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労働新聞 2015年2月5日号・4面 労働運動

15春闘に際して訴える
生活できる賃金寄こせ
団結して大幅賃上げめざし闘おう

対米従属の安倍政権打ち破り、
独立・自主の政権を/全世界の労働者と
連帯し、米帝国主義を打ち破ろう
労働者は農民、中小自営業者などの
要求と闘いを支持し、国民大多数に
渦巻く怒りの先頭に

内外ともに窮地に立たされた安倍政権
 こんにち安倍政権に対し、労働者をはじめ多くの国民の間に怒りや不満が充満している。先の総選挙では「自公圧勝」などと報じられたが、実際には自民党は四議席減らし、公明党を加えた連立与党で公示前の議席を維持したにすぎない。自民党支持率は、有権者全体のわずか一六・九九%だ。有権者の多くが投票所に足を運ばず、投票率は戦後最低の五二・六六%を記録した。このことは既成政党、議会政治に対し、多くの国民が期待を寄せることなどできないことを示している。
 またこの間、安倍政権・自公与党は、県知事選をはじめ主要な地方選で敗北、沖縄では、基地建設容認の現職知事を破り、これまで自民党を支持してきた財界の一部も基地反対派の勝利に貢献した。また、佐賀でも、官邸が担ぎ出した候補に対し、農業者や県内自治体首長、自民党の一部などが対抗し、大差で破った。
 「アベノミクス」の下、多国籍大企業、大都市の富裕層は潤ったが、多くの労働者、中小自営業者、農民は生活と営業の危機に瀕している。多国籍大企業の番頭である安倍政権は財界の望む「成長戦略」実現のため、「岩盤規制」として挙げる農業や医療、労働法制、教育などの分野で、いっそう、国民大多数を犠牲にする諸政策に手をつけるであろう。しかし、それは国民の反発を受けざるを得ない。
 安倍政権を取り巻く国際環境も厳しさを増している。
 リーマン・ショック以降、いまだ危機の「出口」は見えない。
 わが国を含む先進諸国による金融緩和にもかかわらず、実体経済は低成長が続いている。「景気回復」といわれる米国でも巨額の景気対策による累積財政赤字は拡大、いくどの金融緩和策で、連邦準備理事会(FRB)は多くの不良債権を抱え込んだ。
 こうした状況の下、各国支配層は市場と資源、金融などをめぐって争奪を繰り広げ、米国を中心とする帝国主義諸国と新興国、また帝国主義間においても、矛盾が激化している。
 戦争状態ともいえるウクライナ情勢、また、中近東における「イスラム国」の台頭に示される戦乱、米国主導の国際秩序に挑もうとしている中国の動向等々、まさに世界資本主義は末期的症状を見せ、その先行きは戦乱をも含む状況といえる。

「アベノミクス」で大企業は高収益、労働者には賃下げ
 このように内外情勢に揺さぶられている安倍政権は、一四春闘に引き続き、「賃上げ」を演出しようと、「政労使会議」を再開、「賃上げ」ムードの演出に躍起となっている。日本経団連も呼応している。
 しかし「アベノミクス」でわが国多国籍大企業だけが空前の高収益を手にし、巨額の内部留保を積み上げ、配当金を手厚くした。加えて、消費増税によって、上位二十社で約一・四兆円もの輸出還付金が、輸出大企業に恩恵としてもたらされた。
 こうした結果、大企業の経常利益は一二年度の二十六兆円から一三年度には三十四・八兆円に増えて史上最高になった。
 安倍首相は「給料は上がり始めている」などというが、毎月勤労統計によれば、実質賃金は、二〇一三年七月から一四年一一月分まで十七カ月も連続して減少している。とくに全労働者の四〇%以上を占める五〜二十九人の中小企業労働者の賃金は、ほとんど上がっていない。安倍がいう「雇用の増加」もその大部分が非正規労働者という状況だ。とりわけ青年労働者の非正規率は際立っている。
 加えて、労働者には、消費税増税(五兆円)がそのままのしかかり、社会保障関係の負担増がさらに追い打ちをかけている。生活保護費の削減、年金「特例水準」解除とマクロ経済スライドなどで計四兆円もの負担増だ。
 中小自営業者も営業の危機に瀕している。とくに製造業では生産が減少し、商業でも、需要の落ち込みが激しく、いわゆる「円安倒産」も相次いでいる。
 「経済好循環」を掲げる安倍政権の下、実際に進んだことは、労働者をはじめとする大多数の国民が窮乏化する一方、米国や多国籍大企業、資産家へ大規模に所得が移転・収奪されたのである。

