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労働新聞 2018年6月15日号・4面 労働運動

組合差別を許さず、
ストライキを武器に闘う


実践(闘い)こそ最大の学習

長崎バスユニオン・嵩靖文委員長

 長崎市に本社を置く路線バス会社・長崎自動車(通称・長崎バス)では不当解雇や厳しい労務管理が行われ、仲間がどんどん職場から去る状況が続いていた。こうしたなか、2015年12月に既存組合から68人が脱退し、疲弊した職場の環境を打開しようと新たな組合である「長崎バスユニオン」を結成した。会社側の組合差別攻撃にも関わらず、組合員は増え続け、職場の仲間の信頼を勝ち取っている。原則的な闘いのなかで組合を強めている経験は示唆(しさ)に富んでいる。この間の闘いなどについて嵩靖文(たけ・やすふみ)委員長に聞いた(文責・長崎支局)。


 私たちの組合は、当たり前の事を要求しているだけです。賃金や労働条件の面では妥協できても、「組合差別」は決して許せません。自宅から五分で出勤できていたのが、通勤一時間もかかる営業所に不当配転された組合員、通勤手当もなく、五時間しか睡眠がとれず、翌日まで八時間も空いていないこともあるダイヤ状態。このような横暴を許してはなりません。私たちは乗客の皆さんと乗務員の安全を守るために闘っています。

「憲法にも保障された権利」ストライキ
 「長崎バスユニオン」を結成したのは二年半前の二〇一五年十二月十四日ですが、以来、いわば闘いの連続です。ストライキに限ると、この春三月の賃上げを求めた春闘ストを含め、これまで五回決行しました。市民生活の足に響く闘いなので、当然慎重にならざるを得ません。会社側の組合差別や処分など、労働者の権利と尊厳を無視した対応にやむを得ずストライキとなっています。会社側と対等な立場で話し合うために「ストライキは憲法にも保障された権利」です。当たり前のことを、当たり前にやっています。

新組合結成への経過、その後の闘い
 業務上の事故なのに前例のない懲戒処分が出たり、会社に不満を言う人を本社に呼び出して肩たたきがやられたり、乗務前アルコール検査で一発懲戒解雇が出されるなど、会社側の労務管理は厳しくなる一方でした。にもかかわらず、既存の労働組合はこれを真摯(しんし)に取り上げません。一人の労働者に起こったことは、職場の皆に起こったことです。一人の労働者の権利と生活を守ることができないようでは、労働組合としてどうなのでしょうか? 既存組合へのいろいろな不満が沸いていました。
 覚悟と決心が必要でしたが、皆で相談し、新組合結成の準備を進めました。結成時に長崎バスユニオンに加わったのは六十八人。その後毎月数十人ずつ増え続け、一六年三月には百人を超えました。会社側はその勢いに驚き、さまざまな組合差別攻撃を始めたのです。
 例えば、初めての団交では、「出席者の賃金補償はしない」と通告してきました。さらにいちばん大きいのは、組合籍に関係なく平等に配分されてきた担当車両制度(注)を強硬に変更したのです。「組合を移動したら、担当車両を取り上げる」と社員を脅し、組合に組織攻撃を加えてきました。車は運転手にとって、お客様の安心安全を守る大事な足で、日頃の車の調子や状態などをつかんでおく必要があります。担当車両には当然、愛着と責任がわきます。しかし、これまでの慣行・取り決めを無視して強行。不当な、とんでもない組合差別です。車両差別問題で幾度も団交を重ねましたが、らちがあきません。一六年十一月十一日に二十四時間ストライキを決行しました。これが第一回目のストです。十二月には県労働委員会に不当労働行為十一項目の救済申し立ても起こしました。

