(3) 労働者状態の急速な悪化
独占企業の新たな資本効率重視の経営戦略、それとリンクした雇用・人事戦略の具体化と支配層の規制改革、構造改革が進むにつれて、雇用と労働条件は様変わりし、労働者階級の状態は急速に悪化している。
1.失業者が急増している
バブル崩壊後の九二年ころから、独占企業を中心に大規模な「雇用調整」、人員削減が実施されてきた。わが国の名だたる多国籍企業、大企業での「雇用調整」が目立っている。とりわけ、九九年春闘時には人員削減の嵐が吹いた。
日立製作所が六千五百人(九九年度中)、NECが一万五千人にのぼる「人員削減」計画を発表するや、独占企業各社はセキを切ったように次々と大規模な人減らし計画を発表した。
目立つものだけでも、日産ディーゼル(九九年中に三千人)、東芝(二年間で七千人)、松下電器四千人(二〇〇〇年度を目標に)、ソニー連結社員数一万七千人(四年間で)、沖電気二千七百人(二年間で)、三菱化学二千人(三年間で)、日本精工一千人(二年間で)、王子製紙二千人(三年で)、公的資金注入の大手銀行十五行計で一万九千六百人(四年間で)、野村証券二千人(二〇〇〇年春まで)、ダイエー三千人(三年間で)など。日野自動車の社長は、目標が達成しないなら正社員のナマ首を飛ばすと口にした。
秋には、二万一千人を削減する衝撃的な日産リストラが発表された。
こうした独占企業のリストラは、系列下にあった中小企業の倒産や首切りを伴って、全体として失業率を押しあげる主な要因となっている。
また、「高コスト構造の是正」を口実にして規制緩和が進められ、私鉄、バス、タクシー、物流、流通、港湾運送などで失業者が増加した。
七〇年代前半までは一%台前半だった完全失業率は、八〇年代に二%台に上がり、九五年には三・二%と三%台になった。以降、九六年三・三%、九七年三・五%と増加の一途をたどり、九八年にはついに四・三%にはねあがった。二〇〇〇年三月の完全失業率(季節調整値)は比較可能な一九五三年以降の最悪を記録し四・九%となった。
総務庁が今年四月に発表した「労働力調査特別調査」によると、今年二月の調査時点での完全失業者数は三百二十七万人にのぼった。
うち、失業期間が一年以上の失業者数は前年に比べ十二万人増の八十二万人に達した結果、失業者の四人に一人が一年以上の長期失業者となっている。失業期間が一年以上の人数は八年連続増加した。
倒産やリストラになど「非自発的な理由」による失業が多くなっており、前年比一万人増の百三万人となり、「自発的な理由」による失業者は減って両者の数は拮抗(きっこう)状態となった。非自発的理由の内容についてみると、「人員整理・会社倒産」が三十四万人と最も多く、ついで「その他勤め先や事業の都合」(二十七万人)と「定年」(二十六万人)がほぼ同数で続いている。
わが国の失業者は、単純に計算しただけでも九二年から八年間の間に百八十五万人も増え、二・三倍になった。九八年以降は量的に拡大しただけでなく、質的に深刻さを増している。昨年は米国の失業率と逆転し、まさに失業大国となった。
2.雇用形態の流動化が進んでいる
「正規の職員・従業員」が削減され、「パート、アルバイト、派遣労働者」などの無権利で、低賃金の、いわゆる不安定労働者が急速に増えている。
「労働力特別調査」によれば、役員を除く雇用者数は、対前年比十万人減の四千九百三万人だった。うち、「正規の職員・従業員」の数は、前年比五十八万人も減り、三千六百三十万人(構成比七四・〇%、前年比五・八ポイント減)となって、三年連続で減少した。とくに九八年からの「正規の職員・従業員」の減り方は急激で、この二年間で百六十四万人が減少した。
これに対して、「パート・アルバイト」は千七十八万人(同二二・〇%)と前年より五十四万人増加、六年連続の増加となった。
また、労働省が六月発表した「一九九九年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によれば、全労働者に占める非正社員の割合は二七・五%で、九四年に実施した前回調査から四・七ポイント上昇した。非正社員のなかでもパートタイマーのいる事業所の割合は五六・〇%と半数を超えている。非正社員を雇用する理由としては「人件費の節約のため」が最も多い。
3.賃金の差別化と引き下げ
成果主義、能力主義の賃金システムの導入は、当初は管理職がその対象だったが、こんにちでは一般社員にまで拡大してきており、職場にさまざまな矛盾と不満を呼び起こしている。
第一に、労働者間の競争をいっそう激しいものとし、労働者間の賃金格差をいちだんと拡大している。かつての年功制賃金の恩恵に浴してきた中高年層の労働意欲を減退させている。
第二に、若手から中高年の労働者にいたるまで、能力・成果主義賃金制度の評価システムには大きな不満がうずまいている。評価の基準が不透明、不満(七三・九%)、評価者や仕事の職種などで評価が変わる(六〇・五%)などがそのおもな内容である(日経BP社アンケート)。
第三に、成果をあげても不況で収入は増えていない。九八年にくらべ九九年の年収が減った(二七・二%)。変わらない(二七・三%)と半数以上が前年にくらべて年収が増えていない。その理由を、「会社の業績低化」と答えた比率は六六・八%におよんでいる(同)。
こうした差別賃金がまかり通るなかで、現金給与総額二年連続マイナス、実質賃金三年連続減となった(毎月勤労統計調査、平成十一年度分結果)。ボーナスが五・二%減少となったことから、現金給与総額は〇・八%減の三十五万四千百六十九円と二年連続の減少となった。実質賃金は〇・二%減と三年連続の減少となった。
また、賃金格差はむしろ拡大した。労働省の「賃金構造基本調査」(九九年三月発表)によると、九八年の男性の賃金について大企業(常用労働者千人以上)を一〇〇とすると、中企業(同百〜九百九十九人)は八四、小企業(同十〜九十九人)は七七。五年前に比べ格差は拡大している。
「毎月勤労統計調査」(労働省)で五百人以上を一〇〇として、各年の規模間格差をみると九五年百〜四百九十九人規模で七九・七、三十〜九十九人規模で六一・九、五〜二十九人規模で五五・八だったものが、九七年にはその差がそれぞれ七七・七、六二・七、五四・六まで拡大している。
九九年「連合白書」をみても、賃金の企業規模間格差がここ数年拡大傾向にあることがわかる。男性三十五歳勤続十七年の年収は、五千人以上と三十〜九十九人の間に百八十万円近くの差がある。毎月の平均給与・手当では六万円弱だが、賞与ではその格差が二・二倍まで拡大した。この格差は、ここ数年拡大基調にある。
4.労働強化とメンタルへルス
連合の「第三次緊急雇用実態調査」(一九九九年十二月〜二〇〇〇年一月実施、加盟民間単位組合四千四百二十三から回答)によれば、人員削減が進む中、大企業になればなるほど労働密度が強化される傾向があり、七八・〇%が「きつくなった」と回答している。「雇用調整」の有無との関連では、「雇用調整あり」のところが「きつくなった」人の割合が高くなっている。
この結果とも関連して、従業員数の削減が職場のメンタルへルスに重大な影響を及ぼすことが明らかになった。社会経済生産性本部の「経営指標とメンタルへルスに関する調査研究」によれば、従業員の減少は、上司・同僚との関係悪化、帰属意識の低下、仕事の負担感の増加、仕事の正確度の低下、将来の希望の減退と相関関係があったと結論づけている。
リストラは、職場の労働者に労働強化となってはねかえり、心を傷ませている。
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