対米従属政治打ち破り、生活危機突破を
 こうした深刻な事態は、単なる経済現象ではない。また、個別の労資関係によってのみ生じたものでもない。わが国多国籍大企業に奉仕する「アベノミクス」の結果である。
 輸出大企業の空前の利益は、あくまでも労働者を搾取した価値が元手だが、加えて異次元の金融緩和による円安、株高が積み上げた。政治の結果である。
 先進諸国では一九八〇年代後半から分配率の低下が著しいが、わが国ではその落ち込みは顕著である。今年戦後七十年を迎えるわが国は、米軍による直接占領から始まり、財界や支配層が進めた対米従属の下、輸出主導で一握りの大企業のための政治が一貫して行われてきた。農業産物の輸入自由化によって農村は危機に陥り、米国の押しつけによるエネルギー政策の転換により石炭や水力などが壊滅させられた。
 とくに九〇年代に入り「グローバル化」が叫ばれ、わが国大企業は海外進出を強力に推し進め、労働者に低賃金を押しつけた。また、ドル支配下において、多額の米国債を押しつけられ、日米構造協議などの数々の対日要求によって、経済政策までこんにちも米国は介入・指示しているのである。同じ先進国で、わが国と同様の敗戦国のドイツは穀物自給率の向上や自主的なエネルギー確保に努めているのとは対照的だ。
 つまり、わが国財界は、「外圧」を利用し、労働者をはじめとする国民大多数を犠牲にしながら、権益を確保し、海外展開によって強大化してきた。そして、歴代政権(民主党政権含めて)はこうした財界望む政策の実現に腐心してきたのだ。
 こんにち安倍政権はいっそう、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉推進や、「アベノミクス」による「大胆な金融緩和」などで対米従属の内外政治を進めようというのである。
 こうした対米従属政治の転換と真の独立に一切触れない、連合中央がめざす「働くことを軸とする安心社会」や、全労連がいう「雇用と社会保障を中心とする日本」などの「福祉国家」論などは幻想にすぎない。
 したがって、労働者をはじめとする国民大多数の根本的な生活危機の打開のためには労使間の闘いだけではなく、わが国の対米従属政治を転換しなければならない。一五春闘において、労働者は大幅賃上げと国民生活の危機打開に向け、対米従属の政治を断ち切り、主権回復を勝ち取るために、安倍政権を打ち倒す闘いを始めよう!。

