、米国は仲介する役割はない。
  • 台湾に圧力をかけて中国との交渉をさせることもない。
  • 台湾の主権問題に関する米国の立場に変化はない。
  • 台湾関係法の改定を「求める予定はない」。
  • 「第2次上海コミュニケ」は、「米国が台湾への武器販売について北京(中国)と事前協議を行うことに合意したと意味するように読まれるべきではない」。

 このように、米国は「一つの中国」の原則を表向きは維持しつつ、台湾関係法や「6つの保証」によって中国との約束を事実上破り、台湾存続のための支援と策動を継続させた。系統的で執拗(しつよう)な内政干渉で、中国が反発するのは当然のことである。

 オバマ政権後半以降の米政権はこうした経過を踏まえつつ、とくにバイデン政権成立後、台湾問題を悪用した中国への敵視と対抗を強化することになるのである。(K・続く)

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