会社側は県労委の和解案拒否、紛争激化
 一七年八月、会社側は県労働委員会から出された和解案を拒否しました。それだけでなく、十月にはバスユニオン組合員三人に不当懲戒処分、不当配転を強行してきました。当然、この撤回を求めて闘いました。ユニオンは十月二、三日、時限〜終日のストを打ちました。労使の紛争は激化しました。このストを前後し、新たに組合員が増え、百二十四人に拡大しました。闘いへの共感があったからです。
 長崎地区労が「長崎バスユニオン支援共闘会議」を立ち上げましたし、バスユオン組合員による街宣車行動も開始、十一月には共闘会議で本社前抗議行動を開き、市民へのアピールと闘いを強めました。こうした行動に追い詰められたのでしょうか、今度は会社側は団体交渉さえ拒否するに及んで来ました。
 昨年十二月に入って、時間外差別問題や労働条件改善を要求し団交に応じるよう求めましたが、会社側が拒否。やむを得ず、十二月六日に午前の指名ストから断続的に午後からの全面ストライキへに突入しました。多くの激励の声を利用者の皆さんからも頂きました。
 また、不当懲戒処分と不当配転組合員四人への処分撤回を求め、長崎地裁へ提訴も行いました。
 こうした私たちの闘いの前に、今度は会社側からの呼びかけで団交を再開、今年の年明けから協議を積み重ねているところです。

18春闘−将来へ向けた闘いの投資
 一八春闘は大手に続き、九州中小私鉄バスの回答も一斉に示されました。結果は、労働力確保との追い風を受けほぼ昨年を上回る回答となりました。バスユニオンは一・八%という昨年同額の回答に納得できず二十四時間ストライキを打ち抜きました。社内複数組合の中でバスユニオンだけが上積みを求める厳しさのなかでした。
 結果だけにこだわらず、経緯を重視し、組合員に見える悔いのない闘いは、来年にまたその次へと繋がっていきます。将来へ向けた労働運動の投資でもあります。資本家と対等に交渉するための最大の権利であるストライキや腕章闘争のない闘いは、労働運動の衰退を招く事となるのではないでしょうか。
 低迷していると言われている労働運動の要因に、ストライキ件数が全国的に大きく減っている現状は関係があると思います。

腕章をつけて乗務します
 過日上京した折りに、バスユニオンの闘いの報告をしました。組合員は、腕に「赤の組合腕章」をつけて、毎日バスに乗務しています。お客様から、「がんばって下さい!」などの激励もあります。そんな日頃の様子を報告したのですが、皆さんはビックリしていました。腕章着用は当たり前のことなので、かえってこちらが驚きました。誇りを持って着用しています。働く仲間たちには、さまざまな苦労や要求があるわけで、それを大事にし活動することが労働組合の原点だと思っています。そこに発展の力があると思います。

SNSもフル活用
 組合掲示板が差別されていますので、ユニオンの組合員の情報共有を強めるために、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をフルに使っています。情報や出来事などなどを発信しています。バスに乗れば乗務中は一人なので、皆の認識というか、思いを一致させるために大変役立っています。
 活動の基礎は学習で育まれますので、大切です。しかし、闘いと活動に忙しく、対応に追われて来て、特別に学習活動を展開できてはいません。
 しかし、いちばん重要なことは、「実践(闘い)こそ最大の学習活動」だと思います。闘いのなかで私も含め鍛えられ、確信を深め、絆を強めています。闘いこそ、組合の基礎であり、最も大切な活動だと思っています。労働者の生活と権利を守るために、闘うことを恐れてはなりませんし、逆に闘いの中でこそ、一歩一歩前進できるのだと確信しています。

(注)一人一車制の車両配分  年式の新しいバスから入社順位に担当車両を割りあてる制度、毎日自分の担当車両で乗務できる。担当車両のクラッチの位置、ブレーキのクセなど把握でき、手入れも責任を持って良く行うので愛着がわき、運行の安心安全にプラスとなる。会社側は、慣行を破りバスユニオンに対してこの制度を適用しない処置を強行した。


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