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Eメールで悲惨な現状を知る

ユーゴに関心をよせてほしい

大学院生 駒野 幸宏さん(23歳)に聞く




 SCB(Seeking Coexistence in Balkan〜バルカンの共生〜)は4月20日、東京で「ユーゴスラビアにおける紛争調停および平和構築を考える」シンポジウムを開いた(労働新聞834号で報道)。シンポジウムには学生を中心に約300人が参加し、熱心な討論が行われた。SCBのメンバーである駒野幸宏さんに、ユーゴ問題によせる思いなどを聞いた。


◆SCB設立のきっかけをお聞かせ下さい。

 SCBを設立してやっと一カ月です。僕らとユーゴとの関わりは、現地で難民支援をしているNGO「ごきげんようの会」の交流プログラムに、九八年二月に参加したことからはじまりました。セルビア難民と交流したり、ベオグラード大学の学生のところにホームステイしたり、いろんな友達と思い出をつくったんです。

三月二十四日からNATOの空爆がはじまって、連日、Eメールなどで悲惨な状況が伝わってきました。セルビア人は底抜けに明るくて非常に楽天的な民族なんですけれども、それが非常に暗い話ばかりで、ほんとうに苦しんだなということが伝わってくる。

 僕らとしても遠い日本で何もしてあげられないことに無力感をもった。だったら僕らでNGOを組織して、ユーゴで起こっている問題への関心を社会にうえつけていこうということで、大学生を中心にSCBをつくりました。シンポジウムを開いたり、ベオグラードから届いたメッセージをメディアに公表したり、オリジナルのTシャツを販売したりすることを中心に活動しています。

◆ユーゴの状況はどうですか?

 先日、フィリップ君という十二歳の男の子から手紙が届きました。それには「小学校に行くこともできない。友人のお父さんが爆撃で殺された。僕たちはNATOや米国に対して何もしてないのに、どうしてこういうことになるのかわからない」というメッセージが書かれていました。

 米国は人道主義だとか難民保護というけど、クロアチアから逃れてきたセルビア難民はたくさんいるのに、それに対する保護は何もない。一方的にアルバニアの難民を助けるというのはおかしなことで、それのどこが人道主義なのか、わからない。そういう矛盾は小学生も気づくわけです。

 僕らにはセルビア人の友達が多いですが、彼らも「これは僕たちの人権に対する犯罪だ」と訴えています。

 今回の戦争で感じるのは、絶対的正義はないということです。NATOや米国は何をもって正義かというと、「人道」だというわけです。人道が脅かされているのは、ほかにもたくさんあるのに、なぜユーゴ介入なのか。そこには、NATOなり米国の国益というものがあるわけです。

 いろんな国際社会の思惑の中で、ユーゴスラビアという場所がかってに戦場にさせられ、「人道的介入」という大義名分の下で、一般市民の土地が荒されて犠牲になっています。

◆学生の皆さんの関心はどうですか?

 僕は大学で社会調査論のティーチング・アシスタントをやっているんですが、学生にいま関心がある世界のできごとは何ですかという質問を出すと、みんなユーゴ紛争とあげるわけです。ユーゴで起こっていることは非常に複雑であるということは認識されているし、何なのか知りたいという興味をもっていますね。二十一世紀の世界秩序、国際関係という意味で、非常に大きな意味をもつ問題だということを、学生の皆さんも直観的に感じていると僕は思っています。

 こういった活動をやっていると、世界秩序や平和は黙っていて与えられるものではなくて、支えていかなくてはだめなものだということは、簡単にわかるわけです。

 つぎの世代を担っていく僕たちとしては、積極的に関わっていかなければいけないんでしょうが、こういう活動をやっていくこと自体が「かっこ悪い」という意識がある。しらけ世代というか、無関心であることが「かっこいい」って意識があると思うんです。

 僕自身も何かを変革しているという意識よりも、自分の価値観とかを鍛錬(たんれん)しているという意識が強い。ユーゴ問題に限らず、そういうスタンスで活動できれば、そこでいろんなことを学ぶことができる。そういうことが価値あることだということを、広げられたらいいなと思います。


パンフレット紹介

ユーゴスラビアにおける紛争調停および平和構築を考える

1999年4月20日
於:明治学院大学白金台キャンパス

内容

●シンポジウム報告
*NATO空爆への経緯・コソボ問題とは何か?
*ユーゴスラビアの現状
*紛争調停と平和構築のためのプロセス
●資料
●アンケート集計

定価 500円
発行者 SCB
電話 03-3530-5708(駒野)
E-mail  hiro67@diana.dti.ne.jp


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