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NATOによるユーゴ空爆反対!

学生が緊急シンポを開催


 北大西洋条約機構(NATO)軍のユーゴスラビア空爆に反対する緊急シンポジウム「ユーゴスラビアにおける紛争調停および平和構築を考える」が四月二十日、明治学院大学で開かれ、学生など約三百人が参加した。主催はSCB(バルカンの共生)と、明治学院大学国際平和研究所。SCBはバルカンの平和的民族共生を望む学生主体のNGO(非政府組織)で、空爆にさらされているユーゴスラビアからのメッセージを日本に伝える活動などをしている。

 企画したSCB代表の駒野幸宏氏(立教大学院生)は、「ユーゴスラビアで起こっている紛争についていろいろな意見を出しあい、考えてみたいと思った」と開催の動機を話した。

 第一部では、「NATO空爆への経緯・コソボ問題とは何か」と題し、柴宜弘・東京大学教授と、ユーゴスラビア大使館のネマニャ・ヨヴィッチ・参事官が講演を行った。

 柴氏はNATOによる空爆への経過について、「この紛争については八〇年代にさかのぼって考える必要がある。当時コソボには、アルバニア人が八割、セルビア人が一割で、セルビア人が迫害されていた。セルビア人の要求を基盤にミロシェビッチが登場し、八九年にはコソボの自治権がセルビア側に移った。これが九〇年代のアルバニア人の『独立宣言』などのきっかけになり九七年末には、コソボ解放軍(KLA)など武力で独立しようとする勢力が出てきた。当初、米国はKLAをテロリスト集団と規定していた。九八年六月、米国は『コソボ問題は内政』とするユーゴ政権に対して強硬措置の発動をし、以降、国際社会は米国に連動してユーゴへの制裁を強化した。さらに六月末には米国がKLAを休戦交渉の当事者として認め、これによってKLAがいっそう活動を強めた」と講演した。

 ネマニャ・ヨヴィッチ氏は、「コソボはこれまで常にセルビア文明の中心地であり国際協定でセルビアの一部と認定されている。コソボ問題の根底には百年以上におよぶアルバニア系住民の分離主義がある。パリでの合意案は、コソボとセルビアを分離させようとするもので、しかも多数の西側の軍隊を国内に受け入れなければならず、合意できるものではない。空爆により五百人以上が死亡し、四千人以上の負傷者が出ている。公共施設、生活に密着した建物が破壊され、大変な被害が出ている。罪のない人びとの命を奪うことを『民主主義と人権を守る』という名目で正当化できるのか。平和的解決への道はNATOが空爆をやめたときに始まる」と訴えた。

 また「紛争調停と平和構築のためのプロセス」と題し、武者小路公秀・フェリス女子大学教授、首藤信彦・東海大学教授などが発言した。武者小路氏は、「米国は二正面作戦の実験をユーゴで行っている。たまたま日本から遠いユーゴで起きているが、新ガイドラインで、日本も巻き込まれる可能性があり、どのように運動をつくるか考える必要がある」と問題提起を行った。

 学生が「以前地雷撤去の活動に参加したが、まわりは無関心だった。世界で何が起きているのか、自分たちに何ができるのか考えてほしい」と呼びかけ、会場から拍手が起きたり、日本政府の対米追随を批判する場面もあった。

 NATOによる空爆に反対する動きが少ない中で、学生によるこれらの動きは画期的で、重要である。


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