解説

台湾問題とは(2)ーーマスコミが報じない「日中共同声明」の内容とは 「台湾は中国の一部」と合意している

「日中共同声明」で、日本は「一つの中国」で合意した。
「4つの政治文書」は共同声明の内容を継承した。
これらを踏まえたことが、日中関係の基礎となった。

 第2次大戦後、米国を中心とする国際秩序が形成された。

 国連においても、台湾は設立当初の加盟「国」で、安全保障理事会常任理事国の1つでもあった。だが、国連は1971年、「アルバニア決議」を採択し、「中華人民共和国政府の代表権回復と安保理常任理事国の席を与え」た。蒋介石の代表は追放されたが、台湾は国連を「脱退」した。

 これに先んじて、英国、フランス、イタリアなどが中国を「国家承認」していた。

 米国が続けてきた「中国敵視政策」は破綻し、米国は対応を迫られた。併せて、米国は「対ソ」の必要性上、中国をひきつける必要性が浮上した。

「一つの中国」を認めての国交回復

 ニクソン米大統領は1972年に訪中し、「上海コミュニケ」が発表された。台湾については、以下のようになっている。

 「米国は、台湾海峡の両側の全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾が中国の一部であると主張していることを認知している。米政府はその立場に異議を唱えない。中国自身による台湾問題の平和的解決に関心を持っていることを再確認している。この見通しを念頭に置いて、台湾からのすべての米軍及び軍事施設の撤退という究極の目的を確認している」

 ここでは、米国は「認知」し「異議を唱えない」というあいまいさを含む表現ではあるが、「台湾が中国の一部」であるという「一つの中国」の原則が明記されている。

 日本も田中首相が訪中し、日中共同声明が確認された。以下、引用する。

 「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」

 「十分理解し、尊重」するという表現は、あいまいさが残るものの、「上海コミュニケ」よりもやや踏み込んでいる。

 この合意の下、日本は米国に先んじて、中国と国交を回復させた。中国は、「中日両国国民の友好のために」、日本に対する戦争賠償請求を放棄した。対米従属政治の枠内ではあったが、わが国支配層は一定の「独自」外交を見せた。隣国・中国との国交回復は、わが国の進路にかかわる「民族的課題」で、その解決は切迫した課題であった。

 この経過からも「一つの中国」の立場は、日中関係の基礎となる原則にほかならない。

「原則」堅持が良好な国際関係の基礎

 米国は、1979年に中国と国交回復した。「一つの中国」の原則を「認知」する一方で、米国は台湾関係法を成立させ、米国製兵器を台湾に供与し続けることを決めた。ただし、米国による「台湾の防衛」は保障されておらず、「台湾有事」への軍事介入は約束されていない(いわゆる「あいまい戦略」)。

 以降の米中関係は1990年代半ばまでは、米国からの台湾への武器供与や天安門事件(1989年)に際しての「対中制裁」などでときに緊張することがあったが、全体としては良好な関係が続いた。米中は互いに「対ソ」での協力を必要としたし、中国は「改革・開放」路線を進める上で米国の支援が必要だった。米国も、巨大な中国市場から利益を得ること望んだ。

 日中関係も、靖国神社参拝などの歴史認識問題での「逆流」を除けば、おおむね良好であった。日中関係は経済を中心に深まり、2002年以降は、中国が日本の最大の貿易相手国となった。文化など各種交流も深まった。世論調査によると、1980年代半ばまで、日本人の「一番好きな国」は中国で、その割合は25%前後を維持していたほどである。

 日中共同声明に続き、日中平和友好条約(1978年、福田赳夫政権)、平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998年、小渕政権)、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008年、福田康夫政権)が結ばれた。これら「4つの政治文書」は、時々の国際情勢や日中関係の課題に対応しつつ、日中共同声明の原則を継承させたものである。こうした経過を積み重ねてきたからこそ、日中関係は全体として良好に推移できたのである。

 こんにち、岸田政権は「台湾有事」をあおり、台湾を「独立国」であるかのように扱って、中国の内政に干渉している。他方、歴代政権はもちろん、岸田政権も、日中共同声明を「破棄する」などとは言っていない。そう主張する議会内政党もないし、マスコミも同様である。かれらは、この矛盾に気づいているのか。

 日中共同声明にあるように「中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の正統政府」と認めるのであれば、「カイロ宣言」で台湾を返還した相手である「中華民国」とは、中華人民共和国が継承した中国にほかならない。したがって、日本が認めた「ポツダム宣言」第8条に基づく立場とは、中国への台湾の返還を認めること以外にない。

 「台湾は中国の一部」であるという「一つの中国」の原則を守り、中国への内政干渉を行ってはならない。(K・続く)

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