 「ベア容認」の甘言見抜き、大幅賃上げ勝ち取り、真の内需拡大を
 わが国財界の総本山=日本経団連は彼らの一五春闘方針である「経営労働政策委員会報告」を発表した。マスコミなどは「ベア容認」などと書きたてた。
 しかし、ベアはあくまでも「選択肢の一つ」などというのである。自動車などの多国籍大企業では昨年に引き続き、いくばくかの「賃上げ」が行われるであろうが、結局は[支払い能力に則して決定することが原則」とあるように大幅賃上げなどは一顧だにしないのが経営側の一貫した姿勢なのだ。
 その上「人事・賃金制度をグローバル経営戦略に適した制度に見直していく」「総額人件費管理の徹底」などとい、併せて「裁量労働制の拡大」「法人実行税税率の引き下げ」の実現を求めているのである。「ベア容認」という甘言をささやき、わずかばかりの「賃上げ」と引き換えに、いっそうの労働法制改悪や大企業優遇策を呑ませようというのが彼らの狙いなのである。
 こうした中で、連合は一五春闘に際して、「底上げ・底支え」「格差是正」のため、「二%以上の賃上げと賃金の絶対値を重視した取り組みを進める」(連合一五春闘方針)としている。こうした連合方針を踏まえ、自動車総連、電機連合なども六千円以上を要求している。
 だが、仮に連合要求の二%が実現したとしても、消費者物価指数の今年度見通し(生鮮食品を除く総合で三・三%上昇)を下回り、実質的な賃金は減ってしまうのである。さらに「国民が負担を分かち合うべき消費税増税分は賃上げ要求に含めない」(金属労協)という始末である。
 しかも、このささやかな二%要求でさえ、「納得性が高いとはいえない」と決め付けているのが日本経団連なのである。「ベア容認」などという彼らの甘言にだまされてはならない。すでに、ソニーなどでリストラ攻撃が行われているように、彼らはリストラ・合理化の手綱を緩めてはいない。
 賃金は闘い取るものである。破たんした「経済好循環」論にしがみつき、「政労使協議」で「活路」を見出そうとする連合中央の「参加・協議」路線ではささやかな二%要求でさえ、実現できるあてもない。また、連合中央は日本経団連の「国際競争力」に「対置」する形で「人への投資」を強調しているが、「一人当たりの生産性を高める」という「生産性向上」論という点ではまったく同じだ。まさに安倍政権を支える役回りを演じようとしているのが連合中央なのだ。連合が「底上げ・底支え」「格差是正」というなら、連合全体の要求として、中小零細企業やパートや派遣などの非正規労働者の大幅賃上げを経営側に迫らなければならない。
 片や、全労連も安倍政権や日本経団連が打ち出した「ベア容認」の甘言を「変化の兆し」と評価し、春闘をわが国多国籍大企業がため込んだ内部留保を「ちょっぴり取り崩して」と懇願する場に変質させようとしている。かれらの内部留保「活用」論は、結局は経営側の「支払い能力」論と同じ理屈にほかならない。内部留保などない中小企業では「無いそでは振れない」ということで賃上げができないことになってしまうのである。
 安倍政権や日本経団連による「賃上げ」のささやきに期待する連合中央や全労連指導部のこんな姿勢では、ささやかなベア要求さえ実現できるはずもない。
 連合内にあっても、闘う機運は広がっている。UAゼンセンは「実質賃金は大幅に下がっており、物価の上昇分を取り戻す要求を」と、三%の賃上げ要求を行い、JAMも「過年度物価上昇分と生活改善分を勘案して」九千円を要求するなど、旺盛な要求を掲げている。
 中小労組が大幅賃上げを掲げて闘おうとしていることは、一五春闘の帰すうを決する上で重要だ。
 「生活できる賃金を」—これは正当な要求であり、これこそが職場で日夜働く仲間の正直な思いだ。職場に渦巻く組合員の不満と要求に依拠して、ストライキを背景に闘ってこそ、要求は実現できるのである。

米帝国主義と、追随する安倍政権打ち倒し、独立・自主の政権を
 また、安倍政権は「強い日本を取り戻す」と称して、凋落著しい米国に追随しながら、大国化する中国包囲の「地球儀俯瞰外交」を進め、日米ガイドラインの改定を加速化させている。集団的自衛権行使容認、日本版NSC(国家安全保障会議)設置、特定秘密保護法などはその一環だ。戦後七十年に際し、これまで歴代内閣が不十分ながらも明言していた「植民地支配、侵略戦争への反省」をも消し去る「安倍談話」を準備するなど、政治反動を強め、アジア各国から警戒を呼び起こしている。
 凋落(ちょうらく)著しい米帝国主義は、その「起死回生」とばかりに、全世界で策動を強めている。とくにアジアでは「リバランス戦略」を掲げ、台頭する中国をけん制しながら、アジアで緊張を高めている。安倍政権はこうした米国の世界戦略をいっそう支えようというのである。そして、「イスラム国」による日本人殺害を口実として、米国主導の「有志連合」への自衛隊参加を狙っているのだ。わが国労働運動は、こうした安倍政権の亡国と戦争の道に反対し、独立・自主、アジアの共生めざす政権を闘い取るため先頭に立つときである。
 わが国労働運動は、とくに連合結成以降、「協議・参加」路線と、選挙「闘争」に明け暮れてきた。しかし、民主党政権の崩壊が示すように、決して労働者をはじめとする国民大多数の政治は実現できなかった。
 労働運動が自らの経済的要求実現とともに、苦境にある中小自営業者、農民と統一戦線を構築し、日米安保破棄、国民経済擁護、独立・自主の政権を求める闘いに立ち上がれば、情勢を動かすことができる。
 わが国労働者階級は日本労働党に結集しよう!(貴島 孝之)


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